Vol.55



JEPAキーパーソンズ・メッセージ!

業界を代表するJEPA理事の皆様から旬のメッセージをいただいておりましたこの
コーナーは、順番が一巡したため42号にて終了致しましたが、再開のご要望が多く
第45号から再びお届けしています。

21世紀百科全書


(株)小学館 マルチメディア局プロデューサー
(株)ネットアドバンス ジャパンナレッジ事業本部本部長
JEPA理事 鈴木正則


 だいたいのことは検索エンジンで調べることができる、ということをしばしば耳にしま
す。私のPCもIEにはGoogleツールバーが常駐しています。実際よく使用しているし、
ずいぶんお世話にもなっています。しかし、このきわめてインターネット的な定番ツール
では充たされない「知の世界」をネットワーク上に構築して提供していこうというのが、
いま私が取り組んでいるテーマ「ジャパンナレッジ・ドット・コム」です。

  いわゆるインターネットの検索エンジンでもなく、ウエッブ・ディクショナリーでもな
い、「知識発見・活用サイト」と謳ってJapanKnowledge.comを公開したのは2001年
4月17日でした。小学館の「日本大百科全書」「大辞泉」「プログレッシブ英和中辞典」
「プログレッシブ和英中辞典」「データパル」に加えて、「マルチメディア・インターネ
ット事典」(デジタル・クリエイターズ・コンファレンス)、「bk1」(オンライン書
店提供の書誌データ)、「NNA:アジア経済情報」を串刺し(ワンルック)検索するこ
とを基本とし、亀井肇さんの「新語探検2001」と「インターネット・ニューワード」
がデイリー更新のコラムとして配信されるというシンプルな形でのスタートでした。構築
・運営は小学館の関係会社・ネットアドバンスで、この段階では、小学館以外から参加し
たコンテンツは、bk1とマルチメディア・インターネット事典、NNAだけで、先行し
て始まっていた三省堂「ウエッブ・ディクショナリー」を追う小学館版辞書検索サービと
受け止めた方も多かったことと思います。

  しかし、私たちが考えていることは、それまでCD-ROMなどの電子出版物で提供してきた
リファレンス・データをネットワークを介して提供しようということではありません。
「多面体としての知」をさまざまなリファレンス・データ、アーティクルを総合すること
によって、検索エンジンが提供する玉石混淆の情報ではない、確立された、信頼できる
レガシーデータをより身近に、より便利な形で提供しよう――これこそがジャパンナレッジ
の原点であり、目標です。

  一例をあげましょう。つい最近、あるコンサルタントの方から聞いた話です。仕事上の
必要から「国際協力銀行」を検索してみたところ、Googleではなんと6900件の結果が
出てくるが、そのほとんどすべては銀行サイドのホームページ、ニュースリリースによっ
て占められる。それに対してジャパンナレッジでは百科事典・データパルから「国際協力
銀行」「海外経済協力基金」「政府関係機関」「政府関係金融機関」「日本輸出入銀行」
などの項目がヒットし、それだけではなく「NNA:アジア経済情報」から「国際協力
銀行、風力発電事業を調査」「国際協力銀行、高速道路建設で融資決定」「天然ガス開発
に8億米ドル、国際協力銀行が協調融資」など14件の関係記事が検索結果に並びます。
百科事典から国際協力銀行の概要、前身である日本輸出入銀行、海外経済協力基金につい
ての情報、統合の経過など基本的な知識・情報が得られる。彼にいわせると、ここまでな
ら普通の辞書引きでも可能。CD-ROMだってできる。しかしジャパンナレッジでは、基礎
知識が得られるだけではなく、国際協力銀行が現にアジアでどんな活動を行っているのか、
こうした点までが同じシステムの中で総括的に見ていける、ここに価値がある、といって
くれました。

  私たちが考えている「知は多面体」とはまさにこの一言に集約されています。いまや書
籍版をベースとした百科事典データはあくまでも狭義の百科事典です。これを含めたリフ
ァレンスからコラム(アーティクル)、ニュース記事、書誌データなどの多種多様なレガ
シーデータ総体が個々別々にではなく、統合されたシステムのなかで有機的に結びつけら
れ、「知の多面体」を照らし出すとき、それこそが「21世紀百科全書」となるのではな
いでしょうか。

  ですから、スタート当時から私たちはジャパンナレッジに出版他社から参加していただ
く道を用意し、準備してきました。この間、作家の猪瀬直樹さん、荒俣宏さん、ジャーナ
リストの田中宇さんがそれぞれの特徴あるコラム・企画をもって参加してくれました。
そして、この原稿を書いている2月初めというのは、講談社(Encyclopedia of Japan)、
自由国民社(現代用語の基礎知識)、日経BP社(デジタル大事典)の三社の強力な
コンテンツがジャパンナレッジで利用できるようになる、まさに秒読み段階なのです。
さらに、山根一眞さんが日経新聞で長期連載している「デジタルスパイス」も過去データ
すべての電子化も完了して、スタートを待っています。平凡社の参加も決まっています。

  「日本の知」を一か所に集めた「21世紀百科全書」をネットワーク上に構築するとい
う目標に向かって、ジャパンナレッジは講談社・平凡社などの参加を得て、第二段階へと
踏み出しました。
  http://www.japanknowledge.comにぜひ一度お立ち寄りください。


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今月の調査報告

【日 本】

書籍・雑誌推定販売額 2001年 前年比3.0%減 2兆3,250億円

5年連続前年比減、内訳は、書籍が同2.6%減、雑誌は同3.3%減。 書籍は1991年以来10年ぶりの低水準に落ち込んだ。 ((社)全国出版協会 出版科学研究所発行 出版月報2002年1月号)

年始年末(12月29日〜1月3日)の書店の売上 前年同期比0.5%増

「ハリー・ポッター」が下支え。 (2002.1.15 日経流通新聞)

講談社 凸版印刷と協力し、写真週刊誌「FRIDAY」をPDAに有料配信

直近の金曜日に発売した号の記事20数本の中から8本程度を配信する。 未公開写真や有名人へのインタビュー記事なども掲載し独自性を打ち出す。 サービス名は「PDAフライデー」、月額800円。  (2002.1.29 日経産業新聞)

マガジンハウス 「anan」「Hanako」などの内容をPDAに有料配信

凸版印刷と共同で「ポケットPC」を採用したPDAに週刊誌のような感覚で配信する。 サービス名は「ちびmagnetcafe」、月額500円。  (2002.1.21 日経産業新聞)

凸版印刷 漫画誌で連載した作品を効率よく単行本に二次利用できるシステム開発

出版社から作品の原画とせりふの文字を個別に預かり、デジタルデータとして 管理する仕組み。  (2002.1.14 日本経済新聞)

NTTエックス ネット上で漫画配信開始 小学館の人気作品などを日替わりで

「goo×FRANKEN マンガ★スペシャル」を開設、1話目は無料で、続きは インディビジオが運営する「FRANKEN」から有料でダウンロードする。 アドビシステムズの「Acrobat eBook Reader」が必要。 http://e.goo.ne.jp/franken/index.html (2002.1.25 日経産業新聞)

角川書店とサイバード 携帯電話を使った電子商取引で共同事業

角川書店が出版している雑誌などに簡単なアドレスを表記、サイバードが開発した 携帯メールを使えば簡単にホームページに接続できる。物品販売の拡大に繋げる。 (2002.2.5 日本経済新聞)

ジェイブック 出版社と協力し、雑誌と連動して販促キャンペーンを展開

雑誌の特集記事などの一部をサイト上で公開、購入者にはオリジナルの特典を付ける。 http://www.jbook.co.jp (2002.1.17 日経流通新聞)

ブックライナーの「本の宅急便」 月100冊を超える注文は全て手数料無料

専用の物流センターに在庫を揃え、注文を受けた商品を3日以内に書店に配送して おり、手数料は1冊当たり50円。  (2002.1.31 日経流通新聞)

文教堂 雑誌の販売データをすべての出版社に公開 適量配本促す 3月から

同社が扱う1,300種類の雑誌の前日までの入荷数量と1日ごとの実売数量をネットを 通じて提供する。 (2002.1.24 日本経済新聞)

日経BP出版センター BONで受注開始、書店向けホームページも開設

ホームページでは、同センターが扱う書籍・雑誌などの新刊情報、売上ランキング、 在庫情報などを提供する。  http://pubcenter.nikkeibp.co.jp (2002.1.24 新文化)

栗田出版販売 自由価格本の新市場創設 休眠在庫の流通を促す 4月1日から

名称は「蔵出し新刊システム」、出版社は新刊発行後1年以上たった商品の中から 対象書籍を選定し、通常より安い卸価格をネットで公開、この価格で仕入れた書店は、 店頭価格を自由に設定し販売できる。  (2002.2.7 日経流通新聞)

日本雑誌協会 「雑誌人権ボックス(MRB)」を3月1日に設置

雑誌記事に関する人権上の問題で苦情や異義申し立てを行う人を出版社に取次ぐ 窓口とする。事務局が対象出版社ごとに振り分け、出版社が責任をもって2週間 以内に連絡・回答を行うというもの。  (2002.1.24 新文化)

日本雑誌協会 雑誌コードを5桁追加して18桁に 2004年6月から改訂

国際基準に準拠する。従来、10円単位で管理していた本体価格が1円単位で 管理できるほか、発行年も管理し易くなる。  (2002.1.25 日経産業新聞)

リクルート「ISIZE BOOK」閉鎖

提携していたネット書店6サイトの取扱高の低迷により、手数料の増加が期待でき ないため。  (2002.1.24 新文化)

凸版印刷 電子ペーパー事業を本格展開 イー・インクに追加出資

今年後半をメドに主要部材の量産体制を整える。凸版は電子インクをイー・インク から購入して前面板(電子ペーパーの画面になる部材)を生産し、同社に供給する。 (2002.2.5 日本経済新聞)

ITネットワーク対応度 世界75カ国中、日本は21位 トップは米国

米国に続いてアイスランド、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー。   ハーバード大学国際開発センター調査 (2002.2.6 Internet Watch)

移動通信市場 2010年の成長見通し 2.2兆円〜10兆円と4つのシナリオを想定

10年後の業界規模により大きく変わる。最大のシナリオは、利用者が第三世代と それ以外のサービスを使い分ける。最小のシナリオは、地方自治体などが無料通信 サービスを提供し、有料通信市場が崩壊する。 アクセンチュアと国際大学グローバル・コミュニケーション・センター予測 (2002.1.24 日本経済新聞)

デジカメ出荷台数 2001年 前年比42.7%増の1,475万台

フィルムカメラは同13.0%減の2,760万台。 日本写真機工業会 (2002.1.29 日本経済新聞)

パソコン出荷台数 2001年 前年比7.1%減の1,229万5,000台 3年ぶりの前年割れ

2002年は、同6.5%減の1,150万台と予想。メーカー別では、1位 NEC、 2位 富士通は変わらないが、ソニーが初の3位、IBMは4位に転落した。 マルチメディア総合研究所調査  (2002.1.31 日本経済新聞)

【世 界】

広告市場 2001年 前年比5.8%減 今年も1.3%減 2年連続減は91年、92年以来

主要因は米国の落ち込み、通年で増加に転じるのは2004年の見通し。 英ゼニス・メディア調査  (2002.1.15 日本経済新聞)

アジア太平洋地域のブロードバンド市場 2004年まで年平均44%で成長

  利用者数は、韓国が1,320万人で首位となり、日本が1,200万人、台湾が340万人に。 米Yankee Group予測 (2002.1.29 Internet Watch)

PC総出荷台数 2001年 1億2,806万台 前年比4.6%減 デルのみ成長

  世界、米国市場でマイナス成長となったのは 1985年以来2度目。 2002年の出荷台数は4%増と予測。 ガートナージャパン調査 http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/2002/0121/gartner.htm (2002.1.22 PC Watch)

【米 国】

アマゾン 2001年10月〜12月期 創業以来初めて四半期黒字に

初の10億ドルを突破、前年同期比15%増、欧州と日本の増収が寄与した。 (2002.1.24 日経産業新聞)

アマゾン 1回の購入額が99ドルを超えると無料配送

米国外では、日本、英国、ドイツで中古販売を開始する。 (2002.1.28 日本経済新聞)

オンライン支出 2001年は530億ドル

  comScore調査 (2002.1.18 Internet Watch)

2001年9月時点 人口の54%に当たる1億4,300万人がインターネットを利用

  新規ユーザー数は毎月200万人以上増加、5年前の15%から3倍に。 米商務省調査 (2002.2.6 Internet Watch)

固定電話離れ 米国電話会社は2006年に88億ドルの損失

  現在、家庭の1.7%が固定電話から携帯電話やブロードバンドに切り替えており、 2006年には11%に当たる500万世帯が、これらを主要な通信手段として利用する ようになる。 Forrester Research予測 (2002.1.31 Internet Watch)

【英 国】

家庭のインターネット普及率は45% 1年間で1.5倍に増加

英電気通信庁(OFTEL)調査 (2002.1.31 Internet Watch)

家庭用ゲーム市場 2001年 前年比36%増の16億ポンド 急拡大

  PS2など新機種投入が起爆剤。ゲーム関連企業の業界団体ELSPA調査 (2002.1.18 日経産業新聞)

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【連載】
「電子出版のデスクトップ」


- - -第29回:「木を見せて森を見せず」- - -


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