JEPAキーパーソンズ・メッセージ!
業界を代表するJEPA理事の皆様から旬のメッセージをいただいておりましたこの
コーナーは、順番が一巡したため42号にて終了致しましたが、再開のご要望が多く
第45号から再びお届けしています。インターネット雑感
三省堂 出版局デジタル情報出版部長
JEPA理事 荒井 信之1.はじめに インターネットの成長にはめざましいものがある。すでに、電話、テレビにつぐ、 第3の通信インフラの地位を確立している。しかし、一方でインターネットビジネス の危機が叫ばれ始めている。この乖離はなぜ生み出されてきているのであろうか。 これまでの拙い経験を元に、一文述べてみたい。 2.インターネットと辞書検索 三省堂では、1999年2月にiモードでの辞書検索サービスを開始した。また、同じ年 の8月には、ポータルサイト「goo」での辞書検索サービスをはじめ、2000年の7月には 「Yahoo!」でのサービスを開始した。この流れを受けて、2001年1月には、自社での 辞書検索サービス「三省堂 Web Dictionary」をスタートした。それぞれの辞書検索 サービスは、順調に推移し、アクセス数、会員数とも当初、私たちが予測したよりも 多くの支持を頂いた。しかしながら、詳細に見て行くと、それぞれのサービスの違いが 浮き彫りになる。気がついた点をいくつか列挙してみる。 1)iモードは、端末機の爆発的普及と相まって、アクセス数、会員数とも急速に 拡大をした。会員数の拡大は、端末機の普及によるところが大きいが、もう一つ は、課金の簡便性である。毎月の課金が電話料とともに行われることも大きい。 ユーザーにとっては、クレジット決済をしなくても、もしくは課金そのものを 意識しなくてもよいということは、非常に便利なことなのである。 2)「goo」の辞書検索サービスのように、無償で利用できるサービスは、人気が 高い。インターネットは、無料で利用できるという風潮が一般化し、ユーザーは、 無償で利用できるサイトを求め続けている。タダが一番ということである。 3)「三省堂 Web Dictionary」のように、個人のユーザーを対象とする有料コンテン ツについては、無償で提供するものに比べると、ハードルが高い。やはり、タダ にはかなわない。 これらを見てくると、「課金」「無償」「有料コンテンツ」というキーワードが、 インターネットを考える上で重要なポイントといえそうだ。 3.インターネットの問題点 インターネットは、大変すばらしい通信インフラではあるが、商用に利用すると、 大きな問題がでてくる。インターネットは、さまざまな人々・団体が関わり、プロも 素人も関係なく、情報を発信し、また情報を受け取るという、ある種の無秩序が支配 している世界である。このような中で、商用の「我」を通すことが、はたして成立する かどうかは、もう少し、様子を見なければならない。 さらに、商用として利用するにあたっても、次のような点が問題となる。 まず第1には、「課金」についてである。「課金」については、さまざまな試みが 行われているが、残念ながら横断的に使用できる課金システムがない。現状のクレジッ ト決済では、少額の決済が、非常にコストのかかるものとなり利用することができない。 弊社では、半年、1年の会員登録をお願いしている。「課金」については、iモードの ように、電話料金とともに引き落とされる方式がとれれば、有料コンテンツの購入が どれだけ便利になることか。「課金」の方法については、簡便なスタンダードが求め られている。その方向で動いて行かないと、インターネットビジネスは、かなり厳しい ものとなるであろう。 2番目は、「無償」の問題である。インターネットは、無償で使えるという考えが 浸透している。たしかにインターネットのそもそもの出発点から考えると、商用として 使うものとは考えられてこなかった。また、商用利用にあたっても、広告収入に依存す る形で、無償でサービスを提供することが一般化している。しかし、日本の民放のよう に、CM収入によって経営を成り立たせることは、インターネットの世界では無理である。 なぜならば、テレビ、ラジオなどと違い、インターネットは、事業者だけの世界では ないからである。さらに付け加えれば、かぎられた数のなかでの競争ではないからで ある。無数といってよいほどのサイトがあり、一つ一つのパイは、たかだかが100万 人を集めているにすぎない。広告収入で成立するという考えをそろそろ脱却する必要が あるのではないだろうか。コンテンツは有償という考え方を、どれだけ浸透させて行く ことができるかが、今後のインターネットの成否を決めるような気がしてならない。 3番目には、「有料コンテンツ」についてである。2番目と関連するが、インター ネットは、事業者だけの世界ではない。コンテンツでも、プロとはいえないが、プロ 顔負けのサイトを開いている人々もたくさんいる。書籍を移し替えただけのコンテンツ を「有料コンテンツ」ということでは、ユーザーは納得しない。「有料コンテンツ」は、 金を払ってでも使いたいもの、見たいものでなければならない。この点では、出版人は もう少し考え直す必要があるのかもしれない。そもそもインターネットは、出版とは 関係ない、理系の人たちの世界と思いすぎてきた。出版人が、書籍を作るように、イン ターネットの世界で魅力的なコンテンツを作り上げてきたら、その作品は、「有料コン テンツ」にふさわしい作品となってくる。もう少し、コンテンツ製作に力を入れる時期 に来ているのかもしれない。 4.これからのインターネットビジネス インターネットは、インフラとしてますます発展を遂げるであろう。商用ネットワーク としての価値も高まって行くものと思われる。簡便な書籍は、インターネット上だけで 発行される時代もそれほど遠くない。しかし、ビジネスとして成立させるためには、 やはりプロが作った優れた作品(コンテンツ)を提供して行くこと、もう一方は、受益 者負担の実現するための仕組みを共同して作り上げることだと考えている。出版人の 一人としては、自戒も込めて、さらに、ユーザーの立場に立ちながら優れたコンテンツ を提供して行きたいと思っている。![]()
今月の調査報告
【日 本】
書籍が同5.2%減、雑誌が同0.4%増。雑誌の内訳は、月刊誌が同1.5%増。 週刊誌が同2.5%減。返品率は、書籍が0.2ポイント増の44.1%、雑誌は 同0.5ポイント減の34.3%。1月から10月までの累計販売実績は、書籍が 2.8%減、雑誌が4.3%減、合計で3.7%減。 ((社)全国出版協会 出版科学研究所発行 出版月報2001年11月号)
書籍・雑誌推定販売額 10月期 前年同月比1.8%減
「eBook Reader」の特徴は、著作権管理が行ないやすくなったこと。 コンテンツ提供者は、書籍の販売・時間毎のレンタル提供などが可能 になった。 (2001.11.27 日経産業新聞)
新潮社 NECインターチャネルと組み、携帯電話に小説配信 利用料は毎月100円
書籍より3週間早い11月22日から半額以下の1,200円でオンライン書店 「テンデイズブック」を通じて販売する。 → http://www.10daysbook.com (2001.11.13 日経産業新聞)
ソフトバンクパブリッシング ホーキング博士の新刊を電子書籍で先行発売
電子書籍コーナー「e-Bookストア」を開設、「金持ち父さん貧乏父さん」 など約2,000点を揃えた。日本語の電子書籍や国内版CDの試聴サービスも 追加予定。 (2001.12.6 日経産業新聞)
アマゾンジャパン 洋書コンテンツを英語で電子配信 輸入CDの試聴も可能に
ネット書店による試し読みサービスの導入は日本初。利用者はパソコンに 特殊なソフトを取り込む必要がない。 (2001.11.29 日経産業新聞)
日本出版販売の「本やタウン」 期間限定で試験的に立ち読みサービス開始
「ライコスデジタルストア」を開設、利用には会員登録が必要。 → http://www.bitway.lycos.co.jp/ (2001.12.6 日経流通新聞)
ライコスジャパンと凸版印刷 電子書籍などのコンテンツ販売
サイト名は、「イージーシーク楽天ブックス」、このような試みは再販 制度などがネックになりほとんどなかった。 (2001.11.14 日経産業新聞)
ビズシークと楽天ブックス 共同で通販サイト 古本・新刊とも取り扱い
「書籍の万引きを誘発する」といった新刊書店からの批判に業界として 対応するのが目的。他にフォー・ユー、テイツーが参加した。 (2001.11.29 日経流通新聞)
ブックオフなど古書店3社 業界団体「リサイクルブックストア協議会」設立
1位は3.5星で「イーエスブックス」、「アマゾン・ドット・シーオー・ ジェーピー」、「スカイソフト」、「本屋さん」。 (2001.12.7 日経産業新聞)
ゴメス オンライン書店を運営する29サイトを採点 最高得点は5つ星
今まではコミックだけだったが、現在流通している書誌1万8,000点と 新刊の全てを扱う。ネットで注文できない書店については、今年10月 に本稼動した総合受注センターで対応する。 (2001.11.22 新文化)
講談社の注文サイト「Webまるこ」 対象商品を一般書籍など全アイテムに拡大
「ペーパー・イー・サイト」は、ほとんど取引が成立しなかった。 ネット活用体制の整備が遅れている企業が多かった。 (2001.11.22 日本経済新聞)
大手製紙2社と紙商社が出資し今年5月に開業した 紙の電子商取引 半年で撤退
総務省調査 (2001.12.12 Internet Watch)
DSL加入世帯 11月末 120万件超す 昨年12月末時点では1万件弱だった
2000年は前年比6.7%増の5兆2,777億円。 IDCジャパン予測 (2001.11.14 日経産業新聞)
ITサービス市場 2005年 7兆9,000億円に 年平均8.4%の成長
米同時テロなどの影響を加味したが、当初予測比1ポイント程度の 低下であった。 アクセンチュア予測 (2001.11.29 日経流通新聞)
B to C市場 2001年の予測を見直し 前年比105%増の1兆6,900億円に
広告市場全体では、2001年の1.3%から4.6%になる。 (携帯電話経由含まず。) 現在は市場の不況もあって停滞中だが、将来的には着実に成長する。 → ジュピターリサーチ予測 (Internet Watch 2001.11.23)
オンライン広告市場 2006年には今の4倍の3,010億円へ 2001年は790億円
【世 界】
→ Gartner Dataquest予測 (2001.12.5 Internet Watch)
ITサービス市場 2003年〜2005年に大きく回復
【米 国】
今年の予算は同8%拡大だった。経営環境の悪化を受けた。 ガートナーとサウンドビュー・テクノロジー・グループ調査 (2001.11.16 日経産業新聞)
IT投資 2001年 前年比2.5%増で大幅鈍化 2002年も1.5%増 2000年は7%増
2004年末までにCATVを上回る。 カーナーズ・インスタット・グループ予測 (2001.11.16 日経産業新聞)
DSL加入世帯数 2005年までに1.350万件 今年の3.8倍 接続料値下げがけん引
前年同期比15%増の1億1,520万人、前月比では4%増。 ニールセン・ネットレーティングス調査 (2001.11.21 日経産業新聞)
10月のネット人口 1億人台 テロで外出控えて過去最高に
5ケ月連続で同比マイナスに、テロに加え炭疽菌問題で通販を避ける 傾向も顕著になった。全米小売業協会調査 (2001.11.26 日本経済新聞)
ネット販売売上高 10月 前年同期比17.6%減の36億3,400万ドル


- - -第27回:「段組という課題」- - - 

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