高まる電子書籍への期待と書店の役割

2010.01.01

紀伊國屋書店  宇田川 信生

 新年明けましておめでとうございます。
 グーグル・ブック・サーチ問題、キンドル、iPhone、Nookなどをきっかけに盛り上がった電子書籍の熱気は今年も衰えていないようです。文字通り毎日、新しい技術・製品・サービスモデルの発表が行なわれ、時期的にも2009年の回顧と2010年の予測がブログやニュースサイトを賑わしています。折しもラス・ベガスではCES(コンシューマー・エロクトロニクス・ショウ)の真っ最中。新たな発表の数々で、今日の予測や分析が明日には陳腐化しかねない目の回るような状況です。(かくいうこのメッセージだって同じこと。)
 紀伊國屋書店は米国OCLC NetLibraryと連携して日本書籍の提供を進めておりますが、現在までに33社の出版社様からのご参加により1,420点の学術・教養書を提供し、ご利用の図書館様の数も121と、おかげさまで少しずつ着実に拡大をしております。特に昨年10月、凸版印刷さんとの協業による新たなデジタル化スキームを提案させていただいて以来、多くの出版社様から問い合わせやご相談を承り、大変励みになるとともに、ひとつでも多くのビジネスチャンスにつながるようにと決意を新たにしております。
 NetLibraryでは従来洋書のみを販売しておりましたが、日本書籍を提供できるようになったことで洋書のご注文も増えるという相乗効果をもたらしました。洋書のみだった頃にご案内にうかがうと、司書の方から「和書はないの?」と決まって云われたものですが、その和書が入ることで洋書もご注文になるケースが増え、さらにはNetLibrary以外の大手海外出版社の電子書籍のご導入へも拡大しつつあります。大学図書館様の電子書籍にたいする視線が確実に変わってきていることを感じます。こうして図書館の利用者への電子書籍の露出度が上がり、利用が日常化すれば、利用者の方々のプライベートな読書生活においても(コミック以外の)電子書籍を買おう、使おうというほうへ広がるのではないか、と秘かに期待しております。
 図書館以外での電子書籍はどうでしょうか。もろもろの状況のなかで書店としてなにができるでしょうか。電子書籍をめぐる動きがあまりにめまぐるしく、米国ではネット書店によるアグレッシブな価格モデルに反発して新刊タイトルの電子版リリースを数ヶ月遅らせる出版社が出てきたことも報じられました。新刊本(紙)のプライス・カットが日常化している米国でも「電子」がからむことで色々なつばぜり合いが行なわれているようです。原点に戻れば、書店は図書館・個人を問わずお客様との接点になり、出版社・お客様両方のニーズを聞ける立場にあります。単純ですが、出版社には売上を、お客様には快適な読書ライフを。これに尽きます。この両方を追求する「場」(リアルおよびバーチャル)を提供できるよう知恵をしぼらないと生き延びる道はないと考えています。
 ところで、電子書籍が普及するにつれ、電子に適したコンテンツとそうでないもの(やっぱり読書は紙でなくっちゃ)との違いがより鮮明になり、紙の本(そしてリアル書店)への回帰が起こるのではないか、あるいは、電子と紙両方の強みを生かしたプリント・オン・デマンドが本格化するのではないかと実は夢想しております。電子出版が最終的には紙の本の復権にもつながるという初夢でした。