電子図書館(1)

2016.07.20

電子図書館とは

広義には、データベースを使った書誌・文献検索サービスや、テキスト・映像・音源などマルチメディアデータを含むデジタルアーカイブの提供、また、それらをインターネット経由で館内・館外から利用可能にするなどのシステムを備えた図書館やアーカイブサービスを総称して電子図書館と呼んでいる。
一方、国内では2010年ごろからの電子書籍の普及と並行して、公共図書館などが紙の図書の貸出しに加えて電子書籍の貸出しを行う事例が始まってきており、こちらも「電子図書館」と言われている。近年、電子書籍、出版業界では、今後拡大が見込まれるサービスとして、後者の「電子図書館」が注目を集めてきている。

 

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以下では、主に電子書籍の貸出しを行う「電子図書館」サービスについて記載する。

貸出業務の電子化と閲覧の電子化

図書館が実施する、紙の図書の貸出しに加えて電子書籍の貸出しを行う事例にも、そのサービスにふたタイプがある。

・貸出業務の電子化
・閲覧の電子化

紙の図書の貸出を受けると、2週間なりの貸出期間に限り、ユーザーは貸出図書を独占的に読書することができる。読書完了後あるいは貸出期限が来ると本を返却する。この業務形態をそのまま、電子書籍にシフトさせるのが「貸出業務の電子化」のタイプ。主に公共図書館向けサービスにこの事例が多い。紙と同様、電子書籍も最初から最後まで読み通す「読書」モデルが前提のサービスといえる。貸出期限が来ると自動的に読めなくなる。

他方、電子書籍のメリットに検索の容易性があげられる。大学図書館向けの電子図書館サービスはこの点に着目。図書館のID/PWの管理の中ですべての図書館利用者がすべての電子書籍を検索対象にし、検索結果から自分が関心、興味を持った電子書籍を随時閲覧することができる(閲覧の電子化タイプ)。特に貸出期限などの概念はないし、運用の実態も数分程度、自分に必要な箇所を閲覧した後、気になった箇所をコピーペストして記録に残し、次の電子書籍を探索をするといった具合の「利用」モデルが前提となっている。

電子図書館のメリットと課題

電子図書館の主なメリットと考えられる点は以下の通り。

・館外から利用可能な24時間365日のサービス提供による、時間・空間的な制約の解消。
・障がい者や高齢者の利用支援の拡大(テキスト読み上げ、文字拡大など)。
・デジタル化による貴重資料や地域資料の保持、公開、劣化防止。
・省スペース化による物理的な在庫管理問題の解消。
・貸借管理のシステム化による図書館業務の業務軽減

一方、現時点での課題としては、以下のようなことが考えられる。

・貸出可能な電子書籍絶対数の不足
・購入費用の会計基準の明確化
・電子書籍の価格と図書館予算との調整

なお、公共図書館を中心とした図書館での図書の貸出しに関しては、従来の紙の図書に関しても、著者、出版社、取次、書店、利用者、図書館などの関係者間で、利害関係の認識が必ずしも一致していない面が現状でも見られ、様々な議論がなされている。

さらに電子書籍に関しては、出版社は電子書籍を電子図書館での貸出し対象として販売(あるいは利用許諾)することとなるが、紙の図書とは異なる法的背景等の点で、著作権者との契約を改めて整える必要がある場合も少なくない。

主な電子図書館サービス提供事業者(公共図書館)

電子図書館では、電子図書館サービスを提供する事業者が、各図書館にクラウド型のサービスを提供し、利用者はその仕組みを通じて利用する場合が多い。2016年6月時点での国内の主な電子図書館サービス提供事業者を以下に挙げる。

大日本印刷グループ

大日本印刷、日本ユニシス、図書館流通センター、丸善が共同で、クラウド型電子図書館サービス『TRC-DL』を提供している。PC(Windows、Mac)、スマートフォン・タブレット(iOS、Android)で利用可能。読み上げ機能あり。2016年6月時点で38館が導入。

紀伊國屋書店

NetLibraryのサービス名で図書館向け学術系電子書籍コレクションを提供。学術書・専門書を中心に、レファレンス書、各分野の専門書・ビジネス書・一般書など、日本・欧米の主要出版社1,500社以上が参加。公共図書館では、2016年6月時点で4館の導入実績がある。

メディアドゥ

2014年にアメリカの電子図書館事業最大手のOverDrive社と提携し、2015年4月から国内での電子図書館サービスを本格的に開始。公共図書館では、2016年6月時点で3館の導入実績がある。公共図書館のみならず、企業内での書籍管理なども展開。なお、OverDrive社は2015年3月に楽天に買収されている。

日本電子図書館サービス

2013年10月に、紀伊國屋書店、KADOKAWA、講談社が合弁会社として設立。サービス名称は『LibrariE』。2016年3月時点で、電子書籍提供出版社20社以上、ラインナップは1万点を超えている。

国立国会図書館のデジタル化事業

デジタルアーカイブとしての電子図書館の例では、国立国会図書館のデジタル化事業が挙げられる。国立国会図書館では、2001年から所蔵資料のデジタル化を進めており、著作権処理済みの明治期~昭和前期の図書や古典籍資料については、インターネット上での閲覧サービスを提供している。

さらに、2009年の著作権法改正において、権利者の許諾不要で図書館資料の原本をデジタル化することが国立国会図書館に対して認められたことにより、2009年から2011年にかけて大規模デジタルアーカイブ事業が実施された。2016年3月現在、インターネット公開資料、図書館送信対象資料、国立国会図書館館内提供資料を合わせて、約250万点の資料がデジタル化されている。

参考資料
「電子図書館・電子書籍貸出サービス 調査報告2015」(ポット出版)      
電子図書館について | 電子書籍の情報をまとめてみる  
国立国会図書館デジタルコレクション  
電子図書館事業の概要|国立国会図書館  
デジタル化資料提供状況|国立国会図書館

[井野口 正之/株式会社JTBパブリッシング/20160706]