電子出版のデスクトップ 4

ページという仕組み(その2)

 パソコンでの文書はスクロール=巻物が基本になっていると前回書いた。しかし画面上で文章をスクロールしたとたんに、今どこを読んでいたのか分からなくなったという経験は誰しもあると思う。最近流行りの文書ビュアが、スクロールではなく紙の本と同じようなページめくりを売り物としているのもこの意味では正しい。
 正しいからといってスクロールを排除しているとなると行き過ぎではなかろうか。たとえば文章の途中で長い名前が登場しそれが運悪くページとページの間を跨いでしまうと、読者はページを行ったり来たりしながら確認するといったような羽目に陥る。見出し語がページを跨いでしまう、「泣き別れ」と呼ばれる現象もある。
 電子出版では紙という物理的制約がないのだ。そんな時にはスクロールを使って数行の移動をしたくなるのは当然だろう。スクロールという機能は読者が自分で自由に見える範囲を区切れるということであり、電子出版の持つ柔軟なページの仕組みなのだ。
 パソコンのスクロールには1行づつ移動する機能以外にページダウン、ページアップという機能がある。これは紙媒体のページ切り替えに似た機能だ。しかし、単に行を1画面分移動するのではなく、必ず前画面の最後の行が次画面の最初の1行となるように設定されている。
 この機能を基本にして読み進めると、どこを読んでいるか分からなくなるというスクロールの不安定さもなく、また旧来のページにおける泣き別れの問題もない。この優れたページ方式はもっと評価されて積極的に使われて良いのではないだろうか。
 さてページという区切りには物理的に納まる範囲ということ以外に、いわゆる「改ページ」などの意味上の演出効果もある。章が終わったら、それがページの途中であろうがあとは空白とし、次のページまで飛んで新しい章を始めるという演出方法だ。また見開き編集などのページという制約を表現に活かした編集も有効な技法だろう。
 この場面では「ページ」は重要な意味を持つ存在になってくる。したがって単なるスクロールとは異なる動作が必要だ。つまり一つの流れが終わったという「しるし」を表現することが必要であり、また次の流れへ進む明示的な動作を持たせることも必要になる。
 巻物にたとえるなら章単位程度を一つの巻物とし、その巻物を順番に読んでいくという読むリズムを設計するわけだ。本のジャンルによっては節単位程度で区切っても良いし、実用的な書物では項目単位での区切りもあり得るだろう。
 そういった観点から見るとWebのホームページは面白いページ概念を持っている。つまり可変長のページという概念である。一つのページの長さはいかようにも設計できる。
 見開き編集のように一つの画面に入りきるよう内容を区切って見せることも可能だし、もっと長々と書き綴って一段落したところで次のページへのリンクを置いておくことも可能だ。画面単位で区切った場合でも1ページ何字何行というガチガチの単位ではなく大体画面1枚分でというアバウトなやり方が成立することも魅力的である。
 ページという仕組みは電子化によって大きく変貌を遂げている。ある時はチャートのように短いページを有機的につなぎ合わせ、ある時は巻物のように長いページをめくる。自由にページの長さを編集することが出来るのが電子出版の新しい表現の可能性だろう。
『情報管理』Vol.42 No.4 July. 1999 より転載

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