アクセシビリティ

2016.02.15

アクセシビリティとは

アクセシビリティとは障害者にとっての施設やサービスの利用しやすさのことである。障害者にとっての知識や情報の利用しやすさを情報アクセシビリティという。年齢や身体障害の有無に関係なく、誰でも必要とする情報に簡単にたどり着け、利用できることを情報アクセシビリティということもある。ここでは前者の情報アクセシビリティについて説明する。

 

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障害者権利条約

国連の障害者権利条約は2006年に成立したが、日本では国会での批准を経て、2014年2月19日、我が国について効力を発生した。障害者権利条約の第9条にアクセシビリティの見出し(英文、翻訳文は「施設及びサービス等の利用の容易さ」)があり、障害者が自立して生活し、及び生活のあらゆる側面に完全に参加することを可能にすることを目的として、特に①建物、道路、輸送機関その他の屋内及び屋外の施設(学校、住居、医療施設及び職場を含む)、②情報、通信その他のサービス(電子サービス及び緊急事態に関わるサービスを含む)を簡単に利用できるようにする措置をとることとしている。

障害者基本法と障害者差別解消法

日本では、障害者権利条約批准のための国内法整備として、障害者基本法が2011年に改正・施行され、さらに障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)が2013年制定され、準備期間を経て2016年4月1日から施行される。日本の国内法とそれに基づく施策では、施設やサービスの利用しやすさ、あるいは障害者の社会参加の障壁の解消にバリアフリーという言葉をあてることが多い。

障害者差別解消法では、国や地方自治体などの行政機関等は、障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があれば、その実施に伴う負担が過重でないときは「社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない」として義務化されている(第七条2項)。民間事業者は「必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない」(第八条2項)。

情報アクセシビリティの向上施策

障害者基本計画では、「障害者が円滑に情報を取得・利用し、意思表示やコミュニケーションを行うことができるように、情報通信における情報アクセシビリティの向上、情報提供の充実、コミュニケーション支援の充実等、情報の利用におけるアクセシビリティの向上を推進する」(6項)としている。

第三次障害者基本計画

第三次障害者基本計画(2013年度~2017年度)で情報アクセシビリティの向上に向けて次のような取り組みが行われている。

(1)情報通信における情報アクセシビリティの向上

①障害者に配慮した情報通信機器及びサービス等の企画、開発及び提供。②各府省における情報通信機器等の調達は、情報アクセシビリティに配慮して実施。③国立研究機関等において障害者の利用に配慮した情報通信機器・システムの研究開発。④障害者に対するIT相談等を実施する障害者 ITサポートセンターの設置。

(2)情報提供の充実等

①放送事業者への制作費助成、字幕放送(CM番組を含む)、解説放送、手話放送等の普及。②聴覚障害者に対して、字幕(手話)付き映像ライブラリー等の制作及び貸出し、手話通訳者や要約筆記者の派遣、相談等を行う聴覚障害者情報提供施設の整備。③民間事業者が行うサービスの提供や技術の研究開発を促進し、テレビや電話等の通信・放送サービスへのアクセスの改善。④アクセシビリティに配慮された電子出版の普及に向けた取組を進めるとともに、教育における活用。⑤日本銀行券(五千円券)の改良、携帯電話に搭載可能な券種識別アプリの開発・提供等を実施し、券種の識別性を向上。⑥心身障害者用低料第三種郵便を検討。

(3)意思疎通支援の充実

①手話通訳者、要約筆記者、盲ろう者向け通訳・介助員等の養成研修等により人材の育成・確保を図り、また派遣、設置等による支援。②情報やコミュニケーションに関する支援機器の開発促進と、障害者に対する給付、利用の支援等。③意思疎通に困難を抱える人を支援するための絵記号等の普及及び利用促進。

(4)行政情報のバリアフリー化

①行政情報の提供・地方公共団体等の公的機関におけるアクセシビリティの向上。②災害発生時に障害者に対して適切に情報を伝達できるよう、障害特性に配慮した情報伝達の体制の整備。③政見放送への手話通訳・字幕の付与、点字又は音声による候補者情報の提供等、障害特性に応じた選挙等に関する情報の提供。④知的障害者等にも分かりやすい情報の提供。

著作権法の例外規定

印刷などで出版されている著作物を読むことができない人々向けには、著作権法第37条3項の例外規定で、①点字の作成と送信ができ、②政令で認められた者は文字を音声にするなど必要な方式で複製して公衆通信を行える。

聴覚で認識する方式で発表されているものについては、聴覚障害者向けに、著作権法第37条の2での例外規定で、政令で認められた者は音声のテキスト化や複製、貸出を行える。

政令で認められた者には、障害者向け福祉施設・団体などの他、大学図書館、国会図書館、図書館法・学校図書館法などで定める図書館が該当する。

デイジー図書

1980年代末より印刷物を読むことができない人向けにデジタル技術を使って録音図書を制作するDAISY(Digital Accessible Information System)の標準化の検討が始まり1990年代半ばより実用化された。現在、録音図書は点字図書よりも点数が少ないが、インターネットを経由して利用できるなどの利点があり、利用(ダウンロード)数が多い。DAISY規格は、音声を聞きながら画面上で読み上げている箇所をハイライト表示するマルチメディアDAISYに発展している。マルチメディアDAISYは教科書でも使われるようになっている。

Webアクセシビリティ

Web Accessibility Initiative(WAI)

Webコンテンツのアクセシビリティについては、W3C(World Wide Web Consortium) のWeb Accessibility Initiative(WAI)よりWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0が勧告されている。これに基づき、日本国内では「高齢者・障害者等配慮設計指針 −情報通信における機器・ソフトウェア・サービス − 第3部 ウェブコンテンツ」(JIS X 8341-3)が制定されている。WCAG 2.0/JIS X 8341-3は、HTML、CSS、PDFなどで作成するWebコンテンツを、アクセシブルにするために対応するべき項目が提示されている。WCAG2.0は抽象度の高いガイドであり、参考資料として具体的な実装テクニック解説文が作成されている。

また、インタラクティブなコンテンツについてはWAI Accessible Rich Internet Applications (WAI-ARIA) 1.0が勧告されている。

電子出版物のアクセシビリティ

電子出版物の代表としてPDFとEPUB3.0のアクセシビリティについて紹介する。

(1)PDFのアクセシビリティ

PDFのアクセシビリティについてはPDF/UA(ISO 14289-1)で、ISO 32000-1:2008 をベースとするアクセシブルなPDFのための要求項目を決めている。2008年に初版、2014年版が最新である。PDF/UAはファイルの識別方法(5節)、要求項目まとめ(6節)、ファイル形式への要求項目(7節)、準拠リーダーへの要求項目(8節)、準拠支援技術への要求項目からなる。PDF/UAに準拠するには、まずタグ付きPDFでなければならない。特に本文については、7.2から7.9できめ細かくタグを付けることが要求されている。例えば、見出しはH1タグをルートとし、H2、H3…と順を追って階層化した見出しタグを付けなければならない。図にはFigureタグを付け、図のキャプションにはCaptionタグを付けなければならない。フォントは原則として埋め込まねばならないが、文字コードの取得もできなければならない。

(2)EPUBのアクセシビリィティ

EPUB3.0の制定にはデイジーコンソーシアム関係者の尽力も大きかった。デイジーコンソーシアムは開発中であったDAISY 4.0仕様を制作/交換用とし、配布形式はEPUB3.0とすることとした。これによりDAISYとEPUBの一元化が図られた。

EPUB3.0では画像をパッケージする固定レイアウトと、文字を中心とするリフロー型がある。画像をパッケージしただけでは音声読み上げはできない。EPUBのファイル中に文字コードが含まれていて、リーダーや支援技術で利用できるようになっていれば音声読み上げができる。

EPUB3.0はWeb技術をベースとしているので、アクセシビリティの基本についてはWCAGやWAI- ARIAと共通である。アクセシビリティを高めるには、読み進める順序を分かりやすくし、画像のキャプションはテキスト化し、代替テキストを用意する、表を適切にマークアップするなどの配慮が必要である。

一方、出版物はWebコンテンツと異なり、構成(前付・本文・後付)や主文脈と副文脈(注・コラム・参照など)の使い分けなどのコンテキスト情報が重要なのでWebアクセシビリティとは別の配慮も必要である。EPUB3.0のアクセシビリティ規格は制定されていないが、IDPFより「EPUB3 Accessibility Guidelines」が公開されている。そこではepub:type属性の利用が推奨されている。

[小林 徳滋 アンテナハウス株式会社 20160215]