Vol.33


JEPAキーパーソンズ・メッセージ!

日本電気(株) 技術戦略室 技術戦略統括部長(当時)
花沢 順

出版界には疎いメーカの人間から的はずれの謗りを覚悟でこれからの書籍と雑誌に 期待して一言。  随分昔のことになってしまったがまだ現役の技術者だったころ、技術の一般的な勉強 は書籍で、先端技術の知識は学会雑誌の論文で得ていたように思う。論文を探すのも 仕事のうちで、必要な資料があると横文字の学会誌をコピーして辞書を片手に読んだ ものである。今では一般的な勉強資料には技術雑誌が豊富で重宝している。特に高度に 分化した上に進歩の激しい技術分野では広くその概要を知る必要があり大変役に立って いる。複数のその道の専門ライターが最近のテーマをよく調査して要領よくまとめて くれているので専門雑誌といっても読みやすい。  メーカで働く者から見たときこのような専門雑誌は自分の勉強になるが、同時に顧客 も同じ勉強をしているのでたまに困ったことが起きる。メーカのSEが顧客と商談する とき、顧客もよく勉強されているのでSEもたじたじの場面があるそうだ。技術が 専門家だけのものでなく豊富な出版物を介して普遍化してきたと言えるだろう。  技術範囲が広範に高度になった上に、変化・進歩が激しいのでちょっと油断すると 新しい流れに乗り遅れることになる。ドッグイヤーと言われるように昔10年かけて 実現したシステムが今では数年で実現してしまう。たとえばインターネットへの高速で 安価なアクセスシステムと期待されるADSLはFTTHを最終目標とするNTTの 事業計画には乗っておらず、すでに実用化が始まっている欧米に遅れていた。ところが 昨年1月にNTTが導入を決定して秋には実験サービス開始、その半年後には複数の 通信事業者が安価に事業化するという。普及に時間のかかったISDNに比べると 接続距離に不安を残すとは言え事業化までのスピードに驚かされる。このような変化は どの分野でも起き得るので、出版界も編集方法とスピードに改革が進んでいくのだろうか。  迅速にタイムリーに専門情報を提供する技術雑誌は種類も増えており1つの出版 ジャンルを作りつつあるが、書籍ではパソコン関連を除いてそのような新しい動きは 見あたらないようである。街の書店では雑誌より書籍の棚が多いが、変化の激しい 時代に合ったコンセプトとタイムリーな内容から雑誌に軍配が上がりそうだ。PR 記事で厚くなった雑誌を保存する場所はなく捨ててしまうが、買った書籍は大事に 保存している昔人間の私にとって書籍の反撃に期待したい。書籍の新境地開拓に何か 策はないものか。  メーカでは今物作りに意識改革を浸透させようと努力している。よく言われるが 「作りたい製品」より「欲しい製品」への意識改革である。ユーザ重視の製品開発 という発想であるが、良い物は売れるはずと考えるシーズ先行の技術者にはなかなか 理解しにくい。Solutionの提供とPRしているのも意識改革の表明であり、技術を 誇示していた以前に比べると時代の要求は変ってきたといえる。  同じことが書籍にも言えないだろうか。「出したい本」より「読みたい本」への 発想転換である。たとえば海外旅行の場合、現地情報を実際の旅行者の見聞を交えて 構成する本があるが、これから出かけようとする人には願ってもない「読みたい情報」 である。時代の求めに応じた新しい展開はどの分野でも必要であろう。とは言っても TVのバラエティ番組を活字に変えたような本だけはご免こうむりたいが。 BACK

今月の調査報告

【日 本】

書籍・雑誌推定販売額 2000年2月期 前年同月比 1,2%減 マイナス幅縮まる

書籍は同0.3%減、雑誌は同1.9%減。雑誌は月刊誌が同1.5%減、週刊誌が同3.1%減。 当月返品率は書籍が同0.3ポイント減の36.6%、雑誌は同1.9ポイント減の24.7%。 ((社)全国出版協会 出版科学研究所発行 出版月報2000年3月号)

図書館流通センター(TRC)、日経BP社など7社 オンライン書店「Book1」設立

在庫確保を強化、在庫状況はリアルタイムで提供され、注文時には在庫情報と予約 配送時間が確認できる。また、TRC、日経BPなど4社は、専門書の書評コンテンツを 提供する新会社「ブックレビュー」も設立する。 → http://www.book1.co.jp/(ブックワン:準備中) → http://www.book-r.com/(ブックレビュー:準備中) (2000.3.22 Internet Watch)

日販 ネット通販を本格展開 書籍受け取り500書店で 5月から35万品目用意

サービス名称は「本やタウン」 → http://www.honya-town.co.jp (2000.3.29 日本経済新聞)

日販 ネット通販用倉庫「ウェッブセンター(仮称)」5月開設 24時間稼働

「本やタウン」に対応、在庫冊数をリアルタイムで提供する。 (2000.4.6 新文化)

三省堂書店 ネット受注の書籍受け渡し駅を拡大 首都圏73駅の76店舗へ

昨年末からJR東日本グループと組んで12駅内のコンビニエンスストア15店舗で 展開してきた。 (2000.3.27 日経産業新聞)

JR東日本グループ ネット通版に本格参入 駅コンビニに加えローソンでも受渡し

ショッピングモール「えきねっと」を開設、出店企業を募り、書籍や雑貨、食品など を販売する。三省堂書店と行っているサービスと連動するのかは明らかになって いない。 (2000.3.16 新文化)

ミニストップ 本屋さんと提携 ネット受注の書籍受け渡しサービス開始

代金3,000円以上は送料・手数料無料。3,000円未満では留め置き手数料100円。 和書120万品目、洋書150万品目が対象。 (2000.3.27 日刊工業新聞)

トーハン 注文書籍配送3日以内に 配送体制大幅改善 書店経営支援も

注文はパソコン、FAXで1冊から24時間受け付ける。消費者が希望すれば宅配も可能。 中小書店に注文書を発送する場合、現在は1〜2週間かかっている。 (2000.4.8 日本経済新聞)

「電子ペーパー」の研究が活発化 ディスプレーを丸めたり束ねたり

紙のように薄い媒体に電気を使って文字や画像を表示する。千葉大学と東芝が 基本的動作を確認した。 (2000.3.11 日本経済新聞)

郵政省と民間14社 衛星テレビでネット通版 システムを共同開発

「高度サイバー流通推進協議会」を設立、コンビニが家庭用テレビにデータ放送を 通じて買い物情報を流し、消費者は簡単に注文できる。商品は最寄りのコンビニが 宅配する。パソコンを使わない電子商取引を普及させるための基盤とする。 2001年めど実用化へ。 (2000.3.11 日本経済新聞)

携帯でのネット利用 2月末 前月比23.9%増の569万人

固定電話からのダイアルアップ型接続は、同3.3%増の約1,147万人。 郵政省2月末調査 (2000.4.6 日経産業新聞)

ネットショッピング経験者 首都圏人口の約5%

リサーチ・アンド・ディベロプメント調査  → http://www2.rad.co.jp/eM/report/netshopping-core2000/index.htm (2000.3.24 Internet Watch)

国内ビデオソフト市場 99年 前年比10.8%減 2,508億6,900万円

ビデオディスク、CD関連は軒並み落ち込んだが、DVDソフトは前年比3.8倍の 302億円。 売上高でビデオディスクを初めて抜いた。 (2000.3.27 日本経済新聞)

【世 界】

携帯端末からのインターネット利用者 2005年には10億人を突破

デスクトップパソコンなどの固定端末からインターネットを利用するユーザー数は 7億4,000万人を超える。 英ARC Group予測 (2000.3.24 Internet Watch)

B2Bの売上 2004年 B2Cの10倍以上 7兆3,000億USドルへ

世界経済の6.9%を占める。 ガートナー・グループ予測 (2000.4.5 Internet Watch)

電子メールを用いたマーケティング市場 2004年 48億ドルへ

2004年には、企業が計2,000億通以上の電子メールを送信するようになり、 平均的な家庭で1日に9通の電子メールを受け取るようになる。 米Forrester Research予測 (2000.3.10 Internet Watch)

【米 国】

人気ホラー作家、スティーブン・キング氏の新作をネット配信 1日で40万部販売

人気作家の新作でも1日に書店で売れるのは最高約7万部と言われている。 読者はダウンロードし特定のソフトをなどを使って読む。 (2000.3.17 日本経済新聞)

IT投資 ネット関連の比率が急拡大 2000年 前年比38%増の1,190億ドルへ

2003年には2,824億ドルに拡大。 IDC調査 (2000.3.27 日本経済新聞) BACK

【連載】「電子出版のデスクトップ」

- - -第7回:「縦の物を横にする(2)」- - -


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