フォトエージェンシーとしての今後の役割

2014.06.01

ユニフォトプレスインターナショナル  太田 智徳

 先日、教育ITソリューションEXPOにデジタル教科書を使った模擬授業を見学しに行って参りました。教師役のデモンストレーターが、生徒役の我々見学者に電子黒板を使用して、模擬授業を展開していくのですが、例えば、社会科ではデジタル教科書内の写真部分を拡大表示し、建築物の詳細部分などをヴィジュアル的に解説したり、他教科(音楽)のページへリンクして関連する歌を聴かせたり、機能的にはシンプルですが、既存の教科書より、一歩深く、また多面的な授業を展開しやすい仕掛けになっていて、使いこなせれば、視聴覚を駆使するデジタル教科書ならではの学習効果が期待出来そうに感じました。
 しかし、デジタルならではの問題点もありました。ある二つの有名建築物をテーマにしたページなのですが、片方の建築物のみ写真部分がブランクになっており、誰もが知っている有名建築物だけに、かなり違和感が出てしまっておりました。
(今回は模擬授業であったので、本番の教育現場への供給時には、ちゃんとお目見え出来るようになっていると思いますが…)
 いわゆる写真の使用許諾において、デジタル使用目的の場合は、紙の場合よりハードルは高く、使用料も高額になる場合があります。理由はセキュリティー上の問題が大半ですが、デジタル上での写真の使われ方が、権利者にとって今ひとつピンと来てい無かったり、必要以上に無制限に使われてしまうような不安をいだかせているためではないかと思っております。
 私は、フォトエージェンシーに身を置いているため、使用者側と権利者側の双方から事情を伺います。今までは、わりとスムーズに意思疎通し、流通していたと伺っておりますが、先ほどのようなデジタル使用における懸念やデジタル制作上の予算の問題などが織り交ざり、許諾自体がおりなかったり、使用を断念せざるを得なかったりという残念な状況が発生してきているようです。このような状況は、今後の電子出版普及において、少なからず障害になっていくと思われます。どこかの機関が指針を示すなり、交通整理をしてくだされば良いのですが、この両者は、日本国内のみならず、世界中で色々なパターンで結びつき、もしくは知らないうちに結び付られてしまうので、ある程度までの枠組みや指針が出来たとしても、その範囲内に収まりきらない細かい問題が、今後も発生して行くと思われます。
 この面倒な問題を両者の利益になるようにひとつひとつ丁寧に解決していくことがエージェントしての弊社の役割であり、また同時に、今後はデジタル化の最大の利点であるスピード感を損なわない解決方法の構築が、最大のミッションであると考えております。
 壮大で分不相応なテーマであるとも思いますが、その目標達成ため、当協会で電子出版およびその周辺にある様々な技術や、出版業界全体について勉強をさせていただき、皆様のご意見やアイデアなどを伺わせていただきながら、弊社のフォトエージェンシーとしてのあり方を変えて行きたいと考えております。また、その過程で少しでも電子出版の普及および当協会の皆様のご発展に貢献できれば幸いに思います。今後ともご指導のほど何卒よろしくお願い申し上げます。