Vol.39


JEPAキーパーソンズ・メッセージ!

(株)アスキー 図鑑プロジェクト編集長
JEPA理事・デジタル情報ビジネス研究委員会副委員長
松本 剛

JEPAにおける私のアイデンティティは、好むと好まざるとに関わらず、「マルチ メディア図鑑の企画・制作者」と自覚し、この予定調和(?)にしたがって、まずは、 図鑑の話から、筆ならぬキーボードを取らせていただきます。 1995年の6月、マルチメディア図鑑の第1作目である『マルチメディア昆虫図鑑』が 発売されました。今から5年以上も前です。いや、ずいぶん昔ですねえ。みなさんご存じ のように、あのころは、「CD-ROMコンテンツの時代がやってきた」というわけで、パソ コンメーカーもソフト会社も出版社も、先を争って新製品を作りました。ソフトショッ プや大きな書店にもCD-ROMコンテンツのコーナーが作られました。CD-ROMドライブ搭載 の一体型パソコンが各社からいっせいに発売された時期です。この図鑑は初版5000部で したが、発売後3日も経たないうちに3000部の増刷がかかり、その後も結構売れました。 現在、版を重ねて累計部数は数万というところです(正確な数字は内緒です)。この 数字はCD-ROMコンテンツとしては大健闘らしいのですが、プレステのゲームと比較した ら問題になりません。CD-ROMコンテンツは苦戦し各社で赤字と在庫が残ったようです。 一般的にCD-ROMコンテンツは制作者の意気込みとは裏腹に意外に売れなかった。 メディアがCD-ROMに変わったことで、インタフェースの面白さは演出できますが、 本質的なコンテンツの部分はCD-ROMになったからといってさほど変わりません。 メディアの新しさによるブームが沈静化してくると、実売数は「同様の内容の書籍の 販売数にパソコン稼働率を乗じた数」へと収束します。販売数を同類の本以上に増やす のはなかなか難しい。本当のところは「意外に売れた」のかもしれません。結局生き 残ったのは、膨大なデータ量が収納できるというCD-ROMメディアの特長を生かした百科 事典や図鑑だけ。とはいうものの、膨大と思われたデータ容量も、インターネット という無尽蔵のハードディスクに比べたら、あまりにもささやかなものです。インター ネットのコンテンツが拡充し「交通整理」が進んだとき、今のCD-ROMやDVD-ROMの百科 や図鑑は、いずれ存在理由がなくなるのでしょう。 さて、個人や団体のホームページ(以下HP)がどんどん増えてきました。個人でも玄人 跣の目を見張るようなページがあります。HPには従来のメディアにない大きな特長が あります。いくつか挙げてみましょう。「高経済性」、「更新自在」、「自然蓄積」、 「リアルタイム」、「双方向性」。 「高経済性」というのは、特に情報の送り手にとってという意味です。だれでも簡単に 情報発信ができるということです。これまで『出版=publication』は、少数のマス メディアが多数の個人に向かって一方的に情報を伝達するための特別な仕組みで、情報 の送り手は少数の限られた人だけでした。ところが、インターネットを使えば、誰でも いつでも不特定の人々に向かって情報を送ることができます。 先日、夏休みでオーストラリアのグリーン島という離島(有名な観光地です)に行って きました。ホテルの一角に、2ドル(オーストラリアドルで約140円)で15分間使える インターネット端末がありました。試しに私自身のHPのアドレスを入力したところ、 画面にHPが現れました。日本語の文字も正しく表示されていました。日本から6000kmも 離れた南半球の周囲2kmの離島で私の発進した情報をキャッチできたのです。お恥ずかし いことですが、当たり前と思いながらも、驚いてしまいました。 いよいよ、本物の電子出版の時代が始まりました。「出版」という言葉の定義さえも 変わってしまう時代がやってきたようです。 BACK

今月の調査報告

【日 本】

書籍・雑誌推定販売額 8月期 前年同月比 0.8%減の微減へ

書籍は同1.1%減、雑誌は同0.6%減。雑誌は月刊誌が同0.1%増と5ヶ月ぶりに 前年同月を上回った。週刊誌は同2.9%減。当月返品率は書籍が同0.6ポイント増 の47.5%、雑誌は同2.0ポイント減の29.9%。1月〜8月の累計販売伸長率は、 書籍雑誌合計で同3.6%減。 ((社)全国出版協会 出版科学研究所発行 出版月報2000年9月号)

東芝と米マイクロソフト 電子書籍を共同開発 10月から企業向けに出荷

グラビア印刷並みに表示するための専用液晶装置を商品化、日本で販売されるのは 2001年以降。縦型のペーパーバックサイズで厚さ5.7ミリ、価格は10万円。 (2000.9.28 読売新聞)

小学館と富士ゼロックス 雑誌をネットで受注しオンデマンド出版

小学館が過去に出版した教育雑誌の内容を50タイトルに再構成し、注文を受けた タイトルを配送する。今後は教育関連以外の雑誌にも拡大予定。 本体価格は1冊1,000円から2,800円、送料は500円。 → http://www.bookpark.ne.jp/shogakukan/ (2000.10.2 日本経済新聞)

吉本興業本屋さん オンデマンド出版事業を開始 12月から

主に新進作家の小説や研究者の専門分野の著作を出版する。消費者は本屋さんの ホームページ上で著作の冒頭部を読み、気に入ればネットか本屋さん提携の書店 を経由し注文する。午前中に注文すると同社の東京物流センターの設備で1冊2分 程度で印刷・製本し午後には仕上がる。 (2000.9.19 日本経済新聞)

凸版印刷 オンデマンド出版サイトを開設 まず実用書など約180タイトルから

約600タイトルを扱っている同社の電子出版サイト「Bitway-books」上にオン デマンド出版サイトを追加、電子出版とオンデマンド出版 双方のニーズにこたえ られる体制を整える。 → http://books.bitway.ne.jp/ (2000.10.5 日経産業新聞)

日販と楽天 書籍のネット販売で提携 10月に「楽天ブックス」設立

12月をめどに楽天市場に書籍直販専門コーナーを開設する。 (2000.9.26 日本経済新聞)

JR西日本 「えきープ」開設 近畿圏内185駅の売店、コンビニで書籍を受け取る

100万種類の書籍を登録し、注文したい本と受け取る駅を選択すると受取予定日が 即座に表示される。 → http://www.goekeep.com/ (2000.9.20 日経産業新聞)

明屋書店 注文本の到着を携帯電話の電子メールで知らせる 来年4月から

これまで顧客の自宅に電話などで伝えていたが、行き違いから苦情につながること もあった。併せて自社ブランドのクレジットカードで購入した顧客には書籍を 実質的に値引きする商品券を贈る。 (2000.9.14 日経流通新聞)

リクルート 複数のネット書店を見比べて注文できるサービス開始

ISIZE BOOK」上で、まず本屋さんなど3社の情報を掲載する。 (2000.10.12 日本経済新聞)

ストック・リサーチ ネット書店を格付け

「本の入りやすさ」1位はブックサービス。八重洲ブックセンターなど24社の 取扱商品など各サイトの情報も一覧で盛り込んだ。 → http://www.stockresearch.co.jp/ (2000.9.14 新文化)

99年のルート別出版物販売額 CVSルート 79年の調査開始以来初のマイナスに

99年は前年比9.0%減の5,071億8,300万円。 ニッテン調査「1999年出版物販売額の実態とその分析」 (2000.9.7 新文化)

小学館や講談社など出版5社 取次7社に書店のコミック不正返品の是正を要請

新刊本についているはずのスリップやカバーがなく古本と思われる返品が増えて いるため、検品などの対策を強化するよう共同で申し入れた。 (2000.9.25 日本経済新聞)

ムック発行点数 6月期 過去最高の783点 4月以降はコンピュータ関連が増加

2000年累計は89年の調査開始以降12年連続増加はほぼ間違いない。一方、 販売金額は近年横ばいで推移しており、返品率は年を追うごとに高まっている。 日本出版販売、出版科学研究所調査 (2000.9.14 新文化)

ITサービス市場規模 2000年 前年比9.0%増の7兆6,212億円

来年以降も11.4%の高成長で2004年には約11兆7,800億円へ。  日本ガートナーグループ予測 (2000.9.28 日経産業新聞)

ネット普及率 30.5% 前年比19.1%の急増

ビデオリサーチネットコム調査 (2000.10.4 日本経済新聞)

ネット広告市場 2000年 前年比倍増の500億円 2002年は1,100億〜1,300億円に

テレビなどとのメディアミックスが進めば2004年には2,000億円の大台に乗り 市場規模でラジオ広告を抜く。 矢野経済研究所「インターネット広告市場の実態2000」 (2000.9.18 日本経済新聞)

「iモード」広告 バナー広告のクリック率は3.6%

パソコン経由での0.5%前後を大きく上回った。メール広告のクリック率も24.3% と高い数字が出た。 ディーツーコミュニケーションズ調査(7月末から5週かけて実施) (2000.9.22 日経産業新聞)

ネットゲーム市場 99年 全世界の7,500億円に対し、日本は37億5,000万円

通信料金の高さなどが障壁となった。動画の送受信機能が向上する次世代携帯 電話端末の登場により2000年は400億円以上と予測。 シード・プランニング調査 (2000.9.18 日経産業新聞)

地上波デジタル音声放送の試験放送 2002年開始

郵政省は2001年初めにも免許申請を受け付ける。免許は一地域一事業者に限って 付与する方針。 (2000.9.13 日本経済新聞)

12月から本放送開始のBSデジタル放送 潜在視聴者はすでに700万世帯

電通「BSデジタル放送・全国興味者調査」 (2000.9.19 日経産業新聞)

家電量販店のパソコン販売 8月期 前年同期比38.6%増

今年1月からの累計販売台数は昨年1年間の実績を早くも上回った。 日経マーケットアクセス調査 (2000.9.19 日経産業新聞)

【米 国】

バーンズ・アンド・ノーブル ヤフーと包括提携 アマゾンに対抗

アマゾンはAOLと提携しており、米国ネット書籍販売はヤフー・バーンズとAOL・ アマゾンの両陣営でしのぎを削ることになる。 (2000.9.20 日本経済新聞)

漢字アドレス 登録サービス最大手(NSI)が開始 月内から受け付け

登録するのは、日本語の最後に「.com」「.net」「.org」で終わるドメイン名。 中国語、韓国語も受け付ける。 (2000.10.4 日本経済新聞)

インターネット広告 今年上半期は約41億ドル 前年比倍増のペース

99年1年間の実績である46億ドルに迫る勢いとなった。今年1年間では80億ドル から100億ドルになる見込み。 Internet Advertising Bureau 調査 (2000.9.5 Internet Watch) BACK

【連載】「電子出版のデスクトップ」

- - -第13回:「憂鬱―日本語を読みやすくする(2)」- - -


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