電子書籍取次

2015.11.18

電子書籍取次とは

電子書籍の販売においても、出版社と電子書籍書店の間に位置し取次機能を行う販売会社が存在し、これを電子書籍取次と言う。主な機能として、出版社にとっての販売、電子書籍書店にとっての仕入の役割を果たす商流機能、請求・支払に関する金融機能があり、これらは紙の図書と同様であるが、紙の図書の場合のような物理的な商品送返品、在庫管理は発生しないため、物流機能や配本コントロール機能はない。

また、金融機能についても、電子書籍では紙の図書のような委託制度がなく売上/支払計上も小売実売ベースで行われているため、図書の場合ほどの決済サイトによる効果は大きくはない。代わって書誌データ等のメタデータを含む電子データ授受、あるいは電子書籍取次によっては出版社からの提供されるデータを元に適正な電子書籍データを製作することまで含めて行う場合もある。

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電子書籍取次のメリット、デメリット

電子書籍取次が介在することの主なメリットは以下のとおり。

・出版社と電子書籍書店との取引で発生する契約や売上管理、請求関係などの事務業務の効率化。これにより、出版社はより多くの電子書籍書店での販売が可能となり、電子書籍書店は一定数の出版社、商品数の確保ができる。また、電子書籍取次によっては、出版社向けにWebでの販売管理用サイトを用意し、日次での販売状況を提供するなど、マーケティングデータの提供なども行っている。

・電子書籍データおよび電子書籍書店で販売するために必要な書誌データ等のメタデータ作成、納品の効率化。これらのデータフォーマットや納品方法は、電子書籍書店毎に異なる場合があるため、出版社にとっては取引先の拡大に伴いこの作業負担が大きくなるが、これが軽減される。電子書籍書店にとってもメタデータを含む電子書籍データ納品管理、支払管理等、事務業務の効率化ができる。

・出版社で電子書籍化についての技術的ノウハウ、人的リソース等が充分ではない場合、電子書籍データの製作機能を委託できる場合もあり、出版者は元となる図書の制作に資源を集中することができる。また、電子書籍書店にとっては電子書籍データの質的水準確保が期待できる。

などが挙げられる。

一方、デメリットとしては、

・販売手数料率、あるいはデータ製作費用が発生する。

・書店の特性に応じたプロモーション等、出版社-電子書籍書店毎のこまやかな販売施策の実施が困難になる傾向がある。

などが挙げられる。

商流のパターン

紙の図書では、「通常ルート」と称されてきた「著者-出版社-取次-書店-消費者」という取次を経由した商流が主流であったが、電子書籍の場合、商流のパターンはより柔軟であり、現状では様々な形が混在している。出版社が取次を通さず電子書籍書店と直接取引を行うケースや、電子書籍書店により取次経由と直接取引が並存するケース、出版社自体が電子書籍書店を運営し販売するケース、あるいは著者自身が出版社・取次を介さず電子書籍書店と直接契約を行い販売するケースなど「出版社-取次-書店」の一部あるいはすべてを通さずに販売される例も少なくない。

電子書籍取次と出版社の契約形態

紙の図書の場合、通常、出版社-取次間で、出版社が図書の定価を決定し書店が定価販売を行う再販契約が締結されているが、電子書籍は再販制度の適用対象外であるため、出版社が電子書籍書店での小売価格を拘束することができない。したがって、電子書籍では、ホールセール契約と呼ばれる卸価格(あるいは希望小売価格に対する卸料率)契約とする場合が多い。なお、契約形態としてはこの他にも、出版社を販売を行う主体とし、取次・電子書籍書店にその代行を委託する、というエージェンシー契約と呼ばれる形もある。

主な電子書籍取次

2015年10月時点での国内の主な電子書籍取次を以下に挙げる。グループ企業として電子書籍書店を持つ企業もあるが、必ずしも排他的に系列化が行われているわけではなく、異なる企業グループに属する取次、書店間での取引も行われている(括弧内は各社サイト等に記載されている主な株主。50音順)。

・株式会社モバイルブック・ジェーピー(秋田書店、インプレスホールディングス、エムティーアイ、学研ホールディングス、KADOKAWA、兼松グランクス、講談社、光文社、実業之日本社、シャープ、集英社、小学館、祥伝社、新潮社、セルシス、大日本印刷、大和企業投資、筑摩書房、中央公論新社、徳間書店、ドコモ・イノベーションファンド投資事業組合、双葉社、文藝春秋、ポプラ社、牧野出版、楽天証券、リイド社)
 
・株式会社出版デジタル機構(産業革新機構、講談社、集英社、小学館、大日本印刷、凸版印刷、KADOKAWA、光文社、新潮社、文藝春秋、インプレスホールディングス、筑摩書房、有斐閣、勁草書房、版元ドットコム、平凡社)
 
・株式会社クリーク・アンド・リバー社(シー・アンド・アール、井川幸広、日本トラスティー・サービス信託銀行、日本マスタートラスト信託銀行、澤田秀雄、三井住友信託銀行、依田巽、斑目力曠、資産管理サービス信託銀行、BNYML - MON TREATY ACCOUNT)
 
・株式会社ブックリスタ(ソニー、KDDI、凸版印刷、朝日新聞社、紀伊國屋書店)
 
・株式会社メディアドゥ(藤田恭嗣、日本トラスティー・サービス信託銀行、大和田和惠、日本マスタートラスト信託銀行、小学館、講談社、鈴木克征、BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG)

[井野口 正之/株式会社JTBパブリッシング/20151031]