いま、情報基地「図書館」の納得度を

2001.09.01

図書館流通センター  尾下 千秋

 当社は、書籍データベース「TRC MARC」を作成・販売している会社である。
 そのデータをCD-ROMに商品化したのが「TRCD」「TRCD jr」で、合計で約3,000の利用者 を持っている。また、CD-ROMチェンジャーの普及につれ、搭載するCD-ROMの広がりが求 められ、収集幅の増加要求を突きつけられている。
 図書館市場への販売について制作元との了解がとれれば、搭載できるように検証し販売 に努めている。しかし新しい商品の受け入れに未成熟なため、まだまだ市場規模は小さ い。本格的な広がりはこれからだとも言えるが、果たしてインターネットの情報伝達に 組み込まれるのか、CD-ROM単独で生き残れるのかは判らない。
 アメリカブリタニカは、紙媒体の百科事典を断念しインターネット配信に切り替え、 利用を無料にした。その結果アクセス件数が1億回を優に越えているという。ブリタニカ は、アクセスした画面の広告を収入源にしている。皮肉なのは印刷物の百科事典販売で は赤字で、インターネット配信後は黒字に転換したことだ。膨大な百科事典資料を広告 材料に変え、広告会社になったようなものだ。その後紙媒体の百科事典の要求が強まり、 印刷物としての百科事典も販売せざるを得なくなったとは、またまた皮肉なことである。
 小社でも4月から日本版「ブリタニカ百科事典」を販売しているが、3カ月で150セット ほど売っている。来年3月には子供用の大型百科事典が刊行されるが、目標2,000セット で取り組んでいる。なぜ売れるかといえば、制作者がデジタルの方がコスト吸収がしやす く危険負担が少ないことからデジタル出版にシフトしてしまい、製品が枯渇してしまった からである。世の流れに追いつけない図書館が印刷物としての百科事典を渇望している 表れでもある。この現象はアメリカの現象と全く同じで、購買者の心理と言ってもよい。
 ある時、図書館から一本の電話がかかってきてこう聞かれた、「継続で購入している本に CD-ROMが付録として付いているが図書館で使用してもいいかどうか」。出版社が作成する 製品は大抵の場合「使用を認めます」との返事をもらっているので、大丈夫だとは思うが 念のため調べて返事します、と伝えた。電話に出た担当者は「図書館が利用するなど考え ていません。利用されては困ります」、とえらい剣幕で反論されてしまった。
 ならば本に付録としないで単体で売るべきだし、本文の補足のために付ける付録なのだか ら、制約をつける方が変だといわざるを得ないのだ。出版社の回答を聞いた図書館の担当 者は僕を慰めるようにこう言った。「判りました。付録は取り外して事務室に隠しておき ます。」
 既に有料のイーブックビジネスが始まっている。一方でアメリカのブリタニカのように 内容は無料で利用できるが広告掲載で収支を合わせるところもあり、デジタル化された 商品の取り扱いについてキチンとした方向が示されなければならない。特に図書館が資料 提供する場合のコンセンサスが重要だ。図書館をショールームとみるか、大口の利用者と みるかでも見方は極端に分かれる。当然無料か有料かの分かれ目にもなってくる。
 いずれにしろ態度をはっきりさせることが大事であり、情報基地としての「図書館」が 消極的対応にならない納得度のある方向を、大至急示して欲しい。