Vol.54



JEPAキーパーソンズ・メッセージ!

業界を代表するJEPA理事の皆様から旬のメッセージをいただいておりましたこの
コーナーは、順番が一巡したため42号にて終了致しましたが、再開のご要望が多く
第45号から再びお届けしています。

究極はなんと言ってもモバイル

――ケイタイは当初自動車電話、本は最初からモバイル――


三洋電機(株) 研究開発本部 ハイパーメディア研究所
企画渉外担当部長
JEPA理事 佐藤 憲一


 今から30年以上も前のこと。それは、1970年に開催された大阪万国博覧会でのことである。
 ある東北の町から友人と二人で夜行列車に乗り、翌朝大阪の千里に直行した。そこには
岡本太郎作の太陽の塔が見えたことを思い出す。
 各展示ブースは僕にとっては、未来の世界に見えた。コンピュータで作曲したという電子
音楽が聞こえるブース、無線で何処へでも掛けられる電話機、そして未来の生活スタイル
をイメージする展示品等々である。そこで、21世紀の世の中とはどんなものかなと数十年
後を思い巡らしたことを覚えている。

 それからほぼ30年後の現在、IT(Information Technology)社会、ネットワーク社会とい
う言葉が氾濫する中でこの30年の間に身近なところでどんな変化があったのか。
 電気業界だけの話しだけで恐縮だが、1982年にCD(Compact Disc)が登場し高音質の音楽
の再現が可能になり、この12cmの光ディスクが記録媒体の代名詞になった。次に、1990年
には携帯できる電話が世の中に登場し現在の携帯電話の爆発的普及となった。また、PCの
世界でも同じ20年後の1990年にGUI(Graphic User Interface)が充実していたマキントッシュ
が20万円を切る価格で発売され、一般へのPC普及の引き金になった。それから5年後の
1995年には、一般へのインターネットの普及の兆し見え始め、それがが引き金となり現在
の常時接続、ブロードバンドという通信環境の整備に拍車がかかったと言える。
 この30年で道具ということでは、環境は結構変わっている。
 一方、身近な居住環境や見た目の街並み等、周辺環境はどうか。昨年夏に30年ぶりに
訪れた生まれ故郷の山村は相変わらず茅葺の屋根があり、本家の家はだたっ広い座敷と
仏間と土間が家の多くの比率を占めている。年に数回程度帰郷する実家も少年時代と
さほど変わってはおらず、ただ変わったのは子供部屋が応接に衣替えし、父の位牌が置
かれた仏壇が増え、母がひとり暮らしになったことだけである。
 この現実は、30年前に万博でイメージした21世紀のそれとはあまりにかけ離れている。
21世紀とは西暦で2001という数字に変わっただけなのか。
 そんな中でのIT社会、e-Japan構想等は、整合性があるのか。
この環境に生活する人々が、インターネット上で仮想商店のサイトを閲覧し、ネットで
買い物して電子決済をし、また電子政府の仕組みでXML形式で書かれた申請書様式で色々
な手続きをするのか。茅葺の屋根をくぐると牛がいて、その反対側の囲炉裏のある土間に
デスクトップのPCをドンと据えてその前に座りキーボードを操作している姿は現実的では
ないような気がする。
 今時、そんな居住環境が日本のどこにあるのかと言われそうだが、日本の居住環境は
それと大差は無い。決して30年前の万博で見たものとは違うのである。
 ならば、IT等はナンセンスなのか?いや、決してそうではない。
人間は飽くなき欲望即ち、より高品質、高機能を追求すべき宿命にあり、現時点でイメージ
できないものでも、それが整合するよう努力して行かなければならないのである。
 そこで将来に渡ってキーになるのがモバイルではないか。モバイルは人間が身に着ける
モノであり、周辺環境と見た目に融合する必要も無い。
炉辺であぐらをかいて濁酒を飲みながらのWebサーフィンもモバイルなら現実味を感じる。
 熟年も壮年もあと少し努力すればモバイル端末が使えるのである。運転免許の取得より
はるかに容易なITのリテラシー向上に何の努力もしない日本人であって欲しくない。
しかし、このモバイルはケイタイでは無いと確信する。すぐそこに電卓があるのになぜ
ソロバンを使う必要があるのか。
しかしながら、その電卓がWindowsでは現状どうしようもないからケイタイ即ちソロバン
なのであろう。

 ところで、突然ではあるが、今ソフトウェア無線なるものが無線通信の世界で将来技術
のトレンドとなっている。
 これは、Software Defined Radioの直訳であるが、つまり、入れ物(Hardware)が
共通で、そこにSoftwareをダウンロードすることにより機能を変えられるというもので
ある。
現在、全世界の携帯電話やPHS等の移動体通信方式はメジャーなものでも5方式程度あり、
その国の通信事業者の意志で特定の方式を採用しているため、日常自国で使用している
電話機は海外では使えないというのが実情である。更に、国内で見た場合でも、携帯3方
式とPHS方式がある中に無線LANも町の中で使えるというサービスが準備されている。
また、今後5年後及び10年後をターゲットに新たな通信方式の開発が行われており、
このままでは端末をいくつ持ち歩くことになるのかということになってしまう。そんな
馬鹿なことはするはずも無いが、しかし、環境に応じて全部使えることは悪くないはずで
ある。例えば、僕は典型的なモバイルワーカである。自宅ではADSL、会社では専用線、
単身赴任先のワンルームマンションではFWA(Fixed Wireless Access)であるが、
屋外に出た途端、PHSの32kb/sパケットと低速になり、海外出張に至ってはモバイルなど
はあるはずも無くホテルに法外な通信料金を払ってダイヤルアップという環境になる。
僕にとって、モバイルの通信環境が快適なことが一番である。都内の出先やコーヒー
ショップでは高速の無線LAN(数Mb/s)、郊外ではPHS(数十kb/s)、新幹線では高速移動
でも送受信可能なIMT2000(百数十kb/s)そして、海外ではその国の採用方式といった
ようにである。
 ソフトウェア無線が実用化されるならひとつの端末上でこれが現実のものとなる。萱葺
きの屋根が残っている街並みでも何か電波は飛んでいるだろうから。
 次第に話が脱線して来たが、更に脱線させていただく。ここで結構インパクトのある
問題が存在するのである。それは、通信料金である。現在モバイルワーカが負担できる
通信料金をぎりぎり満足できるのはPHSサービスを提供する中のたった一つの事業者に
過ぎず、携帯電話なら僕の年収を全てつぎ込んでも足りない程の通信料金になるというの
が日本の現状なのである。
 それでも、どんな課題もモバイルへの飽くなき欲望の追求により解決すると確信する。

この要求を直接聞きそれを自身の仕事に反映できないビジネスは衰退することは通信業界
の人間は皆身にしみて分かっているはずだから。

 話しは、ここまでであるが、JEPAに直結した話しが何も出ていないと言われそうである。
そこで、以下の一言二言を付記させていただき、終わりにしたい。     

 PCはデスクトップ始まりでA4ノートでぎりぎりモバイルに、携帯電話も当初は自動車
電話から出発し100gを切った段階で本当のモバイルに、また音楽は30cmLPからCDにそして
ネット端末の普及で本当のモバイルになる。
しかし、ここで、何と書籍は最初から完全なモバイルで登場していることに気づく。この
利便性が電子書籍になっても損われることが無いのか、これは重要なことである。万博か
ら30年たっても、高品質化以外には、何も変わらなかったように見える放送と同じで
あってはならないと思う。

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今月の調査報告

【日 本】

書籍・雑誌推定販売額 11月期 前年同月比1.2%増 5ケ月ぶりに前年比増

書籍が同0.1%減、雑誌が同1.9%増。雑誌の内訳は、月刊誌が同1.8%増。 週刊誌が同2.5%増。返品率は、書籍が1.2ポイント減の41.0%、雑誌は同 0.4ポイント減の30.0%。1月から11月までの累計販売実績は、書籍が2.6%減、 雑誌が3.8%減、合計で3.3%減。 ((社)全国出版協会 出版科学研究所発行 出版月報2001年12月号)

アドビ 電子書籍リーダー「eBook Reader」v2.2の正式版を公開

Windows 98/Me/NT 4.0/2000/XPで動作するフリーソフトで、同社のWebサイト から無償でダウンロードできる。デスクトップのサイズに合わせて電子書籍を 拡大・縮小表示する機能などが改善されている。  http://www.adobe.co.jp/products/ebookreader/ (2001.12.21 Internet Watch)

手塚治虫の漫画382巻をダウンロード販売 「TezukaOsamu@Book」開設

1冊あたり200円、もしくは300円と単行本よりも安い価格。配信システムは、 イーブックイニシアティブジャパンの電子書店「10daysbook」を利用している。 http://book.tezuka.jp/ (2001.12.21 Internet Watch)

インディビジオ 小学館と協力し、旧作漫画を2話70円で配信

「週刊ビッグコミックスピリッツ」で過去に掲載した6作品を、インディビジオの 電子漫画サイト「フランケン」で配信する。サービス名は「日刊デジタルスピリッツ」 他社にも作品の提供を呼びかけていく。 (2001.12.18 日経流通新聞)

コンテンツワークス 情報処理学会の学会誌から必要な論文を本にして届ける

過去40年に掲載された約1万5,000件の記事や論文の中から選択できる。 価格は一部当たり120〜500円。 「Book Park」 (2002.1.8 日経産業新聞)

コンテンツワークス ネットを使ったギフト本出版サービス開始

「グリーティングブックドットコム」を開設、第1段として村上龍と組み、 オンデマンド出版方式でギフトにする。表紙にメッセージなど印刷可能。 同社は、富士ゼロックス、講談社、小学館、マイクロソフトが共同出資して 設立した。 (2001.12.17 日本経済新聞)

ブックワン 日経BP22誌と連動した「dash!M(ダッシュエム)」開設

掲載記事に関連した書籍や書評欄で取り上げた書籍を販売する。 http://www.bk1.co.jp/s/dashm (2001.12.18 日経流通新聞)

有隣堂 企業向け大口取引先を対象に書籍でも電子商取引開始

サイト名は「有隣堂 eコマース サービス」の頭文字を採って「YES」。 同社はオフィス用品を対象にシステム構築を進めていたが、書籍も物流などに メドがたった。 (2002.1.8 日本経済新聞)

日販 アサヒ・コムと提携 物流・決済などを代行

販売面で協力している「Web本の雑誌」に続いて2サイト目の提携。 「ブック・アサヒ・コム」で書籍の購入ボタンを押すと「本やタウン」の 書籍紹介画面に移行する。 (2002.1.3 新文化)

書店出店状況 2001年 新規出店数は376店、前年比224店減で6年連続前年割れ

ピーク時の1995年から半減した。100坪以上の出店数も前年の245店から141店と 大幅に下回った。平均坪数は97.3坪と微減。 講談社調査  (2002.1.3 新文化) 

ブロードバンド加入世帯 2002年中に900万件、現在の3倍に けん引役はADSL

(2002.1.8 日本経済新聞)

個人向けEC市場 2006年度 5兆円規模へ

デジタル放送市場は、2001年度の約3,800億円から2006年度には約1.3兆円に成長。 Eコマース分野では、BtoC市場が、2001年度の9,400億円から2006年度には5.5兆円 (約5.8倍)に。WBTを主体としたeラーニング市場は、2001年度の190億円から、 2006年度には1,000億円弱まで拡大。 野村総研予測 (2001.12.19 Internet Watch)

ITサービス市場 2001年 7兆8,305億円

ガートナー調査 (2001.12.18 Internet Watch)

DVD再生機の世帯普及率 9月に22% 2005年には約50〜70%に

日本映像ソフト協会調査  (2001.12.27 日経産業新聞)

【世 界】

インターネット利用者数 2001年末時点 西ヨーロッパは米国を追い抜いた

さらに西ヨーロッパは、B2CおよびB2Bを合わせたEC市場規模でも、2001年に日本を 抜いて、米国に次ぐ2位に踊り出た。現状では、1位の米国との市場規模の差は まだ大きいものの、その差は2005年までに狭まる見通し。 (2002.1.9 Internet Watch) 米IDCの調査『Internet Commerce Market Model (ICMM) version 7.3』

Googleの2001年人気検索キーワードリスト 1位は「ノストラダムス」

次いで、「CNN」、「世界貿易センター」、「ハリー・ポッター」、「炭疽菌」、 「Windows XP」、「ウサマ・ビン・ラディン」、「audiogalaxy」、「タリバン」。 http://www.google.com/press/zeitgeist.html (2001.12.22 Internet Watch)

半導体市場 2001年 過去最悪の1,520億ドル 33%縮小

http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/20011220/gartner.htm (2001.12.21 PC Watch)

【米 国】

家庭のブロードバンド利用者 11月 過去最高の2,100万人

アクティブなインターネット利用者1億600万人のうち、ブロードバンド利用者の 割合が20%を占めた。  Nielsen//NetRatings調査 (2001.12.13 InternetWatch)

ネット広告市場 10月〜12月 過去最高だった前年同期に比べ23%減

今年1月〜3月期から4期連続の前年割れ、通期でも昨年より約10億ドル少ない 72億ドル程度に。米インターネット広告協議会調査 (2001.12.24 日本経済新聞)

ネット広告市場 2005年までに188億ドル規模 2001年の2.4倍に

成長率は2005年までは毎年15%程度にとどまり、1998年段階の100%などという 上昇率に比べれば大幅に減少したものの、堅実に成長し続ける。 GartnerG2予測 (2001.12.21 Internet Watch)

クリスマス商戦のネット利用者 前年比50%増の5,130万人 99年比は95%増

トップは、イーベイ(451万5,000人)、次いで、アマゾン(251万9,000人)、 マイポインツ(201万6,000人)、ビズレート(68万3,000人) ジュピター・メディアメトリックス調査(11/19〜12/23) (2002.1.10 日経産業新聞)

家庭用ゲーム機関連売上 2001年1月〜9月 前年同期比33%増の43億ドル

プレイステーション2の好調などがけん引。NPDファンワールド調査 (2001.12.12 日経産業新聞)

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【連載】
「電子出版のデスクトップ」


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