億万長者になられた方、ご連絡下さい

1999.05.01

日立製作所(当時)  三瓶 徹

 米国におけるインターネット関連株は軒並み急騰し、数ヶ月で10億ドルを超える金 を手にした創業者も数多くおられるというのに、CD-ROM関連者で、億万長者になられた 方の名は聞かれません。おられたら我々の励みになるので是非ご連絡ください。16年 前、CD-ROMが出始めた頃に、データベース商売で一儲けした(額は小さいが)東海岸の 学生がいたくらいでしょうか。マイクロソフトでCD-ROMを仕掛け、BookShelfを始めた Tom Lopesさんも、後に創業したマルチメディア制作会社を売ったとは聞いていますが、 それで億万長者になられたとは聞いていません。
 CD-ROMドライブを作るメーカはどうでしょうか。当社も世界で初めてCD-ROMドライブ を売り始めて16年、黒字だったのは、通算して、ほんの1年ぐらいだったのではない でしょうか。最初の数年は市場開拓、そろそろと思う頃には家電メーカが低価格で参入。 負けじと量産体制を敷くと、為替変動に翻弄され、円高で赤字、円安では買い叩かれ、 誰の為に作っているのか判らなくなりました。
 儲からなくても、また億万長者が出なくても、日本の電子出版は元気です。総じて 情報産業がアメリカの一人勝ちの状態にあるにもかかわらず、電子出版は、日本が頑張 っている分野ではないでしょうか。何故でしょうか? それは、長谷川会長がおっしゃ っている人の輪だと思います。日本でCD-ROMが出始めた15年前は、MS-DOSのパソコン 間でも互換性はありませんでした。そこで前田会長から、「日立もIBM-PC完全互換パソ コンを作らないと、CD-ROMは普及しないぞ」と発破をかけられましたが、結局、国内の PCが統一されるのに10年近くかかりました。しかし悪いPC環境下でも、アプリケ ーション制作の重複を減らすために、富士通の坪倉さんや凸版の田中さんらが中心にな ってEPWINGを作り、ソニーさんも入って電子ブックも育ちました。どれもこれもJEPAの 人の輪です。
 2年ほど、米国のシリコンバレーで遊んで来ました。どうやったらこの連中に勝てる のか悩みましたが私なりの結論は、米国には無い領域で市場を立ち上げ、その後グロー バル化を狙うのが良いかもしれない、というものです。人が東京という狭い区域に集中 し、何百万人もの人が電車通勤し、主要駅には人が溢れ返る。神田川周辺には出版社、 印刷会社、本屋が集中し、そしてJEPAもあり、人の輪がある。電子メールも使うが、 赤提灯もある。これらは米国には無い文化です。彼等には出来ないものを生み出せる力 が、神田リバーサイドにはあります。
 今まで電子出版はCD-ROMを使ったリファレンス系が中心で、本と同様に卸を通じ、 お店で売られていますが、在庫、返本、絶版などを解消しようとネットワーク配信を目 指して文芸書籍も取込んだ電子書籍コンソーシアムが昨年スタートしました。これも JEPAの人の輪の延長です。我々メーカも、夢を見させてもらいながら、ドップリ浸かっ て鈴木雄介さんをサポートして行きます。