ZIP

2015.11.18

ZIPとは

ZIPは、Phil Katzが開発したデータ圧縮/アーカイブのファイルフォーマットである。1989年に開発され、その後、パーソナルコンピュータ(パソコン)の普及とともに、一般的なフォーマットとして多くのユーザに利用されている。

特徴は、複数のファイルを一つにまとめるアーカイブ機能に加えて、さまざまな圧縮アルゴリズムを利用することでファイルサイズを圧縮して格納できる点にある。開発当時から個人用途で利用されることが多く、その後、Windowsの登場で一般化したパソコンでの利用が増え、Windows 98以降、また、Mac OS X v10.3以降に標準機能として搭載されたことから、一般的なフォーマットとして利用されている。

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ZIP開発の経緯

ZIPを開発したのはアメリカのプログラマPhil Katzである。Philは大学時代からパソコン、そしてインターネットコミュニケーションの先駆けであるBBSへの参加などを積極的に行い、パソコンそしてプログラミングに没頭したと言われている。その後、独立して開発に携わったのがデータ圧縮プログラムである。最初に開発したソフトウェアは商標違反や著作権侵害を受けるものだったが、その後、ゼロから書き直して開発されたのがZIP規格を採用した「PKZIP」である。ZIPとは速さを意味する単語で、他のフォーマットの圧縮時間よりも速いことを意識したネーミングである。また、PKはPhil Katzの名前に由来する。

PKZIPの開発後、PKZIP0.9に添付されていたAPPNOTE.TXTというテキストファイルにて、世界初のZIPフォーマット仕様が公開された。ZIPはオープンフォーマットとしてパブリックドメインで公開されたものなので、誰もが自由に扱えるフォーマットとして、個人はもちろん、先に述べたように企業が開発したプラットフォームでの採用が進み、も非常に多くのユーザを獲得している。

電子書籍とZIP

電子書籍におけるZIPの存在と言えばEPUBである。EPUBは、ファイル自体はXHTMLやCSSといった電子書籍コンテンツを構成する複数のファイルを一つのパッケージにまとめたもので、そこにZIPフォーマットが利用されている。

このとき、EPUBとして認識するために必要なのがEPUBの仕様で、たとえば、「mimetypeファイルをアーカイブの先頭に配置する」「mimetypeファイルは圧縮および暗号化していてはいけない」といったルールがある。詳しくはIDPF(International Digital Publishing Forum:国際電子出版フォーラム)にて策定されているEPUB OCF(EPUB Open Container Format)に書かれている。

このように、今から四半世紀以上も前に開発された技術が、ここ数年の市場や文かを生み出している電子書籍に使われているというのはとても感慨深いものがある。このような動きから筆者が感じるのは、電子出版や電子書籍はコンテンツの独自性とともに、利用者(読者)がいつでもどこでも手に取りやすいものであること、そのためにはオープンフォーマットは不可欠だという点である。

[馮 富久 株式会社技術評論社 20151020]