引用

2017.01.10

引用とは

 この項で取り扱う「引用」は、もっぱら著作権法上の「引用」のことである。引用は、著作権法第32条で認められた著作物の利用方法のひとつである。他人の著作物を一定の要件を満たして、著作権者に断りなくで自分の著作物に転載する行為を指す。

 

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引用の考え方

 引用は、他人の著作物を自己の作品・コンテンツに取り入れて、批評や報道、研究などの目的で行う行為。自己の作品やコンテンツが主にあり、他人の著作物が従となっている必要がある。キュレーションサイトやまとめサイトなどは、これに合致しない可能性がありグレーゾーンとなっているのが原状。

引用の要件

 文化庁が下記の様な引用の要件を示している。

【条件】

ア​ ​既に公表されている著作物であること

イ​ ​「公正な慣行」に合致すること

ウ​ ​報道、批評、研究などのための「正当な範囲内」であること

エ​ ​引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること

オ​ ​カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること

カ​ ​引用を行う「必然性」があること

キ​ ​「出所の明示」が必要(コピー以外はその慣行があるとき)

 一般に考えられている以上に引用の要件は厳格であり、インターネットなどでは、引用としては不十分な無断転載が散見される。

キュレーションサイト

 2016年12月にDeNAが記者会見を開き、Welqなど運営していた10のキュレーションサイトを休止した。記事内容に不正確な医療関連記事などがあり、「他サイトからの文言の転用を推奨していると捉えられかねない​」とした。キュレーションサイトの著作権法上の問題等が浮上し、他のサイトでも続々休止するところが現れた。

 これまで「引用」は、主たるコンテンツがあり、その従として引用されるという建て付けで考えられていたが、キュレーションサイトの様な、他のメディア​のコンテンツを集めて新しい価値を作り出すということは想定されておらず、今後のこのグレーゾーンが社会的そして法的にどう扱われて行くのか注目されている。

引用元

 引用する時は、孫引きではなく元の著作物にあたることが重要である。インターネットでは、引用や転載(違法も含めた)が非常に多いため、正しく引用したつもりでも、そうなっていない場合があるので注意が必要。

著作権者への確認

 引用する場合は、著作権者に連絡や許諾を得る必要はない。実務的には、引用要件を満たしているにもかかわらず、「引用してよいですか」などと了解を求めて、拒絶されたり、引用に当たるかどうかは事例によって異なるので、著作権者側が判断しかねる場合もある。不要な許諾依頼や連絡はかえって、ややこしくする可能性があることを知っておきたい。

 

 

[生駒大壱 株式会社旺文社 20170105]
[内容改訂 20220509]