Vol.32


JEPAキーパーソンズ・メッセージ!

(株)紀伊國屋書店 取締役仕入流通総本部長
JEPA理事 奈尾 知章

「今昔文字鏡」をめぐって

株式会社エーアイ・ネットの社長古家時雄氏の依頼を受け、紀伊國屋書店が最初に 「今昔文字鏡」の市販版を発行したのが1997年6月のことで、Ver.1.0 はビット マップ版(24ドットビットマップ画像のみ)であった。その後エーアイ・ネット社と 文字鏡研究会の大変な尽力でトゥルータイプ版のフォント製作をすすめられ、約1年半 という驚異的なスピードで1999年1月に Ver.2.0 の「単漢字8万字TTF版」の 刊行にこぎつけた。 それから1年あまり「今昔文字鏡」は多漢字処理の切り札的存在ととして、関連の研究 者をはじめ印刷、出版、データ処理の業界に広く認知されるようになってきた。 そもそも「今昔文字鏡」は古家氏という在野の開発製作者がいなければこの世に存在し なかったもので、また古家氏の心意気に感じてボランティアで活動されている会長の 石川忠久先生をはじめとする文字鏡研究会の諸先生方のご支援がなければここまでの 発展はなくまさに国家プロジェクトに匹敵する事業といっても過言ではない。 電子出版を共通のビジネス目標としているわれわれは、「今昔文字鏡」がなければ今でも 外字処理の標準化の課題のまえに立ち尽くしていたかもしれないのだ。古い中国の諺に 「井戸の水を飲む者はその井戸を掘った人の恩を忘れてはならない」 というのがあるが、われわれは、「今昔文字鏡」開発者への敬意と感謝を忘れてはなら ないと思う。 「今昔文字鏡」の最大の特徴は一定のエヴィデンスと手続きを踏めば、未収録の漢字を 追加登録できることにある。利用者はこれでわずらわしい「外字作成」の業務から解放 されるばかりではなく、研究者のチェックのはいった漢字が使えるという安心感が得ら れるのである。 また「今昔文字鏡」のフォントはWEB上で公開されており、これからますますいろいろ な人がこれを活用することになろう。これがまさにディジタル環境での多漢字処理の共有 基盤となる所以である。そして「今昔文字鏡」は日本国内はもとよりアジアの漢字文化圏、 さらには世界中の利用者が、さまざまなシステム環境やOS環境の制約を越えて利用でき るようになることが望まれていよう。 幸い電子出版協会のXMLに準拠する電子出版交換フォーマットJepaXにおいても 外字対応で「文字鏡」を推奨いただいたのをはじめ、最近既存の個別外字セットを 「文字鏡ナンバー」でリンクし、データの共有化を図ろうとする動きが急速に広がりつつ ある。検索ソフトの販売を担当している紀伊國屋書店としても「今昔文字鏡」をさらに バックアップしていきたいと考えている。 BACK

今月の調査報告

特集
「本が買える日本語サイト」Ver.4(最終回)

◇◇ 「音声配信サイト」 ◇◇

大日本印刷と新潮社「サウンドシェルフ」

小説の朗読や落語など約150種類を月1,000円程度で試聴できる。

集英社「すばる文学カフェ」

作家による自作朗読会の中継ページ。

新潮社「作家自作を語る」

講談社「Web 現代」

話題の人へのインタビューなど視聴可能。

光文社「FDブッククラブ」

視覚障害者向けサービス。光文社電子書店の販売作品をダウンロードし、音声ブラ ウザ用データに変換しFDで郵送する。

◇◇ 「書評が読めるサイト」 ◇◇

BOOK asahi.com(朝日新聞)

Sankei-book(産経新聞)

YOMIURI BOOKSTAND(読売新聞)

「論座ネット」

朝日新聞出版局のサイトにある。97年1月〜99年11月間の主要新聞6紙と、 週刊誌、月刊誌10数誌に掲載された書評を掲載。

「読書猿」

現代文学からアマチュア科学者教則本までメールとウェブで届ける超ジャンル書評。

PHP研究所「Book chase」

一般読者の書評、各社の新刊情報も掲載しており購入も可能。

兼松コンピュータシステム「ブックレビュー」

書評を中心に書籍を検索、購入も可能。

ひつじ書房「書評ホームページ」

独断と偏見のSF&科学書評

JENS「はみはみ本のみみ」

児童文学書評

月下工房#書評系

【日 本】

書籍・雑誌推定販売額 2000年1月期 前年同月比 4.0%減

書籍は同0.4%増、雑誌は同6.9%減。雑誌は月刊誌が同7.7%減、週刊誌が同4.4%減。 当月返品率は書籍が同1.9ポイント減の40.0%、雑誌は同0.3ポイント減のの30.0%。

コミックス市場 99年 推定販売金額 前年比7.0%減の2,302憶円

推定販売部数は前年比6.6%減の4億8,423万冊 (以上(社)全国出版協会 出版科学研究所発行 出版月報2000年2月号)

大手出版社8社 電子文庫配信で共同サイト開設 サービス開始は6月から

サイト名は「電子文庫パプリ」、デジタル化した作品をテキストデータで販売するた め数分でパソコンにダウンロードできる。将来は簡易製本するサービスや書店やコン ビニなどに端末を設置する計画。 (2000.3.9 日刊工業新聞)

集英社 「ヤングジャンプ」に連動した漫画などを「iモード」で配信

利用料は月300円、内容は土日を除き毎日更新する。 ((社)全国出版協会 出版科学研究所発行 出版月報2000年2月号)

ジェイブック ネットを通じた書籍購入者に販売価格の3%分をポイント還元

次回以降の購入に利用できるため実質的な値引きになる。 (2000.2.22 日本経済新聞)

シーブック コンピュータ関連書籍約5,000点をネットで直販

都内は24時間以内、その他は離島などを除き48時間以内に宅配する。 (2000.2.28 日本経済新聞)

角川書店 モバイル端末と二次元バーコードを活用した文庫本受発注システムを 導入

スキャナーで背表紙に印刷したバーコードを読み取り、補充が必要な本を瞬 時に特定できるのが特徴。 (2000.2.11 日経産業新聞)

角川書店 ネットで書店と受発注 中小店向け「角川ウェブホットライン」開設

大手書店含め5,000店規模までに拡大予定。 (2000.2.16 日刊工業新聞)

システムYAMATO 書店向けに「インターネット取次」開設

会員出版社約40社を基盤に本を全国書店に流通する新たな試みを展開中。 (2000.2.16 新文化)

中古本書店チェーンのブック・スーパーいとう ネット漫画喫茶を展開

店舗名は「ルパン」、インターネットや電子メールを楽しめるほか高画質スキャナ ーで画像を取り込んで加工・送信することも可能。 (2000.2.24 日経流通新聞)

村上龍氏 オンデマンド・セルフパブリッシングで新刊「共生虫」を先行販売

発売は3月1日から15日までの期間限定。発行部数は1,000部で、価格は3,000円 (送料別)。富士ゼロックスのオンデマンド出版サービス「BookPark」が協力す る。http://www.kyoseichu.com/ (2000.3.2 Internet Watch)

郵政省とマイクロソフトなど民間企業12社 ネット配信に標準ルール策定へ

ハッカー対策や課金方法などの技術基準、契約の仕組み作りや利用者保護などの取 引き方法を確立する。 (2000.2.12 日本経済新聞)

不正アクセス禁止法施行

これまで野放しだった侵入自体が違法となり、警察庁などはハッカーなどの抑止効 果を期待。 (2000.2.14 Internet Watch)

ネット人口 99年12月末 前年同期比128%増の1,830万人

2002年末に2,900万人へ アクセスメディアインターナショナル調査 (2000.2.16 Internet Watch)

ネット利用人口 2000年1月 人口比約13.6%

Nielsen//NetRatings調査 http://www.netratings.co.jp/ (2000.2.25 Internet Watch)

電子認証ビジネス 2006年 約500憶円規模に 99年の16倍

通産相・日本ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン予測 (2000.2.16 日本経済新聞)

広告費 2年連続減少 インターネット広告は倍増

99年の総広告費は前年比98.8%の5兆6,996億円、インターネット広告費は前年比 211.4%の241億円。2000年のインターネット広告は約369億円と予測。 電通推計 http://www.dentsu.co.jp/DOG/news/index_0004-0215.html (2000.2.17 Internet Watch)

【世 界】

ノキアとアマゾン 携帯電話で書籍・音楽ソフトを販売

ノキアの携帯電話の利用者を対象にアマゾンの英国サイトからサービスを提供する。 ドイツなどにも拡大する方針。 (2000.2.24 日本経済新聞)

ネット人口 99年12月 2憶人弱 前年同期比44.8%増

日本のネット人口の世界シェアは9.5%。 アクセスメディアインターナショナル調査 (2000.2.21 日経産業新聞)

情報化1位 スウェーデン 米国を抜いた 日本は10位

IDCとワールド・タイムズ調査 (2000.2.18 日経産業新聞)

【米 国】

消費者向けネット販売 2000年1月 27億8,450万ドル 航空券の予約がトップ

旅行関連は全体の21%を占めた。 (2000.3.4 日本経済新聞)

ネット販売の逸失税収 99年 5憶2,500万ドル 徴収は2割止まり

フォレスター・リサーチ調査 (2000.2.27 日本経済新聞) BACK

【連載】「電子出版のデスクトップ」

- - -第6回:「縦の物を横にする(1)」- - -


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