デジタル化を振り返り

2018.10.31

大日本印刷  吉岡 健治

理事となって、初めて、JEPAニュース「キーパーソン・メッセージ」の番になりましたとのご連絡頂いた。「何、それと思いつつ」、これまでのメッセージを閲覧しました。テーマは、特に決まっていないようで、また、ネタも思いつかないので、2010年以降、身の回りで起きたデジタル化の出来事を回想して見ました。

1.2010年電子書籍元年(3回目)
と言われて久しいが、電子書籍制作の業務が本格化しそうなので、電子書籍制作の製造体制を構築して欲しいと、現部署に異動となりました。しかし、最初の仕事は、「国立国会図書館(以下NDL)の大規模デジタル化」の仕事であり、準備期間が短く大変であったが、無事、応札することができました。約1年間の限定した期間での大量本のデジタル処理のため、作業を各工程に区分して多人数で対応しました。現場は、オフィスビル内にある工場と言う印象でした。取揃えたスキャニング装置は、数十台以上となり壮観でした。しかし、当時、数百万円/台が、今、7万円/台(品質はさておき)で購入できるとは寂しい限りです。
夏頃には、NDLの業務は現場中心で対応できる様になり、本来のミッションである電子書籍制作の製造体制の構築に専任することができ、無事、honto書店のオープンに間に合わせることができました。また、電子雑誌は、リッチコンテンツ化していくと言われ、色々な取組みを行いましたが、夢半ばで終わってしまいました。ただ、制作の業務は、パソコン1台、一人で商品まで完成できるので、製造と言う感じではなかったです。また、一冊当りのコンテンツ制作費も数万円となってしまい、少し、寂しい気がしています。

2.緊デジ
NDLと電子書籍制作の製造体制構築の経験、及びNDLで使用した什器、パソコンなどがほとんど流用できたことで、仙台の工場担当者と協力して準備することができました。電子書籍の種類は、フィックス型とリフロー型があります。一部の商品において、底本からOCRによるTEXT起こしの認識精度が悪く、文字チェツク及び修正作業を私も含め数十名で動員もすることになった時期がありました。その作業はパソコン上で、一人一人の作業であり、個人の時間都合にあわせて作業が行えるため、印刷時に発生したゴミ・誤植の消し、シール貼り作業などの動員とは違い、一箇所に集まらないこともあり、一体感、達成感が得られず、寂しい限りでした。

3.あまり知られていないが、2014年4月~2017年12月14日まで主婦の友社(株)はDNPグループの一員であった。その間は、新しいビジネスの創出を行うべくプロジェクトを両社で取組みました。詳細は割愛しますが、その一つとしてWebメディアの立上げに関わることができました。その時の知見を活かして、現在のWeb関連の開発業務もこなせる様になりました。
最近、つくづく思うことは、2015年から一段とデジタル化が加速している(Webメディアへのシフト、インターネット広告の急激な伸び、AdTech、SNSなど)。デジタルトランスフォーメーションと言う言葉もでてきています。それに伴い、雑誌は厳しい状況になってきています。さらに、2017年後半からコミックの低迷も始まり、海賊サイト問題と、デジタル化の向かう方向が見えないことです。

4.AIも何かソリューションにならないか?も検討している
金融業界などでは、帳票類をAIによる手書き文字の認識させることが流行っています。90~99.9%など各社で競い合っています。昔から、出版社、現場には、認識率99.9%でも実用化は厳しいと言われ。。。。。

何か脈絡の無い話になってしまいましたが、私は、入社後、出版関連の部門に配属された時には、まだ、ライトテーブル中心のレタッチ作業が全盛でした。その後、CEPS(文字と画像の同時処理システム)から始まり、DTP、CTP(コンピュータtoプレート)、CMS(カラーマネージメントシステム)とデジタル化は、やっても、やっても、また、やって来る印象でしたが、『形が見える』デジタル化でした。
しかしながら、2010年から始まったデジタル化は、『形が見えない』デジタル化であり、あまり実感が得られない業務との戦いでした。そうは言っても、まだ、9年程度しか経っていませんが、実に濃い内容でした。
今後、IOT、インダストリー4.0など、電子出版としてどんな将来展開が待ち受けているのか?『形がない』デジタル化へ突入していくのかな?と思(重)いつつ、不安でもあり、楽しみでもあると締めくくっておきます。