文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめに関する意見

2017.03.29

 一般社団法人日本電子出版協会(JEPA)は、日本の電子出版を普及・発展させることを目的とし1986年に設立された、出版社、電気メーカー、ソフトハウス、印刷会社など幅広い業界により構成される業際団体です。今回の中間答申、とりわけ書籍に対する所在検索サービスにおける権利制限について電子出版の推進という立場から意見を述べます。

 現在ネットワーク上に公開されている情報は全文検索サービスなどにより所在情報が簡単に得られるようになっており多くの利活用がされています。他方、印刷本や電子書籍などの情報はいまだに旧態依然の書誌データ検索段階に止まっており、書籍の情報の所在について知ることが困難な状況に置かれたままです。
 ネットワーク上の玉石混淆の情報に比して、より信頼があり、丁寧に編集された書籍情報へのアクセス手段が、現状のように貧弱なままであることは文化の発展にとって由々しき問題と考えます。また求める情報が存在する書籍を知ることにより、書籍購入や利用が促進されることも予測され、出版市場などにもプラスの影響を及ぼすと考えます。
 なお米グーグルによる書籍の全文検索サービスおよびスニペット表示はアメリカにおいてフェアユースと認められ、日本の書籍も同サービスにおいて検索可能になっております。ところが日本においては同様のサービスを行うことが著作権法により禁じられている状況であることは、日本にとって由々しい事態であると考えます。

 上記のような理由により書籍情報の全文検索サービスを著作権法の改正により推進することに賛成です。ただしこれがスムーズに導入されるためには以下の点に十分な留意を払うことが必要と思われます。

1. 蓄積データの目的外使用、流出の防止対策
 バックグラウンドで行われた複製データの目的外使用やデータ流出が起こった場合は、一気に大きな被害を生じさせる結果となります。それらの防止策について十分な検討と制度の整備がなされることが必要と考えます。目的外使用、流出防止のための適切な措置がスムーズな情報収集のためにも必要です。

2. 所在情報システムにおけるスニペット表示のガイドライン・制限について
 書籍の全文検索など所在情報検索サービスにおいては、スニペット表示なしの検索では役に立つ検索とは言えません。しかしスニペットで表示される量などについては明快なガイドラインが必要と思われます。また辞書やレシピ、俳句集などスニペットであっても大きな権利侵害となるコンテンツがあり、これらのコンテンツに関しては権利者からの申し出により表示が制限されることが必要です。
 ただし書籍の内容は多様であり、辞書、レシピなど類型化で制限すれば足りると言うものではなく、たとえば推理小説などではコンテンツの結末など一部分だけは秘したいという要求もあると思われます。したがって内容の類型によりスニペット表示が制限されるのではなく、あくまで権利者の意思を尊重できる仕組みの構築が必要です。
 スニペット表示をしないことは販売機会の損失など権利者にとっても不利な選択になるわけであり、権利者の選択にまかせることで大きな支障を生む結果にはならないと考えられます。

3. 機械的アクセスの制限措置
 また書籍の全文検索に対して機械的なアクセスを行い、検索の目的を超え著作物のコピーと同様な結果を得ることも可能だと考えられます。それらの防止策も考慮されることが必要と思われます。