日本電子出版協会
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電子出版とは
電子出版とは何でしょうか?残念ながら電子出版に関する定義はまだ成立していません。
今後さまざまな電子的な出版物が試行錯誤される中で、電子出版の姿が次第に明らかになってくると思われますが、ここでは現時点で考えられる電子出版のいくつかの捉え方を紹介します。
広義の電子出版
もっとも広く電子出版をとらえると電子的なコンテンツはすべて電子出版だということができます。

インターネット上のWebサイトは何らかのコンテンツを世界に向けて発信しているわけです。会社の宣伝や販売などを目的としたものではなく、情報や自分の考えを伝えることを目的としたWebサイトが数多く存在します。そういったものは無料・有料に関わらず立派な電子出版といえるでしょう。

CD-ROMによる辞書・辞典・図鑑などの販売、Webにおける小説のダウンロードや辞書引きサービスなどが電子出版のように思われがちですが、それは紙の出版物の電子化という範疇で、新しい出版にはより広い視点が求められています。それはコンピュータ技術やネットワーク技術の進展がさまざまな旧来の壁をなくしているからです。

電子的なコンテンツは従来の出版物が抱えていたふたつの壁から自由になります。ひとつはジャンルの壁、もうひとつは"もの"の壁です。
ジャンルの壁がなくなる
旧来の壁のひとつはジャンルの壁です。
本の世界では文字と静止画がすべてでした。しかし電子出版では動画も音も扱えますし、もっと複雑なプログラムを実行することさえ可能です。ゲームや音楽、動画という今までは異なるジャンルであったものが相互に融合していくことが予想されます。
たとえば鳥の鳴き声が聞ける図鑑――出版物の中に音声が入ることも可能なら、音楽CDに文字や写真などを収録する――音楽CDに出版物が入り込むことも可能です。どちらもすでに実現されています。

このようにTV 映画 本 音楽CD といった旧来のジャンルの境目がなくなっていくとともに、まったく今までにない新しいジャンルの出現も期待できます。

たとえばTVゲームというジャンルはコンピュータの生んだ新しいエンターテイメント・ジャンルです。ロール・プレイングものなどはストーリーもしっかりとしており、従来のエンターテイメント小説やマンガの役割を一部担っていると考えられますし、映画やTVの果たしてきた役割の一部を担っているとも言えます。

今までは同時に成立しなかった表現手段をひとつのコンテンツの中で駆使することが可能になったのです。この融合を真に活かす表現が成立するには長い時間がかかると思いますが、若き才能がきっとこの新しい表現を自分のものにし新しい表現を確立することでしょう。

電子出版とは来るべき新しい表現手段、新しい表現ジャンルに対する出版という視点からのアプローチです。
ものの壁がなくなる
旧来の壁のもうひとつはものの壁です。本や雑誌、新聞など従来の出版物はみな紙という物体に情報を載せて運んでいました。

もの離れはふたつの側面で重要です。ひとつは製造コストの激減、もうひとつは流通の革命です。
製造コストの激減
出版物は比較的製造コストの安い製品ですがそれでも製造費は馬鹿になりません。ひとつの本を作るのには最低でも数百万円の金が必要です。そのコスト中で紙や印刷費といった情報を紙に固定する費用は大きな比重を占めます。しかし電子出版、特にネットワークを利用した場合にはこのコストはほぼ内容を制作する費用だけになります。

残念ながら現状では市場規模が圧倒的に小さいため電子出版物の価格は紙の本と同じような価格に止まっています。しかし電子的出版物が紙の本と同じように売れるならば本の価格は飛躍的に廉価になるはずです。
流通の壁がなくなる
従来の出版物は紙という物体の移動、つまり物流という過程を通して読者の手に渡ってきました。電子出版はネットワークを通じて流通します。

そこでは書店の棚の制限もなく、営業時間の制限もありません。また地域の差もなく世界中のどこでも情報が流通できるわけです。

現在の出版の抱える問題――返品、在庫の負担、新刊の乱造、絶版、これらは物流を通して情報を流通させて来たことに起因しています。

紙の本が抱えるこれらの致命的な欠点から自由になることで、今までは困難であった小数部出版やロングセラーが可能になり、出版の質をマスプロダクトから個々のニーズにあったものに変換することも可能になってくると考えられます。
プロとしての電子出版
製造コストと流通の壁は新しく出版をしようとするものにとって大きな壁として存在していました。制作コストの激減と流通の革命は出版活動を一部の専門業者から解き放ちます。ふたつの壁がなくなることにより誰もが発信する時代がやって来ました。現在のWebの爆発的拡大はその時代の到来の序章です。

膨大な量の無料情報が溢れる時代に情報発信の専門家は不要なようにも見えます。はたしてそうでしょうか?まとまったひとつのコンテンツを制作するには多くの労力が必要ですし、多くの経験も必要です。多くの労力や経験を注入したコンテンツを制作するためには費用や継続した組織運営が必要です。

情報の受け手が多くの苦労をすることなく、確実に良質のコンテンツにたどり着けること。そこに電子出版のプロの必要性があり、有料のコンテンツの必要があるはずです。新しい情報環境――誰もが発信する時代――の中で情報発信のプロの役割分担を確立することが求められていると言えます。
現在の電子出版
今まで述べてきたように電子出版の姿は従来のジャンルを超えてさまざまに発展しようとしています。まったく新しい表現ジャンルも生まれていくことでしょう。しかし現在の我々の知識や文化は一朝一夕に出来上がったものではありません。最新の知識、最新の技術、最新の文化も過去の蓄積の上に成立しています。

まずそれらの蓄積された文化をネットワーク技術を使って利用しやすくすること、これは新しい文化を生み出すための始めの一歩なのです。WBT(Web Based Training)などのように学習方法をコンピュータを使って新しく組み立て直してみる、これも新しい文化を生み出すための始めの一歩です。

表現方法や技術だけが課題ではありません。著作権や印税などの制度の問題も一歩ずつ新しい情報秩序に構築し直さなくてはならないでしょう。

現在の電子出版はそんな最初の一歩の位置にいます。本当に新しい表現はそんな地道な努力の上にはじめて成立するものと思います。