Vol.27


JEPAキーパーソンズ・メッセージ!

(株)三省堂 電子出版部 部付部長(当時)
山田 蕃

●iモードの辞書データ●

今年に入って、当社の辞書データをネット上で提供する経験をしたなかで、NTT DoCoMo殿のiモードへ提供して感じていることを1〜2ご紹介しましょう。 iモードについてはNTT DoCoMoさんが相当の規模の宣伝をされ、売れ行きなど についてもいろいろと記事が出たり、本が出たり雑誌で取り上げられたりしているので、 ご存じの方も多いと思います。 スタートしたのは今年の2月22日でしたので、この原稿を書いている時点で7か月強 経過しています。現在は携帯電話のiモード対応機は4機種ありますが、スタート時は 全機種は販売されておらず、価格も秋葉原などで 32,000円ほどしていました。(現在は 同じ機種が 7,000円台で買えると思います) 販売台数は、10月初旬の新聞記事では171万台(4機種合計)と書かれています。 「話すケータイから使うケータイへ」というのがNTT DoCoMoさんのキャッチ フレーズですが、提供されているサービスは、モバイルバンキング、チケット/リビング、 エンターテイメント、ニュース/情報、便利ツールなど13分野、サービス提供者数は 約100(8月現在)です。 辞書のデータはこの中で便利ツールの中にあり、 1)iモード利用者が無料で使える辞書――国語、英和、和英の3点 2)月額50円(3点合計)で使える辞書――大型国語、類語、歳時記 という構成になっています。 これらの辞書についてのアクセス状況は、どの辞書が何回引かれたか、どの言葉が何回 引かれたかなどが日毎に集計されわかるようになっています。 この点は、辞書メーカーとして大変興味のあるところで、これまでの紙の辞書は、冊子 として売れた部数しかわからず、それがどのような頻度で使われているか、どのような 言葉が引かれるのかなどは全くわかりませんでしたが、この集計の結果を今後の辞書 編集に役立てたいと思っています。 1)について意外だったのは、電子辞書は英和が最もよく使われるというこれまでの当社 の経験則に反して、国語辞書へのアクセスが一番多かったことです。国語を10とすると 英和が7、和英が6といった割合になります。 最もよく引かれる単語については、これもまったく意外な結果(9月分の集計)でした。 つまりブランク(検索語の入力欄に何も入れずに検索)での検索が最も多かったのです。 iモード機を買ったばかりのユーザーで引き方に不慣れな人が多く引いたせいと思われ ます。 2番目は「臨界」、4番目は「愛」、5番目は「あい」、11番目に「被爆」<被曝では なくて>などと続きます。 茨城県東海村の放射能漏れ事故が発生したのは9月最後の30日でしたが、9月全体の 集計で「臨界」が2番目に来ると言うことは、30日一日でいかに多く引かれたかとい うことになります。 紙幅に制限のあるコンパクトな辞書の説明が、非常時のユーザーにとって的確な説明に なったかどうか、データ提供側としては気になるところです。 2)については、やはり大型国語辞典が引かれる割合が圧倒的に多く、歳時記などは もっと使われていいと期待していたのですが、現状では使われる回数がまだまだ少なく、 もっと宣伝が必要だと感じます。携帯電話の所持率が若い年代に大きく傾いているのも その理由と考えられます。 また、日別では、月火など週のはじめがよく引かれる傾向などもわかり、いろいろと 面白い経験をしつつあります。

(99.10.4)

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ワンポイント調査報告

【日 本】

書籍・雑誌推定販売額 99年8月期 前年同月比 2.1%減 6ケ月連続の前年割れ

書籍は同2.5%減、雑誌は同1.9%減。当月返品率は書籍が同1.3ポイント減の46.9%、 雑誌は同0.1ポイント増の31.9%。全体として売上は低迷、アイテム数は増加という 現象が表面化してきた。雑誌は本誌は微増だが、不定期刊行物が相当増えている。 1月から8月までの累計販売実績は、書籍は同0.6%減、雑誌が同3.9%減、合計で 同2.6%減。 ((社)全国出版協会 出版科学研究所発行 出版月報1999年9月号)

日販 150万冊の書誌データベース検索サービス 将来は店頭在庫の検索も可能に

書籍情報サイト「本やタウン」を開設する。一部の書籍については、要旨や目次、 表紙画像なども掲載する。さらに書店とのネットワーク化を進め、年内には、出版 社や流通センターの在庫に加え、「本やタウン」に参加する書店の店頭在庫も検索 できるようにする。ユーザーは、欲しい本がどの書店にあるのか確認し、オンライ ンで注文できる。 来春には、注文した書籍を最寄りの書店で受け取れるよう、対応する書店を全国に 拡大する。 http://www.honya-town.co.jp/ (99.9.16 Internet Watch)

書協など出版団体や出版社 流通改善を狙い任意団体設立

団体名は「出版サプライチェーンマネジメントコンソーシアム」、再版制度の見直し が予想される2001年3月を目標に、出版社、取次、書店などが共有して活用できる 書籍データベースを構築する。 (99.9.26 日本経済新聞)

東京都書店商業組合青年部 取次抜きで新物流システム構築へ

設立するのは「TS流通協同組合」。行う流通事業の名称は「e-bos(ブックス・ オーダーズ・デリバリー・システム)」(イー・ボス)。参加書店はネットで 協同組合が持つサーバーから書協の書誌データベース「Books」や出版VANを経由 して検索、発注などを行う。 http://www.hon-ya.com (99.9.23 新文化)

電子書籍コンソーシアム オンデマンドによる販売実験 5,000点を用意 11月から

店頭向けの専用端末「メディアスタンド」を全国の書店、コンビニエンスストアなど 19カ所に設置。利用者は、購入した電子書籍をClik!ディスクに記録し、専用ビュー ワー「電子書籍リーダー」で閲覧できる。インターネットを通じたパソコン向けの オンライン販売も行ない、専用ソフト「PCビューワ」で閲覧する。実験にあたって は、電子書籍リーダー向けに500名、PCビューワ向けに1,000名のモニター読者を募集、 いずれも毎週1冊程度の電子書籍を自費で購入することが条件となる。参加者には 電子書籍リーダーまたはPCビューワが無償貸与される。 http://www.ebj.gr.jp/ (99.9.17 Internet Watch)

トーハン、日販 中小規模書店の雑誌販売支援に本腰 雑誌低迷に新提案

トーハンは全国2000店で「雑誌店サポートシステム」を展開、アイテム、配本数の 見直しなどを行っていく。日販は1400店に「雑誌売場総点検」を実施、改善方法など を提案、売場の活性化を図る。 (99.9.9 新文化)

書籍・雑誌実販売額 98年度 CVS、生協ルートのみ前年比増

CVSルートは前年度比2.1%増、生協ルートは同3.9%増、書店は同3.8%減。この 5年間で、書店ルートは構成比で3.5ポイント、販売額で約470億円減少しているの に対し、CVSルートは同3.6ポイント、約524億円を増加させている。 98年度「流通経路区分による書籍・雑誌実販売額」 (99.9.9 新文化)

書店の粗利益 小売33業種で31番目 低水準続く

書籍小売業の粗利益は22.4%、小売総平均35.9%を13.5ポイント下回った。書籍 小売業を下回ったのは、「米穀類」21.9%、「酒類」18.7%。トップは「メガネ」 で57.2%。 中小企業庁「中小企業の経営指標」平成10年度調査 ((社)全国出版協会 出版科学研究所発行 出版月報1999年9月号)

一風変わった書店「本屋さんSalon」が注目されている 60平方メートルに70万冊

独自開発の検索機2台を備えて品揃えは大型書店をしのぐ。書籍通販会社「本屋さん」 が端末書店のアンテナショップ的な意味合いで出店した。霞ヶ関ビル 3階にある。 (99.9.10 日本経済新聞)

郵政省 家電でネット接続 2003年メドに実用化 家庭にもEC普及へ

日本のネットの世帯普及率は98年度末で11%と米国と比較して低く、EC市場規模も 数十分の一。これは家庭の主婦がパソコンを使えないことが大きく影響している。 年明け早々に産学官共同の推進組織を設立、1年以内に実証実験を開始する。 (99.7.14 日刊工業新聞)

電子商取引実施の企業は37%、計画中の企業を合わせると82%に

野村総研 大企業対象の調査結果 (99.10.7 朝日新聞)

消費者がネットショップに期待するサポート「在庫の有無や出荷までの日数」が77%

次が「配達方法や配達日時が選べる」で61.5%。 富士通総研「インターネットショッピングの最新動向調査」 (99.9.16 日経産業新聞)

産業の情報化 今後5年間で86万人の雇用を創出

249万人の雇用を生むが、効率化などで163万人を削減する。 通産省・アンダーセン・コンサルティング予測 (99.9.16 日本経済新聞)

BSデジタル 参入する11社 「電子番組ガイド(EPG)」共同提供で合意

テレビで8日分、ラジオで3日分の番組表をテレビ画面上に流し、リモコン操作で 録画予約などもできるようにする。また、HDTVの呼称を「デジタルハイビジョン」 に統一することでも合意した。 (99.9.12 日本経済新聞)

パソコン出荷台数 99年度 前年比13.7%増の944万台 2年連続前年比増

シェア1位 NEC 22.8%、2位 富士通 20.1%、3位 アイ・ビー・エム 10.4% 矢野経済研究所 (99.10.2 日本経済新聞)

パッケージソフト市場規模 99年 前年比10%増の1兆3,400億円

今後も平均同7%の伸び率で、2003年には1兆7,370億円へ IDCジャパン予測 (99.10.8 日経産業新聞)

【世 界】

「Open eBook Authoring Group」 電子書籍の標準フォーマット「Open eBook」策定

名称は「Open eBook Publication Structure Specification version 1.0」。 HTMLとXMLをベースとすることで、特定のビューワーに依存しない電子書籍データ を作成できるのが特徴。PCやPDA、電子書籍リーダーなど仕様の異なる端末でも 読みやすく表示できる。Open eBookは、Microsoftによって昨年10月に提案された 構想。これに電子書籍分野のリーディングカンパニーであるNuvoMediaとSoftbook Pressが賛同し、共同でアウトラインを策定した。同時に標準化団体も結成され、 出版社など40社以上が参加している。 http://www.openebook.org/ (99.9.24 Internet Watch)

電子商取引に関する国際ビジネス会議(GBDe)第1回 同取引のルールを提言

世界的なルールは民間主導で行うべきとした。電子認証の法的整備や非関税原則の 継続なども盛り込み、日米欧各国の政府に実行を求めた。 (99.9.14 日本経済新聞)

ヨーロッパの電子商取引が拡大 米国市場を侵食

2003年には西ヨーロッパだけでも、オンライン市場は4億3,000万ドル規模に拡大。 インターネット人口も、米国とほぼ同数の1億7,000万人に増加すると予測。 米Andersen Consulting調査 http://www.ac.com/news/9.99/news_090999.html (99.9.14 Internet Watch)

ドコモなど8社 次世代サービスの規格統一に向けフォーラム設立

フォーラムの名称は「Joint Initiative toward Mobile Multimedia(JIMM)」。 ショートメッセージやファイル転送、インターネットやイントラネットへのアクセス、 音楽配信などについて規格の統一化を図り、またユーザーに固有のIDを割り当てた カードを配布し、それを利用してバンキングサービスなどを提供するための環境を 整備する。 http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/99/whatnew1008.html (99.10.12 Internet Watch)

ネットワーク製品サポート・サービス市場 2003年までに88億ドルに

IDC調査レポート 「Network Products Support Services Worldwide Market and Trends, 1996-2003」 (99.10.6 Internet Watch)

パソコン出荷台数 99年第3四半期 前年同期比24.8%増 第2四半期比7.2%増

IDC調査 (99.9.17 日経産業新聞)

【米 国】

ネット通販への消費税免税 書店に不満募る

45州で消費税が課されており、書店で本を購入する際には、州によって異なる税金 が加算される。政府がネット通販に3年間の免税期間を設けたため、店頭で買う 場合のみ課税されることになってしまった。 (99.9.30 新文化)

カリフォルニア州 電子署名に効力をもたせる法案可決 2000年1月より施行

新法案「Uniform Electronic Transactions Act」では、遺言の作成など一部の ケースを除いて、電子媒体を使用して作成・通信された文書や署名に対して法的 効力をもたせる。ネットショッピングなどの契約では、売り手と買い手の両当事者 が電子媒体による契約に同意している場合のみ有効。 http://www.leginfo.ca.gov/pub/bill/sen/sb_0801-0850/sb_820_bill_19990916_chaptered.html (99.9.21 Internet Watch) BACK

【新連載「電子出版のデスクトップ」

- - -第1回:「蝋板とスタイルス」- - -


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