世界に広げよう、コンテンツの”和”

2009.03.04

イースト  下川 和男

 Apple iTunes Store内のiPhoneとiPod touch(以下、総称して「iPhone」)向けアプリケーション・ソフトウェアのダウンロード販売サイト「App Store」が人気です。2008年7月の公開以来、半年間で15,000タイトルのソフトウェアが登録され、今でも毎日100タイトル以上の新作が登場しています。ダウンロード数も5億本を超え、iPhoneユーザは全世界で1,300万人とのことなので、1人平均23本のソフトを使っていることになります。大半は無料か99セントなのですが、様々なソフトの売れ行きをみていると、iPhoneユーザの客単価はPCユーザより数倍高いと感じます。
 辞書、書籍、コミックなどのコンテンツもビュアーソフトとセット販売されており、「ネットにつながるデバイス」なので、Wikipediaビュアー、青空文庫ビュアー、デ辞蔵(ネット辞書と内蔵辞書の串刺し検索)など新しい概念のソフトも登場しています。画面サイズ3.5インチ(480x320)の制約はありますが、今後、iPod同様シリーズ化され5インチの大画面iPhoneの登場も予測されています。欧州から販売がスタートした、東芝の世界戦略スマートフォン「TG1」は、4.1インチ(800x480)です。
 iPhoneにWindows MobileとGoogle Androidを加えた3プラットフォームが、インターネットとケータイを融合した「スマートフォン」を推進しています。Microsoft Sky Market、Google Android Marketという、世界に向かってコンテンツやソフトを販売できる仕組みも、App Soreに右に倣えで、登場しました。
 さらに、iPhoneには世界の文字のミニマムセットである「ユニコード基本文字セット」が実装されていて、1,300万人のiPhoneユーザは日本語も中文もロシア語も表示できます。2008年10月に米国で発売された世界初のAndroidケータイ「G1」は、アルファベットと欧州フォント+中文フォントかな?と予測していたのですが、立派な日本語フォントも実装されていました。Windows Mobileも年内には世界の文字が表示できる方向に、右に倣えする可能性があります。
 爆発的な普及が予測されるスマートフォンで、中国でも、インドでも、アフリカでも、日本語のコンテンツを見ることができるようになります。これに辞書ソフトや翻訳ソフトが連動すれば、日本の様々な文化を世界に紹介するとともに、他の国の文化を理解し、「和」を広げるには絶好の機会です。
 日本の出版社も、簡単に世界市場への販売か可能になるので、書籍コンテンツにスマートフォンならではの創意工夫を加え、果敢に挑戦してください。特に中国はiPhoneキラーのAndroid端末「oPhone」が3月に登場し、その後、「ケータイを買ったらOSはAndroidだった!」風に無意識で普及して、数年で巨大なスマートフォン市場が形成されます。イーストは、辞書、データベース、雑誌、新聞などのビュアーソフト、つまり「コンテンツ抜きではただの箱」ビジネスを推進しているので、是非、一緒に創意工夫をさせていただきたいと考えています。
 iPhone、iTunes Store、App Storeは、日本のガラパゴス・ケータイをAppleが深く研究し、「ガラパゴスを世界に広げた投網型集金システム」です。これにGoogleとMicrosoftが習おうとしている構図なので、ガラパゴスを体験されている皆様は、他国の出版社よりもスムーズにスマートフォンの世界市場に参入できると思います。
 ということで、お昼休みの長寿番組ではありませんが、「世界に広げよう、コンテンツの”和”」