キーパーソン・メッセージ

2019.07.01

「電子出版」が「夢」を叶えた!

イーブックイニシアティブジャパン  照井 哲哉

 「デジタル技術に支えられて、いまや、新しい「電子出版」(版を出すのではなくパブリッシングと言いたい)という商品の特性を生かすのはまさにネットワークであります。従来の出版社の経営上の大きな悩みは、高額の印刷費や紙代。本の返品や、それを保管する倉庫代。物流の費用や仕組み。多品種少量出版の非効率。などなどであります。これらが、ネットワークで一挙に解決するのですから、「夢の出版の時代が来た」と言ってもいいでしょう。」

 冒頭から長めの引用文で甚だ恐縮ですが、これは、私が在籍するイーブックイニシアティブジャパンの創業者である鈴木雄介が、この「キーパーソン・メッセージ」に寄せた文章の一節です。

 更新日が1997年7月1日とありますから、いまから20年以上も前イーブックの設立が2000年5月ですので、それより2年前のことです。電子出版…電子書籍に輝く未来を見出し、高揚している気分が伝わってくるようです。

 電子書籍という未開の分野に、鈴木氏の思惑通りにイーブックが順調に進撃したかといいますと、行く先々に困難が待ち受けていたようです。

 2000年代初頭は、電子書籍に対して出版社の意識は極めて慎重でした。私も長らく出版界に身を置いておりましたので、当時のムードは覚えています。業界の流れを一変させたのは、2007年にiPhoneの登場といっても過言ではないでしょう。数年後にはAndroidやタブレット型のデバイスの登場もあって「電子書籍元年」を迎え、電子書籍に対する注目は一気に高まりました。

 私がイーブックに転職したのは2010年。多額の造本代と流通コストが不要となる電子書籍に限りない夢が感じられたからです。もう10年が経とうとしています。

2019.06.04

ぎこちないバトンワーク

翔泳社 田岡 孝紀

 「編集のバトンパスも上手くやらないと」
 5月に横浜で行われた陸上の世界リレー大会で、日本がバトンパスで違反となり失格し、予選敗退となったというニュースをラジオで聴き、そう思った。

 あとで調べてみたら、予選で敗退したのは、男子400メートルリレーで、日本経済新聞によると、「武器としていたバトンパスにまさかの事態が起きた」そうだ。

 もともと日本は、バトンワークが巧みで、その強みをいかして、世界大会で実績をあげているにもかかわらず、今回は思いもよらない失敗をしてしまったということらしい。

 私が勤めている翔泳社では、編集者となる新入社員は、編集部に配属される前に校閲課で研修を受ける。新卒や第二新卒の場合は半年以上、中途の場合は数か月と期間は異なるが、すべての新人を対象としている。

 ゲラや原稿をたくさん読むことを通じて、自社の本を知ってもらうというのが、この試みの最も大きな狙いである。

 翔泳社に限ったことではないことを願うが、新人編集者は、いったん配属されると、所属する編集部以外のゲラや原稿はほとんど読むことがない。そのため、自社の本に関して、意外と知らないという傾向があると思う。

 それでは視野が狭くなりがちで、自社の強みをいかした企画を立てるのが難しいのではないだろうか。

 この育成法であれば、自分たちが積み上げてきたものを次の世代に伝えることができるかもしれない。そうした発想が根底にある。

 私たちにとってのバトンパスだ。

  • 電子出版アワード
  • 図書館館外貸出可否識別マーク