台湾にまいた「電子書籍ビジネス」の種

2009.01.01

イーブックイニシアティブジャパン  鈴木 正則

 2008年12月4日、台北で開催された会議「eReading垂直整合座談会」に参加してきました。主催は台湾政府経済部で、実際の運営は経済部配下のシンクタンク「資策会」(創新応用服務研究所)。台湾における電子書籍事業の展開が主要なテーマで、いまや世界の電子機器製造の中核ともいうべき関連デバイスメーカーの新規ビジネスに寄与したいという政策・戦略を実行に移していくためのキックオフミーティングという位置づけの会議です。電子機器各社、出版・新聞などのコンテンツ各社、ネットワーク関連各社、漫画家集団など、電子書籍ビジネスに関わる主だったメンバーが参加して、熱心な議論が行われました。私は「イーブックジャパンが提供する電子書籍閲覧ソフトウエアについて」と題するキーノートスピーチを行い、引き続き行われた「電子産業座談会」(シンポジウム)にも参加しました。私以外は以下のようにすべて台湾の電子書籍に関わる事業会社の責任者、研究者が一堂に会した形です。
 iREX 游孟需(CEO)
 城邦出版 祝本堯 資深経理
 聯合線上(United Daily News新聞社) 劉永平 総経理
 資策会  蘇偉仁 (組長)
 傳星科技 江夏偉鵬(CEO)
 亜太漫画協会 黄志湧(理事長)
 愛美誌 林泰龍(CEO)
 国立中山大学 張玉山(Doctor)
 電子産業座談会は、私のキーノートの要点である、イーブックジャパンが2001年の発足以来、出版不況の中にありながら着実に電子書籍市場を育てることに成功しつつあり、そのキーは独自に開発してきた独自のビュアーであり、独自の電子書籍制作システムにあるというポイントをふまえて、その日本における成果を台湾はどう受けとめ、いかにして台湾における電子書籍ビジネスを展開していくべきかを中心に議論されました。誰もが「無料」という常識に支配されているなかにあってインターネットを介して有料コンテンツを提供するというイーブックジャパンのビジネスが成立しているという事実は台湾の関係各社にとっても新鮮な印象であったようで、その理由を熱心に聞いてくる出版社の若いスタッフも少なくありませんでした。
 スピーチとそれに引き続く座談会のあとは、資策会メンバーとの懇談、台湾の電子工業各社との懇談、漫画家集団との議論など、二日間にわたってスケジュールが組まれ、用意しておいた名刺が底をつく状況でした。
 慌ただしい二日間でしたが、台湾に電子書籍ビジネスの種はまけたように感じています。2009年、その種が芽吹くのを待っているところです。