JEPAキーパーソンズ・メッセージ!
業界を代表するJEPA理事の皆様から旬のメッセージをいただいておりましたこの
コーナーは、順番が一巡したため42号にて終了致しましたが、再開のご要望が多く
第45号から再びお届けしています。起業の時
(株)パピレス 代表取締役
JEPA理事 天谷 幹夫「あなたはそんなところに、なぜ行ったのですか」、『………』。「だいたい、 こういうところの人は権利ばかり主張して、私らがどんなに苦労しているか 知らないのです」、『………』。「あなたが、そういうことをすると困ることに なるのです。うちは絶対協力しませんからね」、『………』。 某大手出版社の部長は、私が数こと説明しただけで怒り出した。こちらがそんな つもりはなかったと釈明しても、けんもほろろに受け付けなかった。 なぜ怒られたのかよく分からず、四畳半一間の事務所に戻って、二つしかない椅子 の一つに腰掛けて考えても、むしゃくしゃするばかりである。窓際の赤茶けて古ぼけた 年代物の冷房機が、ゴオンゴオンうなっている。この雑居ビルでは、狭いところに100 もの個人事務所がひしめいていて、どの部屋にもこのうるさ型の冷房が備えてある。 ここを借りて会社の登記をしたのは、身もつく寒さの2月であったが、今はうだる ように暑い8月の終わりであった。手帳を取り出して、今までに回った出版社の数を 数えてみたら48社であった。 中には3度も4度も同じ出版社に行ったが、あれこれダメな理由をつけられて何の 進展もなかった。 紙の本を電子化してパソコン通信のホストサーバに掲載して、読者にパソコンで 読んでもらおうという構想を立てたのは、1年前の冬であった。あれからもう1年半 になるのに、1冊の許諾も貰えていない。ビジネスとしてありえないこと、誰にも 受け入れられないことを自分は考えたのであろうか、不安が頭をよぎる。ケンタッキー フライドチキンのカーネルサンダースは、事業資金を集めるのに999人の人に説明し、 999番目の人にめぐり会えやっと受け入れられたという話を思いだし何度も心に言い 聞かせた。どの出版社の協力も得られなかった場合を考えて、著作権の切れた夏目 漱石や芥川龍之介の作品をそれぞれ20冊ほど、外注先で紙の本から電子データに 変換してもらっていた。こんなことをやっているのは、日本でもきっと自分達が初めて だろうと陶酔する反面、こんなに資金を投下して、もし一人も読んでくれなかったら 自分達はおおばか者だろうと思ったりもした。 それなら著者に直接頼んでみようと決心したのが2ヶ月前であった。出版権の2次 利用を許諾する著作権団体があると聞いて麹町の近くのビルを訪れた。何度か訪れ、 構想説明を繰り返して、全面的には協力できないが、実験のためという条件付で数冊 の本を電子化する著作権許諾をようやく貰えたのが先週であった。それで出版社の 了解も取りつけなければと思い、訪れたのが先ほどの大手出版社であった。それが にべもなく断られて、また振り出しに戻ってしまった。 電子データを掲載するホストサーバは、新宿のベンチャー会社が開発したパソコン 通信の電子会議システムを流用することにしていた。電子会議とは、ホストサーバに アクセスした参加者が自分の文章を電子掲示板に書いて、お互いがメッセージを交換 するシステムである。この掲示板に、小説の内容を章ごとに分割して掲載し、順番に 読者に読んでもらおうという計画であった。本当は、電子データをダウンロードする 専用のサーバがあったら良いのだが、それを開発したら数千万円の投資になってしま う。「誰がパソコンで本を読んだりなんてしますか? 本は紙で読むものですよ」と 行く先々の出版社で言われているのに、そんな大きな投資はできない。 システムの 準備は春から進めていて、10月には電子書店を開始しようと計画していたが、肝心 の本のデータが1冊も集まっていない。 心はあせるばかりであった。 それから半月後のことであった。 「いいですよ。これは本当に著者さんのためになると思います」、『はあ……』 「今は、みなさん(著者さん)本が出せなくて、これもあれも品切れになってしまう のです」、『そうなんですか』 「すこしでも著者さんの役に立つなら、うちは別になくてもいいくらいです。 みなさんに話してみましょう」、『ありがとうございます』 中堅出版社の狭い会議室の一室であった。えくぼがくっきりとにこやかな笑いを 浮かべて答えた女性編集長の顔が女神に見えた。事務所に戻る山手線の窓に流れる 景色がこんなにもいきいきと見えたのは初めてであった。それから2週間後、6人 ほどの著者の許諾が得られ、15冊の本が電子化できることになった。編集者と著者 の絆はこんなにも強いものかと感心した。 さらに別の出版社からもシリーズ20冊 の許諾が得られ、電子書店の開始の目処がついたのはその年の11月であった。 電子書店のオープン時には、新しく加わった4人の仲間とともに、狭い事務所の片隅 で喜びの祝杯を揚げた。収益を上げるのに、その後7年以上もかかるビジネスだとも 知らずに……。![]()
今月の調査報告
【日 本】
書籍が同2.9%減、雑誌が同4.4%減。 雑誌の内訳は、月刊誌が同3.5%減。週刊誌が同7.6%減。 返品率は、書籍が同0.1ポイント減の47.4%、雑誌は同0.8ポイント増の30.7%。 1月〜8月の累計同販売金額は、書籍が同2.2%減、雑誌が同4.7%減、合計で 同3.7%減。 ((社)全国出版協会 出版科学研究所発行 出版月報2001年9月号)
書籍・雑誌推定販売額 8月期 前年同月比3.9%減
ガラス板に黒色と白色の微粒子を挟み込み、電圧をかけて文字を表示、電源を 切った後も文字は消えない。 現状では細かい文字を表示できないので、掲示板などへの応用を狙う。 (2001.9.28 日本経済新聞)
富士ゼロックス 「電子ペーパー」プロトタイプ作成 厚さは約2.5mm
出版、映像、音楽のコンテンツを一括管理し、有料販売する。 企画開発、著作権保護、代金決済などの関連業務も行う。 第一弾として総合販売サイト「AnyStyle」を開設する。 → http://www.anystyle.jp/ (2001.9.17 日本経済新聞)
大日本印刷 デジタルコンテンツの流通事業「ディープラッツ」開始 来年から
サイト名は、「ビットウェイブックス・オンデマンド」。 今まではトーハンと協力してきたが、日販系のブッキングとも協力する。 競合関係にある両系列が取り扱う作品を注文できるサイトは例がない。 (2001.9.21 日経産業新聞)
凸版印刷 オンデマンド出版サービスを800作品に拡充 取扱数は国内最大規模
新サービス名は「エキサイトコンテンツ広場(仮称)」、電話回線で利用可能。 凸版印刷のシステムを利用し、ビットウェイが提供している57社のコンテンツを エキサイト経由で購入できる。 → http://dcontents.excite.co.jp/ (2001.10.1 日経産業新聞)
エキサイト 電子書籍、カラオケなどのコンテンツ1万点を有料配信
新サービスは「赤い靴パートナー・ブックストア」、消費者は店頭の検索システム を使ってネットや店頭で発注、書店で受け取ることもできる。 初期導入費用は30万円、書籍原価の15%を書店に手数料として支払う。 (2001.9.25 日経産業新聞)
ネット上で洋古書販売をする「赤い靴」 既存書店にもDBを提供し販売を開始
専門書の市場は小さいが、輸入雑誌は日本人スポーツ選手の活躍などで売上が 見込めると判断、「BookWeb」で内容を掲載し販売する。 → http://bookweb.kinokuniya.co.jp/ (2001.9.20 日経流通新聞)
紀伊国屋書店 輸入雑誌をネット販売 現地発売日の3〜7日後に入荷
(2001.9.20 新文化)
講談社 iモードで雑誌通販 ローソンの店頭で受け取ることができる
(2001.9.20 日経産業新聞)
BOL 日本撤退 ブックワンに業務移管 ネット書店は淘汰の時代へ
「e-hon」の物流センターを、書店からの注文品を専門に扱う「ブックライナー」の 物流センター内に移転した。 (2001.9.25 日経流通新聞)
トーハン ネット通販の物流を強化 商品の納期を大幅に短縮する
取引正味は84%と90%の二本建て、客注品は佐川急便で届けるが、1荷物200円の 宅配料金は書店が負担する。 (2001.9.20 新文化)
大阪屋 新客注システム「OPAS-客注くん」を本格稼動 最短で翌日着荷
CD-ROMに収録した電子辞書のデータをネット上でそのまま利用できる。 データを加工する時間とコストを削減する。 (2001.9.26 日経産業新聞)
図書印刷 ネットによる辞書検索サービス導入を支援するシステム開発
サイト名は「フォレストネット」。 国内の紙は、メーカーから代理店、卸商、3次卸などを経て出版社などのユーザー に渡るのが一般的だが、同サイトでは製紙会社が売り手、卸商と呼ばれる2次卸が 買い手となる。 → http://www.f-n.co.jp (2001.9.24 日本経済新聞)
丸紅、日本製紙、大昭和印刷、北越製紙の4社 印刷用紙の販売サイト開設
→ Jupiter Media Metrix予測 (2001.9.27 Internet Watch)
インターネットオークション BtoCが大きく成長し、2006年には9,800億円規模に
2001年度は349万3,000世帯。 → 野村総合研究所予測 (2001.10.10 Internet Watch)
ブロードバンド導入 2006年度 全世帯の半分にあたる2,215万世帯へ
【世 界】
急成長の要因は、Webサービスや無線接続の普及、電子メールアカウントを持たない 従業員の増加。 → 米IDC予測 (2001.9.20 Internet Watch)
メールボックス数は年平均138%で増加 2005年には12億に 2000年は5億500万
→ IDC予測 (2001.9.22 Internet Watch)
情報セキュリティーサービス市場 年平均25.5%で成長
原因は無線LANとブロードバンドの活況 → inStat予測 (2001.10.3 Internet Watch)
ホームネットワーク市場 2006年 92億ドル規模へ急上昇 2001年は14億ドル
【米 国】
提携先はペンギン・プットナム、サイモン・アンド・シュースター、ランダム ハウス、ハーパーコリンズ。 利用者はダウンロードし、マイクロソフト・リーダーかアドビ・アクロバット・ eブック・リーダーを使って読む。 (2001.9.12 日経産業新聞)
ヤフー 米大手出版4社と提携 eブック販売開始 1,000冊以上を提供する
ディレクTVに電子商取引サービスの専用チャンネルは初めて。 サービスを希望する加入者は指定のソフトウェアが必要になる。 (2001.9.28 日経産業新聞)
バーンズアンドノーブル・ドット・コムとディレクTV 書籍販売の新チャンネル
米Expediaなどと提携し、予約サービスや旅行状況情報を提供する。 → http://www.amazon.com/travel (2001.9.28 Internet Watch)
Amazon.com オンライン旅行ストア「Amazon.com Travel」開設
今年1月以降、約400万回線ものダイヤルアップ回線が高額のブロードバンドに 切り替わった。 → GartnerDataquest調査 (2001.9.21 Internet Watch)
家庭において、電話回線からブロードバンドへの切り替えが進む
→ eMarketer予測 (2001.9.22 Internet Watch)
BtoC電子商取引市場 2005年 現在の4倍に成長
→ 米Interactive Advertising Bureau(IAB)調査 (2001.9.26 Internet Watch)
オンライン広告売上 2001年上半期 37億6,000万ドル 前年同期7.8%減
テロの影響もある。四半期ベースでは3期連続前年割れ。IBA調査 (2001.10.1 日本経済新聞)
オンライン広告売上 2001年7〜9月 約14億3,000万ドル 前年同期28%減