実務書のCD-ROM化

1999.02.01

日本実業出版社  西田 豊

 実務書をCD-ROM化した商品を手に入れた。市販の書籍数冊分を1枚のCD-ROMに まとめたものである。既刊の当該書籍と比較してみる。書籍では縦組みのものが、 このCD-ROMでは横組みで表示されている。縦にスクロールしていくパソコンのディ スプレー上で読むには、しょうがないか。
 しかし、さすがに縦組みと横組みとでは印象が違う。横長の表が縦長の表に組 み換えられている。書籍の編集者は、かなり苦心してこの表をつくったのだろうな。 それが何の変哲もない単純な縦長の表に……。しかも、右側半分が空きのままだ。 書籍だと考えたらいけないんだよな。でも、横長の表を縦長にするには手間がかか っているわけで、その分コストもかかっているはず。手間とコストをかけて改悪 (パソコンの特性上しょうがないとわかっていても)しなければならないのか。 これはつらいな。編集者は、スンナリ納得したのだろうか。
 本文や表中の色がかわっている用語からは、その説明がされている箇所へリン クが張られていて、クリックすればそこへ飛べるようになっている。これは便利だ。 が、大部分の説明は、その用語の周辺にあるんだよな。書籍であれば、同じページ か、せいぜい前後のページを繰れば出てくる。書籍のように1ページ全体が一覧で きないからこれも過剰サービスとまではいえないが、若干、無駄な手間がかかって いるといえなくもない。
 別の色の会社名をクリックすると、ブラウザーが立ち上がって、その会社のホー ムページにつながるようになっている。便利だけれども、そのホームページで必要 項目を探して戻ってきたら、それまで読んでいた本文は頭の片隅へいってしまって いて、再度戻ってざっと読み直さなければならない。ブラウザーの操作(?)に神 経がいってしまっていたんだな。私だけかな……。
 さらに、色の違う「○○請求書」をクリックすると、そのテンプレートが開い た。表計算ソフトのExcelが入ってないとダメ(こういう実務書を読むビジネスマン は必ず使っているのかな?)だが、これは便利だ。数字を入れれば、計算してくれ、 得意先名や自社名、年月日も入れられ、出力もできる。これはもとになった書籍に はない。もっとも、スペース的に入らないし、自動的に計算してくれるなんてこと は逆立ちしてもできっこない。ほかから調達してきたのかな、手づくりかな。これ も手間がかかっているな。だけど、実際に使うには、もう少し加工しないと……。 加工できる人は、この程度の請求書の様式は1からでもすぐにつくれるよな。
 何、全文検索もできるって。うちのでもやってみたいな。でも、この程度のボ リュームの本文について、全文検索が必要なのかな。目次を見れば、当該用語がど の辺に入っているか、ほぼ見当はつく。それに、検索ソフトの組込みは、高いんじゃ ないかな。
 いずれにしても、立派、うらやましい。つくり手として考えられることは、一 応すべて曲がりなりにでも実現している。しかし、いろんな機能が活用できるから といってあれもこれも盛り込んでみても、使い手にとって利用価値があるのかどう か。つくり手のひとりよがりではないのか。確かに、販売価格は、書籍数冊分の4 分の3程度にはなっている。
 それは是としよう。が、時たまにしか使わない機能を盛り込み、そのため価格が高 くなっているとすれば、その分価格を下げたほうが読者にとってはありがたいので はなかろうか。極端な話、書籍と同じ内容のものをPDF化しCD-ROMにして、書籍の 8掛くらいの価格で売り出してみてはどうか。それでも書店には並ばないだろうな、 それよりもこれからはネットの時代で、CD-ROMはいまや時代遅れなのか……など、 CD-ROMをみては日々思い悩んでおります。