2010/02/05 国立国会図書館に対して電子書籍配信構想に関する「日本電子出版協会案」を提案

2010.02.05

 

 日本電子出版協会(会長:関戸雅男(株式会社 研究社 代表取締役社長)、所在地:東京都千代田区三崎町2-9-2、ホームページ:http://www.jepa.or.jp、略称:JEPA)は、国会図書館長尾館長へ電子書籍配信構想に関する「日本電子出版協会案」を提案した。

 

 国会図書館を中心とした電子書籍配信構想(いわゆる長尾構想)に接し、日本電子出版協会がこれまで行なってきた電子書籍の配信に関する調査・研究ならびに実際の配信を通じて得られた経験に基づいて提案するもので、国会図書館が所蔵する書籍を、出版者が販売を望む書籍と、出版者や著者が無償配信を許諾した書籍に区別し、前者は出版者が商業配信を行い、後者は国会図書館が日本中、世界中の個人や法人、団体、図書館へ無償で配信を行う形とし、加えて、国会図書館サイトと出版者サイト間に相互リンクを設け、全体としてひとつの網羅的な書籍等のデータベースとして機能させることで読者の利便性を大きく向上させ、同時に出版者の商業活動も活性化させることを目指している。

 

 このために提案では、出版者や著者らが無償配信許諾を簡便に表明できる仕組みを国会図書館が自サイト上に構築し、許諾が得られない書籍等は国会図書館内の閲覧に限られるよう求めている。 また出版者が配信を許諾する権利を確保するためには、出版者の法的権利を著作権法上に確立する必要があるとして、関係者間の協議を開始することも提案している。

 

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 国立国会図書館を中心とした電子書籍配信構想への提案 当協会は出版者ならびに電子出版に携わる幅広い業種の会社により構成され、電子出版の促進・普及を目的に活動を続けております。電子書籍配信については、これまで協会として様々な調査・研究を、また会員各社においては実際の配信事業を行ってまいりました。その経験と当協会の理念に基づき、この度の国立国会図書館を中心とした電子書籍配信構想(いわゆる長尾構想)に対して、以下に述べる案を提案致します。

 

 本提案の趣旨は、国立国会図書館が所蔵する大量の書籍等を、出版者自らが商業的に扱いたいものと、そうでないものに区別して捉え、前者は出版者、後者は貴図書館が、各々の責任とその役割に関する社会的通念の下で、各々が配信を行うことにあります。すなわち、社会共有の財産としての著作物の情報を、図書館は無償で貸出しを行ない、出版者は販売を行なうという、長年にわたる図書館と出版者の役割分担を、電子の時代においても踏襲することを基本としております。

 

 それと同時にネットワーク上で両者を結びつけることにより、全体としてひとつの網羅的な書籍等のデータベースとして機能することも目指します。

 

1.本提案の目的・ねらい

① 出版者と著者らにより配信が許諾された書籍については、国立国会図書館が配信を行うこととします。この配信は世界のどこからでも無料で自由に閲覧可能とします。
② 出版者みずから発行・配信を望む書籍については、出版者自身が電子配信を行うことが保証されるものとします。
③ 国立国会図書館による配信サイトと、出版者による配信サイトには相互リンクを設け、6.に後述する利用を可能とします。
④ 国立国会図書館及び多くの図書館の貸し出し業務の迅速化、効率化を実現し、サービスの向上をはかります。
⑤ 国立国会図書館による電子書籍配信の実施により、出版者がその社会的役割を継続的に果たす上で必要な利益が不当に損なわれることがないように配慮します。

2. 国立国会図書館による電子書籍配信の概念・主体・料金

① 配信を行なうのは国会図書館自身とし、いわゆる長尾構想に提案されるような第三者機関は設立しません。
② 配信は図書館の閲覧・館外貸出しの延長にある概念とし、販売の概念とはしません。
③ 閲覧料金は無料とし、権利者への対価の支払いは必要ないものとします。
④ 必要なシステムの構築・維持は国立国会図書館が図書館業務として行い、費用は全て国立国会図書館が負担します。

3.権利許諾

① 国立国会図書館が電子配信を行なおうとする書籍であって、著作権などの権利が存続している書籍については、国立国会図書館が事前に全権利者から配信許諾を得ます。
② 出版者や著者らが許諾を簡便に表明できる仕組みを、国立国会図書館のサイト上に構築します。
③ 出版者や著者らが許諾した書籍については、国会図書館は個人への配信、法人・団体への配信、国立国会図書館内での印刷、他の図書館への配信、などが実施可能となります。許諾が得られない場合は、国立国会図書館内の閲覧に限るものとします。
④ 出版者が許諾する権利を確保するために、出版者の法的権利(版面複製・公衆送信権など)を著作権法上に確立する必要があり、その件に関する関係者間の協議を開始します。
⑤ 権利許諾に関して出版者への金銭の授受は発生しません。よって著作権処理団体の介在は不要となります。

4. 国立国会図書館による電子配信の仕様

① 利用者はインターネット経由で一般のブラウザにて閲覧できるものとします。
② 同時アクセス制御やDRMは行いません。
③ 利用者が閲覧した情報やその複製物を再配布する場合は、権利者の許諾を必要とします。

5.電子データの納入

① 電子データを用意するための費用や作業負荷、またデータ形式は、各出版者の態勢や依頼する印刷会社により大きく差があるため、標準的な価格や形式を定めず、各出版者と個別に相談することとします。
② UD(注)への使用に限定し、一部の書籍を対象として電子データ納入を推進するのは、意義があると思われます。

6.ナビゲーションとリンク

① 出版者が商業的に発行する書籍については、国立国会図書館のサイト上の蔵書検索結果に、各出版者が指定する出版者サイト・電子書店などのリンクを設け、出版者による電子化を促進すると共に、日本の出版物へのアクセスルートを内外に提供します。
② 出版者や著者らが許諾した書籍については、出版者のサイト(や依頼するサイト)から該当資料へのリンクを可能とし、当該資料の閲覧を促進すると同時に、各出版者のサイトの付加価値を高めます。

 以上 (注) 「UD (univsersal design) 特定の人だけでなく、誰もが使えるよう配慮した設計。本提案では読書障がい者といわれる方々の閲覧を可能にすることを指して使用しています。」