電子書籍雑感

2017.05.01

じほう  斉藤 真木

 電子書籍元年といわれて早数年、最近電子コミックに関しては、無料配信からの流れで紙のコミックも相乗効果で売れているとの話もありようやく軌道にのった感がある。しかしコミック以外についてはまだまだ元年を迎えてるとはいいがたい状況と感じている。

 一昔前、電車の中では若いサラリーマンが週刊コミックを読んでいるのが当たり前の光景であったが、最近ではまったく見かけなくなった。とはいえ若いサラリーマンがコミックを読まなくなったのではない。スマートフォンの画面の大型化や普及率もありスマートフォンでマンガを読むことが当たり前になり、コミックを読むスタイルが紙から電子へ変化したのである。
 では小説はどうだろうか。電車の中では紙の小説を読んでいる人をよく見かける。個人的な意見であるが小説や実用書はスマートフォンでは画面が小さすぎるのでサイズ的にはタブレットのほうが適していると思う。また他国に比べ日本は紙の書籍を購入しやすかったり、価格が安かったりする面もあり、日本のタブレットの現状の普及率では書籍を読むスタイルが紙から電子に変わるまでにはまだまだ時間がかかるのであろう。

 総務省の平成28年度情報通信白書(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/pdf/index.html)によるとスマートフォンの普及率は60.2%、世代別上位は20代87%、30代73%、タブレットの普及率は19.5%、世代別上位は30代25%、40代21%となっており、米国、英国、ドイツ、中国、韓国といった国と比較すると普及率は大きく後れを取っている。特にタブレットの普及率はアメリカ57.2%、英国55.6%、ドイツ45.8%、中国47.3%、韓国34.1%とかなり差がある。
 電子書籍の普及率は、日本24.2%、米国51.9%、英国46.0%、ドイツ30.1%、中国83.2%、韓国53.0%とタブレットの普及率同様に諸外国から大きく後れを取っている。

 電子書籍の普及率をみると元年は遠いと感じてしまうが、タブレット所有者の電子書籍利用率は40%をこえているとの調査もあり、タブレットの普及率が海外並みになってゆけば電子書籍の普及率もあがると考えられる。また、電子書籍ならではの魅力的コンテンツを作ることができれば電子書籍によってタブレットの普及率をあげることができるかもしれない。
 我々出版社は当然の業務である魅力あるコンテンツの作成(紙でも電子でも)とともに財産である過去制作したコンテンツの電子化を行い来たるべき電子書籍元年に備えていかなくてはならない。