JEPAキーパーソンズ・メッセージ!
NECインターチャネル(株) 企画開発グループ チーフプロデューサー
JEPA理事 伊東 進電子出版と著作権
昨年、本協会の“デジタル情報ビジネス研究委員会(略称デジビジ)”で出版物の 著作権と違法コピーが話題になり、“電子透かし(Water Mark)”が議論された。 電子出版物を作り、販売する側からすると、違法コピーは収入減となり、特に制作に 費用のかかった高額商品では打撃が大きい。違法コピーを間接的に押さえ込む手段と して、“電子透かし”が提案され、一部で実際に活用され始めている。 これは、原画にコンテンツの由来や著作権情報を僅かに混入させ、一見何も入っていな いようであるが、特別のフィルター処理を施すとこれらの情報が浮かび上がってきて、 それが原画の著作権者の証明をするもので、著作権者の許可を得ずに出回った場合 違法と証明されることになる。 この“電子透かし”技術に関して、動画と音楽についてはほぼ国際規格が確定され、 著作権者の情報を埋め込むハードやソフトが出来つつある。しかし、静止画に関しては 未だ決定打が無く、目下検討が続行されている。 著作権を主張する所以は、乱暴な言い方をすれば、適切な対価を主張するお金の面 と、著作者としてのオリジナリティ主張の面とになろう。 お金の面は、適切な対価が関係者に戻る仕組みがあれば、コピーは自由と言っても良く なる。例えば、百科事典のブリタニカは内容をホームページで公開し、そこで同時に 見せる広告で収入を得ることにした。これでどれ位の収入になるのか知らないが、 大変興味のある方法である。 また、オリジナリティの面は、常に出典引用を義務付けることにすれば、OKとなる。 学術文献では、必ず先駆者の仕事を引用することが要請され、レフェリーに引用が 適切でないと内容が如何に独創性に満ちていても、採択を拒絶されることが多い。 但し、レフェリーも関連分野の全ての文献に目を通し内容を覚えているとは限らない ので、採択された論文が後で問題になることもある。最近では高温超伝導でノーベル賞 を貰った人達の論文に、先駆者の一人として同じ材料で金属的な伝導を示すとして報告 した日本の研究者の論文が引用されていなかったとして問題になった。 “電子透かし”は画像情報に適しており、テキスト情報には向かないので、テキスト 情報の違法コピーには、似ているかどうかと言う曖昧な判断基準を用いることになる。 仮に電子出版物がテキスト情報より、画像や音声情報に価値があったとしよう。 電子出版物を集めた国会図書館関西分室では、ネットワークによるアクセスも当然 受け付けられるだろうから、違法コピーが問題になると思われる。 出版者には納品義務が課せられると聞いているが、それならば是非ネットワークに 乗せる段階で“電子透かし”を入れてもらいたい。そして違法コピーを摘発すると 共に、コンテンツの内容とアクセス回数に応じて料金を徴収し、その大部分を著作権者 に戻してもらいたい。そうすれば皆喜んで納品するのではないか? そのことによって、数が出なくても貴重な内容の著作物も出版されよう。国会図書館の ホームページに有料の広告を載せても良い。 但し、オリジナリティの面を保証するため、データを引き出した人は勝手に使っても 良いが必ず出典を明記する義務を負うことにする。もし、出典明記が無ければ法外な 罰金が課せられるようにし、罰金の一部が著作権者に戻るようにすれば、皆ハッピーに なるのではないか?これは言わば、国会図書館が国立電子出版物販売店に変身すること である。 これは新しいミレニアムを迎えるのに、y2kのために会社で年越し徹夜した私の 初夢ならぬ妄想。ご消去下さい。![]()
ワンポイント調査報告
特集!
「本が買える日本語サイト」Ver.2◇◇ 「デジタル書籍販売サイト」 ◇◇
11月からオンデマンドによる販売実験、5,000点を用意した。
電子書籍コンソーシアム
「エキスパンドブック」、「T-Time」を扱っているボイジャーのサイト。
「VOYAGER」
エキスパンドブックやPDF形式などの電子本を扱うネットショップ。 ダウンロード販売のほか、CD-ROM形式の販売も行なっている。
ディーボ「サイバー・ブック・センター」
名作のほか、マンガ、アイドル写真集など幅広い分野の作品を扱う。 形式は、テキスト、PDF、エキスパンドブックの3種類。
フジオンラインシステム「電子書店パピレス」
国内外の名作古典文学をエキスパンドブック形式で扱っている。 「サンプル本」コーナーでは、2作品を無料でダウンロードできる。
グーテンベルク21「デジタル書店グーテンベルク21」
独自のビューアーソフト「Book Jacket」は無償でダウンロードできる。
凸版印刷「コンテンツパラダイス」
514作品を1冊500円〜800円で販売。ダウンロード時間は1〜2分。
光文社「光文社電子書店」
著作権の切れた作品などを、テキスト、HTML、エキスパンドブックの3形式で 掲載している。約700作品を扱う。
「青空文庫」
青空文庫のデータをIBMの「ワークパッド」向けに変換して掲載している。
「青空文庫パーム本の部屋」
会員向けに書店では販売されていない短編やコラムなどを中心に合計約90作品で スタート、料金は1作品30円から数百円程度。
ニフティ「ほん・まるしぇ」
パソコン関連書籍をPDF形式で販売している。
アスキー「digital ascii」
◇◇ 「オンデマンド出版サイト」 ◇◇
絶版本を電子化し1冊の注文から印刷・配送する。 配達先も書店か自宅かを選択できる。送料は380円。
日本出版販売「ブッキング」
季刊誌「本とコンピュータ」編集部と共同で11月から実証実験。 書籍の注文を1冊単位で受け、印刷・製本後、1週間程度で配送する。
大日本印刷「HONCO on demand」
品切れ、絶版本などでニーズがあるもの1万点を用意。1冊から制作し、 多岐にわたる流通ルートで読者に届ける。
トーハンと凸版印刷「デジタル・パブリッシング・サービス」(web準備中)
◇◇ 「漫画配信サイト」 ◇◇
500作品が対象で160円から210円、2000年末には10,000種類に拡充する。
インディビジオ「フランケン」
マンガジャパンは、ちばてつや氏ら約80人の人気漫画家で組織する任意団体。 ホームページ上で彼らの作品紹介やキャラクター商品の通信販売を行う。
松下電器産業とマンガジャパン「まんじゃぱ」
連載中の11タイトルの漫画をネット販売。 1話50〜100円程度で有効期限付きの「閲覧権」を販売する。
富士ゼロックス「まんがの国」
絶版コミックを中心に約5000点の在庫一覧と毎週約200点の新着情報を公開している。 新着情報をメールマガジンで届ける。
「3軒茶屋の2階のマンガ屋」
松本零士氏の新作漫画をネットで無料配信。 毎月20ページ程度を書き下ろし、月に2回程度に分けて連載予定。
「Leiji-Matsumoto」
【日 本】
書籍は同6.5%減、雑誌は同6.1%減。雑誌は月刊誌が7.0%減、週刊誌が3.4%減。 当月返品率は書籍が同0.3ポイント増の43.9%、雑誌は同1.3ポイント増の31.1%。 1月から11月までの累計販売実績は、書籍が同1.7%減、雑誌が同4.3%減、合計で 同3.3%減。 ((社)全国出版協会 出版科学研究所発行 出版月報1999年12月号)
書籍・雑誌推定販売額 99年11月期 前年同月比 6.3%減
定期雑誌の高返品率に密に関連し、発行すれば売上高になる出版界の甘えの構造の 中で助長されている。 (99.12.16 新文化)
ムック 99年累計点数 前年比800点増 6,700点に
任意団体「電子文庫出版社会」を結成、具体的な内容を詰めていく。 (99.12.16 日経産業新聞)
角川書店など出版社8社 電子文庫をネット上で販売 来春開始予定
名称は「デジタルアニメーション協会」(仮称)。出版社が漫画をホームページに 掲載しており、1日のファイルの読み出し数は数十万件になるという。 (2000.1.10 朝日新聞)
漫画・アニメの電子化と著作権保護目指し 松本零士ら漫画家8人が協会設立へ
独自の書籍データベースを導入、検索と同じ画面で発注もできるようにしたほか、 iモードを使って申し込めるようにしたのが奏功した。 (99.12.14 日経流通新聞)
ヤマト運輸の「ブックサービス」 ネット受注急増 11月43,474冊、前月比55%増
(99.12.16 新文化)
栗田出版販売の「本屋さん直行便」 加盟書店240店鋪超す
順調な滑り出し当初目標の200店鋪を早くもクリアした。利用者が購入予定の新刊書などの一覧表をネット上に作成・保存できる仮想本棚 機能を備え、購入しやすくした。 → http://www.netdirect.co.jp/ (2000.1.1 日本経済新聞)
旭屋書店 ネット通販進出 「旭屋書店ネットダイレクト」 120万点の書籍情報
(99.12.19 日本経済新聞)
角川書店 書店注文をネットでも受け付ける
実際の売れ行きと誤差のない受発注の仕組みを書店と共同で構築する。自社の商品に限らず三洋堂書店で販売されている全ての書籍の単品別売上データが 見られる。すでに82社が加入。 (99.12.9 新文化)
三洋堂書店 販売データを出版社にネットで無料公開する「SPN2」サービス開始
商品陳列方法など新しい手法を導入し、売り上げアップにつながるか検証する。 (99.12.23 新文化)
トーハン 直営のアンテナ書店の運営を開始 中小書店支援のノウハウを蓄積する
浮世絵、風俗絵巻など23,000枚分の画像情報も公開予定。雑誌記事約360万件分の 見出しのデータベース化も2002年を目標に作業を進める。 (2000.1.5 朝日新聞)
国立国会図書館 和洋200万冊 ネットで無料検索可能に 今春から
サービス名称は「ネットで百科@Home」、パッケージ商品は定価で約6万円。 → http://ds.hbi.ne.jp/netencyhome/ (99.12.11 日本経済新聞)
日立デジタル平凡社 電子百科事典をネットで時間貸し 1回100円で6時間まで
読売新聞が採用し、2000年から記事を縦書きで配信する。 → http://www.voyager.co.jp/news/991222/release_dnpplg.html (99.12.24 Internet Watch)
大日本印刷とボイジャー WWWブラウザー用「たて書きプラグイン」を開発
→ http://www.yomiuri.co.jp/stream/ (99.12.24 Internet Watch)
読売新聞 音声で24時間ニュース「読売ニュースライブ!」をストリーム配信
小学館の「日本大百科全書」全26巻をCD1枚に収録。 (99.12.28 日経産業新聞)
ソニー カラー画面の電子書籍プレーヤー発売「データディスクマン DD-S1000」
「情報家電インターネット推進協議会」を発足、2003年をめどにキーボードなしで 操作可能な機器を開発する。 (2000.1.6 日本経済新聞)
郵政省 ソニー、NTTドコモなど14社 高速ネット接続情報家電開発へ
通産省・アンダーセンコンサルティング予測 (99.12.17 日経産業新聞)
EC市場 2003年までに98年の50倍 3兆1,600億円へ
99年春時点とほぼ変わらず、99年中旬で黒字が出ているECショップは3割程度。 富士通総研「インターネットショッピング調査報告」 (2000.1.7 日経産業新聞)
ECショップの売上高 99年秋 1店舗当たり月平均70万9,700円
無料サービスが一般的だと思われている中で、半数近くが有料コンテンツの購入を 希望しているのは、興味深い。凸版印刷の「Bitway」有料コンテンツに関する調査 http://www.toppan.co.jp/aboutus/release/article311.html (99.12.15 Internet Watch)
インターネットユーザーの45% 「有料でも情報を購入したい」
当初予測800万台を900万台に上方修正したが、さらに強気の姿勢。 日本電子工業振興協会予測 (99.12.25 日本経済新聞)
パソコン出荷台数 99年度 1,000万台突破
【世 界】
98年は5億1,200万ドル、年平均成長率34%で拡大する。 米IDC予測 (99.12.15 Internet Watch)
世界のセキュリティ市場 2003年には22億4,000万ドルに拡大
2004年には欧州の人々の内3分の1にあたる、21億900万人以上が携帯電話を使って インターネット上のコンテンツにアクセスするようになる。 Forrester Research予測 → http://www.forrester.com/ER/Press/Release/0.html http://www.forrester.com/ER/Press/Release/1769.html http://www.forrester.com/ER/Press/Release/195.html http://www.forrester.com/ER/Press/Release/FF.html (99.12.20 Internet Watch)
欧州ではモバイルインターネットが普及の兆し
【米 国】
98年は6,710億ドル、企業間取引全体の7%、年率33%のペースで拡大する。 ボストン・コンサルティング・グループ予測 (99.12.27 日本経済新聞)
企業間電子商取引 2003年 2兆8,000億ドル 企業間取引全体の約四分の一に
ただし、赤字幅は縮小せず。 (2000.1.7 日経産業新聞)
アマゾン 99年10〜12月期売上高 前年同期比2.5倍の6億5,000万ドル
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【連載】「電子出版のデスクトップ」
- - -第4回:「ページという仕組み(2)」- - -