Vol.21


JEPAキーパーソンズ・メッセージ!

(社)農山漁村文化協会 専務理事
JEPA理事・総務委員会委員長
坂本 尚

19号の「今月の調査報告」 トップ記事が出版の不況報告。出版界の近頃の挨拶 の枕詞は「売れない」。私は面白くないので「うちは前年比二桁アップ。売れてる よ」と応えている。 売れてる原因は色々あるが、一つが電子出版。 昨年「日本の食生活全集全50巻」をCD−ROMとオンライン出版「ルーラル 電子図書館」で売り出した。 「日本の食生活全集」は昭和59年開始〜平成2年完結の7年がかりで刊行した 古い全集である。ところが完結10年後の昨今、その古い全集が売れ出した。電子 版を出したからである。何と電子と一緒に「紙」の方も売れ出したのである。 販売の流れはまづ「食生活全集全50巻」定期購読者がCD−ROMの購入者に なる。次にCD−ROMを買った人にCD−ROMを見せてもらった人がCD−R OMだけを買う。やがてCD−ROMでは不足で紙の方の「全集」も買う。まこと に願ったり、適ったりの「販売連鎖」現象が起きている。何故か? この「日本の食生活全集」という全集は昭和初期の日本全域での庶民の食事の聞 き書きの集大成である。各県数ブロックにわけて、朝、昼、晩それぞれの食事と晴 れ食、行事食を春秋夏冬の四季にわけて編集してある。更に、「基本食の加工と料 理」・「季節素材の利用法」・「伝承される味覚」・「その地域の食・自然・農業」。 と全国の食事を同一パターンの章ぐみで整理して編集してある。全50巻のうち2 巻が索引巻に当てられ、索引巻は「素材篇」巻「作り方・食べ方篇」巻で構成され ている。 その全集が、全文テキストデータ化された。郷土食等食研究者には格好のデータと なった。例えばひろくは学生が卒論を書く素材としては極めて便利重宝。全国各地 で調べるべきことがCD−ROM一枚で、自由に調べられるのである。全国三百地 点、五千人からの聞きとりで一万五千種の郷土料理データが得られる。 CD−ROM1枚で、間に合うのだが、このCD−ROMを使いこむと、紙の方 の本が欲しくなるらしい。紙の方も買うのである。 CD−ROMは大学や高校の先生にとっては格好の教材になる。データを教材と して編集して紙プリントして使うにはじまって、教室にLANが張られると、「L AN対応のCD−ROM」を購入しなければならなくなる。授業を受けた学生、生 徒たちはそれぞれ自分の県の巻一冊位は持ちたくなる。「購買連鎖」はひろがって ゆく。 やがて、県のホームページの担当者がこの流れを知り、地域振興の為の「産直PR の一つとして、その県の郷土食をとりあげたくなる。この全集では、食器・食材を 含めて昭和初期のものを使って昭和初期を再現するカラー写真が豊富に蓄えられた。 全集の口絵にその一部がつかわれている。「写真」を貸してくれ、という要求はす ぐに「ホームページをつくってくれ」というところにゆきつく。食全集のオンライ ン版をやっているのだから、当然要求に応えられる。かくて「販売連鎖」は「ホー ムページ制作受託」までひろがる。 やがて、それぞれの市町村での郷土食・食文化等の「オンデマンド出版」へゆき つくことになるだろう。全集「紙」⇒CD−ROM⇒オンライン出版⇒オンデマンド 「紙」と紙媒体と電子媒体が「相互補完」「相乗効果」をあげることになる。だか ら電子媒体とともに紙媒体の売り上げもふえる。電子があれば紙はいらないという コンテンツでなく、紙も電子もというコンテンツの創造こそ、電子出版時代の新し い出版の質を形成する。 「早わかりセミナーダイジェスト」でコンテンツビジネス講座第一講「オンライン ジャーナル事始め」で電子出版は「形の革命」から「しくみの革命」へ移行しつつ あり、その例として、オンデマンド出版やオンライン書店そして電子図書館が注目 されるだろうと、津野海太郎氏は述べておられる。 「しくみの革命」が出版文化の質の改革をもたらすことになる。電子媒体の「機 能」、電子媒体による「しくみ」をどのようにつかうかが電子出版段階での出版人 にとっての企画の問題なのである。 BACK

ワンポイント調査報告

【日 本】

書籍・雑誌推定販売額 99年2月期 前年同月比 0.1%増 11ケ月ぶり同比増

書籍・雑誌推定販売額 99年2月期 前年同月比 0.1%増 11ケ月ぶり同比増 当月返品率は書籍が1.8ポイント減の36.9%、雑誌は1.0ポイント減の26.6%

一般(活字)文庫販売金額 98年 前年比0.8%増

書籍全体は6%近く落ち込んだが、漫画文庫を合計した文庫全体の推定販売金額は 同 2.5%増とプラス成長。一般文庫の返品率は同2ポイント増の41.2%、新刊点数 は同 5.7%増で5,337点。 (以上 (社)全国出版協会 出版科学研究所発行 出版月報1999年3月号)

栗田出版販売 書店向け新刊情報誌「栗田週報」を電子発注も可能にリニューアル

取引書店にてSA端末で電子発注を可能とするBフォントのISBNコードとTコードを 掲載、こうした試みは取次業界ではじめて。一般向けにはホームページ「Book- Site」を開設し、リテイルサポートシステムに連携させる。書誌検索、162社の 出版社オンラインに対応する発注システム、POS分析速報などを備える。 (新文化 99.4.1)

書店が客注品を発注してから商品が入荷するまで平均8.2日

書店の発注方法は、電話 59.7%、短冊 18.9%、FAX 8.6%、取次在庫 6%、 神田村取次利用 3.2%、AN便 3.2%で、書店の約80%は当日又は翌日に発注して いる。 発注の処理方法は、神田村取次利用が最も多く、取次在庫、AN便と続く。取次会社 に在庫がなく取り寄せる場合にかかる日数は14日以内が最も多い。 東京都書店商業組合青年部 98年1月〜3月調査(新文化 99.3.11)

ジュンク堂大阪本店 99年3月 日本最大規模でオープン 初日の入客 約20万人

1,480坪に40万アイテム、80万冊を揃え、開店2日間の売上は6,000万円を超えた。 今年は大規模出店が相次ぐ予定。 (新文化 99.3.25)

中古本店の出店が加速 新品定価の2〜5割で買える漫画単行本が主力

ブックオフコーポレーションは今後1年で70店を出店、他大手も積極出店を計画し ている。 (99.3.26 日本経済新聞)

書籍流通を効率化へ 小学館 6月から切り売り制度スタート、角川書店 文教堂と書籍オン
ライン受発注システム構築へ

(99.3.22 日本経済新聞)

日本電子ブックコミッティー「ネットワーク電子ブックフォーマット(NET EB)」 発表。出版物データを電子化し、紙の書籍や電子出版物の制作、配信などに簡単に利 用できる仕組み。XMLを採用、業界標準化を目指す。

(99.3.25 日経産業新聞)

紙・板紙全体の出荷高 99年2月 前年同期比1.8%増 14カ月ぶりプラスに

日本製紙連合会調査(99.3.22 日刊工業新聞)

法務省 企業間電子商取引に「電子認証制度」創設 2001年度スタート

相手を確認する手段として、登記所が商業登記情報を記した「電子証明書」をオン ラインで発行する。 (99.4.8 読売新聞)

民間合同で電子商取引の決済方法を全国統一へ 2000年度をメド

通産省、郵政省、関係各社は「日本インターネット決済推進協議会」を設立、 米マスターカード・インターナショナルと富士銀行などが合意した世界各国で銀行 とクレジットカード会社の双方が使える決済手法を基にする。 (99.4.6 日本経済新聞)

企業間電子商取引の市場規模 2003年 98年の7倍以上の約68兆円に

日本の企業と消費者間のEC市場は650億円から50倍の約3兆円に増える。 通産省予測(99.3.31 日刊工業新聞)

郵政省 学校インターネットを9月にも始動

対象となる全国30地域/1,050校のアクセス回線の内訳は、衛星インターネットが 387校、CATVの327校、WLL(Wireless Local Loop:加入者系無線アクセスシステム) が160校、光ファイバー100校、DSLが76校。 (99.4.7 Internet Watch)

ネット広告費 98年 推計約113億9,000万円で倍増 97年は60億4,000万円

当初予想の90億円を大きく上回った。99年も同73.8%増の198億円、このまま推移す れば2005年には1,000億市場に成長。 電通調査 → http://www.dentsu.co.jp/DHP/DOG/adex1998/index.html (99.3.17 Internet Watch)

ネット広告 普及に向け2団体が4月に発足 課題やルールづくりを検討する

電通など広告やメディア、ソフトウェア業界26社が中心に「インターネット広告 推進協議会」、(社)日本広告主協会は「Web広告研究会」を発足する。広告を 出す立場、載せる立場の双方で市場の育成を目指す。 (99.3.18 日本経済新聞)

モバイルユーザー 2001年 2,000万人に

この時点でのPHSを含む携帯電話の普及台数は6,420万台、「携帯電話+端末」方式 のモバイルコンピューティングに使われるのは全体の3割強に上るという。 モバイルコンピューティング推進コンソーシアム予測(99.3.30 Internet Watch)

98年ヒットゲームソフト 1位 バイオハザード2 (カプコン)

販売本数は189万9,000本、上位10タイトルの総販売本数は1,124万7000本、前年比 約200万本減。 (99.4.6 日経産業新聞)

【世 界】

セキュリティ市場 2002年 74億ドル規模に 98年は31億ドル 99年には42億ドル

最も需要が拡大するのはファイアーウォール市場で、40%の伸び。また、最も大きな 市場となっていると見られるのはワクチンソフト市場で、全体の40%を占める30億ド ル規模に。 IDC予測 → http://www.idc.com/Data/Internet/content/NET033099PR.htm (99.4.1 Internet Watch)

2003年までのOS市場 成長率はLinuxがトップ 商用出荷数は年率25%で増加

IDC最新の市場予測レポート『Linux Operating System Market Overview』 (99.4.2 PC Watch)

【米 国】

中小書店がネット販売で団結 客離れに歯止めをかける アマゾンなど大手に対抗

中小書店3,000店以上が加盟する米国書籍販売協会(ABA)は、今夏「ブックセンス・ コム」を立ち上げ、各書店のサイトに入れるようにする。店員の書籍に関する豊富 な知識など大手書店との違いをアピールしながら160万冊のデータベースの検索機能 を持たせる。月額175〜450ドルの維持費を徴収する予定。 (99.3.18 日経産業新聞)

アマゾン・コム 個人向けオークションサービスをスタート

サービスの最大の特徴は、オークションに出される品物が、他の書籍やCD、ビデオ などと一緒に陳列されるところ。例えば、現在オークションに出されている映画 「カサブランカ」の中で使われた椅子は、カサブランカの原作本やサントラCD、 DVD、ビデオなどの販売ページ上でも表示される仕組みになっている。 → http://www.amazon.com/ (99.4.1 Internet Watch)

インターネットユーザー 今後5年間でまだまだ増える

99年末までに米国の1/3の世帯が、2003年の終わり頃には2/3の世帯がネットに繋がる。 その間、米国でインターネット接続に使われる費用は全体で560億ドル。 Yankee Group予測(99.3.25 Internet Watch)

ネット広告の普及を推進する団体「FAST」  広告形態や測定方法標準化へ指針

提案した広告形態は「バナー」のほか、画面が変わる時に現れる「ポップアップ」 など5種類。画面にとどまる時間は10〜20秒、ダウンロードにかかる時間は5〜6 秒が望ましいとした。閲覧件数はユーザー数、サイトを開いた回数、広告をクリッ クした回数のいずれに基づいた数字かを明示するよう求めた。 (99.3.17 日経産業新聞)

オンラインバンキングとオンライントレード 今年が離陸の年

今後3ヵ月のうちにオンラインバンキングを利用するだろうと見られる米国人は 810万人で、すでにこれを利用している510万人から42%の増加。また、オンライン トレードについても、300万人から70%増の510万人に拡大する見通し。 Ziff-Davis社調査(99.3.17 Internet Watch)

オンライン・クレジット市場 2003年までに急拡大 貸出残高は8,900万ドルに

オンライン抵当証券は資金貸出市場全体の約10%を占めるとみられている。一方、 5年後には、クレジットカードの6枚に1枚がインターネットを通じて発行される という。 フォレスター・リサーチ発表(99.3.31 Internet Watch)

600ドル未満の机上型パソコンの店頭販売 99年2月 前年同期比 7.6倍

出荷額は同16%減で収益圧迫の構図が鮮明。同パソコンの店頭市場シェアは19.9%と 1月の15.7%から拡大。1,500ドル以上のパソコンは5%足らず。 PCデータ調査(99.3.24 日経産業新聞) BACK

【連載】「キーワード設定の現場から」

- - -第12回:「読みの検索は四苦八苦」第13回:「寿限夢寿限夢の長助さん」- - -


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