どうして今、紙なの

2018.03.05

日外アソシエーツ 山下浩

 突然ですが2018年2月、大宅壮一文庫では「大宅壮一文庫 雑誌記事人物索引」2014年版、2015年版、2016年版をオンデマンド出版による冊子体で刊行し、小社・日外アソシエーツはこの編集・刊行・販売のお手伝いをすることになりました。

 冊子体での目録刊行は20年ぶりとなります。明治時代から1995年までの記事索引は、冊子体『大宅壮一文庫雑誌記事索引総目録』として刊行され、他に1988年から2008年までの索引を収録したCD-ROMも出されていますが、10年経った今ではこのCD-ROMは“読むことが出来ないCD-ROM”になってしまっています。また「Web OYA-bunko」でオンラインDBの提供も行っています。

 大宅壮一文庫が開いた発刊記者会見で、新聞社の若い記者から「どうして今、紙なの」という至極当然の質問が出ました。とくに若い世代の感覚では時代に逆行しているようで理解が出来なかったようですが、図書館からの反応は予想外に良いようです。図書館員はやっぱり紙が好き?

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大宅壮一文庫の索引(雑誌記事タイトルのインデックス)の特徴:大衆誌を中心とした収録で、その時代の空気や生の世相、民衆の声を反映!
 索引総数614万件(2015年3月現在。年間約20万件ずつ増加)
 人名索引 約14万人(271万件)
 件名索引 約7000項目(343万件)
 採録期間 明治時代から現在まで(雑誌によって異なります)

雑誌記事索引の作成は、専任のスタッフが雑誌を1ページずつめくりながら行われます。
最初に、記事のテーマを人名索引と件名索引のどちらに分類するのが適当か判断します。次に、人名索引に分類する場合は、その人物の項目の有無を確認し、件名索引に分類する場合は、約7000の件名項目から該当する項目を選び出します。件名項目体系は、実用的であることが便利な反面、似通った項目も少なからずあって、この作業には熟練を要します。分類ができてやっと一人前の索引作成者になるのです。
<2018.2.28、大宅壮一文庫HPより>
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○話は変わって、これらのことから私が思ったことです。

 本来データベース制作には、「分類体系」「シソーラス(統制用語)」「典拠録」「キーワード・件名付け」というものがあって、“人間が付与する”分類、キーワード・件名(固有件名/事項件名)が基本となっている、と私は教わったし、一昔前(どれくらい前!? そんなに昔でもない)のDBはみんなそうやって作られていた。対して、昨今のディスカバリーサービスやGoogle、YAHOOなどの検索サイトを見ると、全文検索が基本で、同義語・類義語・関連語などの辞書も含めて、AIによる検索技術によりそれらを補い、検索する人には裏側のいろいろな辞書・仕組みは意識をさせずに「検索窓に思いついた言葉を入れて下さい」となっている。「高度な検索スキルがなくとも求める情報を容易に入手できるように」なったということだろう。便利さに私もつい失念しがちだが「何かこの検索に引っかかっていない重要な情報が必ずある」という意識は常に持っていたい。

 そもそも研究の第一歩は文献調査であり、この能力で成果に差が付くはずである。元になる情報が同じでは、分析能力の差は出るだろうが結果にも大差は出ないような気もする。文献調査は、あらゆる可能性を考えてツール、参考文献を探して追い求める=調査する人によって違うものが得られる。結局“それ以上の”調査・努力をしたものが抜きんでるということだろうか。

 「生活に必要な情報」「研究に必要な情報」は当然のことながら「調べるところ」「調べ方」が異なる。パソコンやスマホでの検索結果は、ほとんどの場合ピンポイントの情報である。例えば図書館の開架本棚では、すぐお隣の情報、周りの情報(文献)を見ることができてそこから広がっていくケースも多くある。何となくぶらぶらと周辺をながめることの重要さの認識と余裕を持っていたいと思う。

 今の若い世代は、情報(IT)ネイティブ、高齢者などの一部の情報弱者との格差社会が訪れようとしている。AI、IoTなどの発展により、やりたいこと、やりたくないことを“忖度して”なんでもやってくれる時代が来るのかもしれないが、書籍の編集もAIがやってくれるようになるのだろうか。

 作家の対談本「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」という本がある。
マネタイズを考えろ、ビットコインを採掘(マイニング)しよう、と世間はなにかと騒がしいが、私は紙に安心感を覚える、紙の本をずっと愛する人でいたいと思う。