電子出版パブリッシャーへの夢

1999.09.01

マゼラン出版  林 陸奥広

 当社が開催運営のお手伝いをさせていただいているJEPAの電子出版学校『コンテン ツビジネス講座』の第3期が、今月9月末から12月にかけて全7回の予定で開催され ます。今回は「ネットワークビジネス短期集中講座」と銘打って、いよいよインター ネット上に本格的に立ち上がりつつあるEC(電子商取引)事業の周辺に焦点を当てた 内容となっています。
 電子書店や音楽配信、あるいは情報出版からの進出など、ネットワークビジネスの最新 状況を読み解くためのキーパーソンをお迎えして、「お金の稼げるコンテンツとサービ スとは何か」を徹底研究します。ぜひ会員社の方々はもちろん、会員社以外の方々にも ご紹介をしていただき、多数ご参加いただけますよう、この場をお借りて宣伝をさせて いただきます。
 ネットワークビジネスといえば、電子書籍コンソーシアムの実証実験が11月には端末 のプロトタイプを配布する新しい段階に入ります。こちらも同様に、紙が液晶に代わっ たというだけではない、電子書籍独自の「お金の稼げるコンテンツとサービスとは何か」 を厳しく追求していかなければならないと考えます。そうでなければ電子書籍も、出版 全体の長期低落傾向の波間に消えていくことになりかねません。出版の電子化とは、 出版の形を変えることであり、同時に出版の質そのものを変えることでもあります。
 ここで、マゼラン出版のこれまでの生い立ちをごく簡単に説明させていただきます。 当社は求人情報誌の専属編集プロダクションとしてスタートしましたが徐々に編集領域 を広げ、さらにDTP編集をきっかけに電子ブックやCD―ROMなどをメディアとす るパッケージコンテンツのデジタル編集を手がけるようになりました。これまでの「本 の編集」とこれからの「デジタルの編集」というふたつの領域の経験と実績を持つ点が 評価され、百科事典・各種辞書から一般書・漫画までの幅広い分野の電子化のお手伝い をして現在にいたっています。
 またこの間、取次コードを持たないためにやむなく他社からの発行となりましたが、 書籍を9点世に送り出しています。この中には延べ刷り部数が10万部を超えるという、 文字通り隠れたロングセラーとなったヒット作も含まれており、編集制作会社から出版 社へのステップアップの可能性を常に志向してきました。
 出版が編集・流通・販売のあらゆる局面で大きく変わろうとしている現在、当然当社の 事業展望も従来の経験・実績を土台としながらも、大きく変わらざるをえません。その 舞台がまさに、前述のネットワークビジネスに他なりません。ネットワーク上では、 書籍と音楽という異なったコンテンツが同一線上に並ぶように、大手出版社と零細出版 社という異なった体力の企業が同一線上に並ぶという「夢のような可能性」を秘めてい ます。であるならば、当社にも参入のチャンスがあるのではないか。
 ネットワークビジネスの中で、電子出版がどのようなマーケットを形成できるかはまだ 誰にもわかりません。ただどのようなマーケットであれ、そこには当社のような「志」 だけは高いが「体」の小さな電子出版社にもチャンスと役割が与えられるのではないか。 またそのような「夢のような可能性」があってこそ、はじめて電子出版のマーケットが 活性化する…いささか我田引水が過ぎるような気もしますが、電子出版の将来は十分に そのキャパシティを持っていると信じます。