孤児作品

2022.08.02

 

孤児作品とは

孤児作品とは、権利者の所在が不明な著作物のこと。孤児作品としては次の3つのケースがある。

1. 著作者が死亡したことはわかっているが、著作権の保護期間をすぎていない場合、遺族または権利を譲渡された個人や団体の所在がわからない。
2. 著作者がペンネームなどにより著作活動を行っており、本名・生年・没年などが不明な場合。
3. 著作権を持つ法人や団体などが倒産・解散などによって所在がわからなくなっている。さらに、権利が譲渡されていても譲渡先が不明である場合。

 

もっと詳しく!

権利者がわからない、あるいは権利者の所在が不明な場合、著作物を利用する手立てはないのだろうか。それを可能にするものとして文化庁の裁定制度がある。

 

裁定制度

著作物などを利用するときに、許諾を得ようとしても「権利者が誰だかわからない」「権利者の所在が不明である」などの理由によって許諾を得ることができない場合、「裁定制度」を利用することができる。
これは、権利者の許諾を受ける代わりに文化庁長官の裁定を受け、補償金を供託することによって適法に著作物を利用できるという制度だ。裁定申請の対象となるのは、公表されているまたは相当期間にわたり公衆に提供等されていることが明らかな著作物(実演、レコード、放送、有線放送なども含まれる)である。

 

裁定申請に必要なこと

ただし、裁定申請を行うためには、権利者が不明であることを示すために「相当な努力」を行うことが前提となる。権利者情報を掲載している資料の閲覧、Webサイトなどでの検索、権利者情報を管理する団体などへの照会、新聞やWebサイトなどへ権利者情報の提供を求める広告の掲載など、権利者が不明であることを確認するための活動を行う必要がある。そのうえで、裁定申請を行い補償金が提示されて供託した場合には、申請中利用制度があり、裁定結果を待たずに著作物を利用開始することができる。

※詳しくは文化庁の『裁定の手引き』を参照。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/chosakukensha_fumei/pdf/92929201_01.pdf

[清水 隆 日本電子出版協会・事務局長 20220729]