日本の電子出版

1998.01.01

イースト  下川 和男

 昨年11月、コンピュータ関連の展示会Comdexで米国に出張した際、
長谷川会長、研究社の関戸さんと電子メールでちょっとした議論をしま
した。日米の電子出版の相違についてです。

 電子出版の定義にもよりますが、米国の状況は概ね以下の通りです。

 辞書系では、Microsoft社のBook Shelfがほぼ市場を独占しています。
マルチメディア事典系では、同じくMicrosoft社のEncartaが独走して
おり、Compton's、BritannicaそしてIBMなどが2週遅れで走っています。

 電子本系では、Voyager社がまさしく、ひとり気を吐いています。
ゴッホやフェルメールといった美術物から、ロリー・アンダーソンの
音楽パフォーマンス物まで、高いレベルの電子出版物を作りつづけて
います。

 辞典系がBookshelfのみとなった理由は、ハッキリしています。Micro-
soft社がMS-DOSの時代からBookshelfを提供し、Windows時代には、Word
やOffice、Worksといったアプリケーションを買うと、Bookshelfがおま
けとして付いてくるからです。
パソコンを買うとOfficeが添付されていますから、当然Bookshelfも入っ
ています。
ということで、あっという間に電子辞書の市場を席捲してしまいました。

 また、Microsoft社はBookshelfを「辞書という文化」ではなく「Word
やExcelと同じソフトウェア製品」と考えていますので、「Bookshelfを
共通インタフェースとして、各種の辞書が検索できる」などという面倒な
ことは行いません。

 日本はどのような状況かというと、英和辞典だけでも、研究社、三省堂
、学研、旺文社、小学館、大修館など、書店の棚ほどではないにしろ、
電子辞書をユーザが選択することができます。電子ブックとEPWINGタイト
ルだけでも300種類近くが販売されています。

 私はコンピュータ業界の人間ですが、私たちの業界は、「米国のテクノ
ロジーを日本でいかに応用するか」が主な仕事です。何事も米国に見習っ
ていれば事足ります。

 ところが、電子出版業界は、どうも、日本が世界の最先端を走っている
ようです。

 日本でこれだけ電子出版が盛んになった原因は明確です。それは日本
電子出版協会、EPWINGコンソーシアムそして電子ブックコミッティの活動
です。JEPAが出版、印刷、コンピュータ、ソフトウェアといった電子出版
に関連する業界を横断的にまとめ、EPWINGコンソーシアムがテクノロジー
を提示し、電子ブックコミッティがその普及を推進した成果です。

 では、これから日本の電子出版はどうすべきなのか。CD-ROMに加えて、
インターネットというとてつもない媒体が登場し、Web Publishingという
言葉も定着しつつあります。JEPAは情報提供と交流の機関として、より
強力な仕組みが必要だと感じています。EPWINGはWindowsとインターネッ
トの時代に即した新しいテクノロジーを提示する時期に来ました。電子
ブックはVAIOテクノロジーなど、斬新なハードウェアへの進化が期待され
ています。

 長谷川さんと関戸さんにお送りしたメールをちょっとアレンジして、
結びとさせて頂きます。
 「日本の電子出版の将来は、JEPA会員各位の双肩にかかっています。
先達はいません。皆さんが世界のトップを走っているのです。」