新しい「NDLオンライン」は「デジタル開架」をめざすのか?

2018.01.08

JEPA 著作権委員会  清水 隆 

新年あけましておめでとうございます。

この1月5日から国立国会図書館(NDL)でシステムの変更がありました。「NDL-OPAC」として知られていた「国立国会図書館蔵書検索・申込システム」が2017年12月で運用を終了し、1月からは「国立国会図書館検索・申込オンラインサービス」、略称「国立国会図書館オンライン」が運用されるようになりました。きっとすぐに「NDLオンライン」と呼ばれるようになるでしょう。NDLオンラインが、資料の検索・申込サービス、レファレンス・サービスなどのポータルとなります(図1)。

まるで国会図書館からのお知らせのような書き出しになりましたが、私は諸事情あって、ここ2年程NDLを頻繁に利用するようになっています。そして、これまで使ってきたNDL-OPACは、なかなか楽しく役立つものでした。

多くの方は、NDLは閉架を中心とした図書館であり、NDL-OPACはその蔵書を検索し閲覧申込みするためのツールという認識を持っているかもしれません。もちろん、それは中心的な利用の仕方なのです。しかし、検索結果の資料一覧に「デジタル資料」と表示されているものがあります。「デジタル資料」のあるものはすぐに画像を閲覧することができます。

館外からインターネット接続によってNDL-OPACを利用してもデジタル資料が表示されることはあまりありません。多くの場合、次のように表示されることになります。

「この資料は、著作権の保護期間中であるか、著作権の確認が済んでいない資料のためインターネット公開をしていません。閲覧を希望される場合は、国立国会図書館または図書館送信参加館へご来館ください。……」

しかし、明治や大正期の資料にはインターネット公開されているもの見受けられます。また、デジタル資料が存在するものは、ほとんどの場合館内では、表示閲覧が可能なのです。表示されるデジタル資料は、スキャンされた画像です。探し出した資料を即時画面上で確認できることは大きなメリットです。実際、雑誌に関しては多くのものについて、創刊から2000年までの誌面がデジタルデータ化されているようです。

NDLオンラインになって、デジタル資料の表示は「デジタル」と表示されたアイコンになって、より分かりやすくなりました(図2)。デジタル資料の表示までのプロセスも、「デジタル」アイコンから直でリンクするなど、かなりシンプルになりました。

2009年の著作権法改正によって、第31条第2項では「国立国会図書館においては、図書館資料の原本を公衆の利用に供することによるその滅失、損傷又は汚損を避けるため、当該原本に代えて公衆の利用に供するための電磁的記録を作成する場合には、必要と認められる限度において、当該図書館資料に係る著作物を記録媒体に記録することができる。」とされました。

これにより、NDLは蔵書をデジタルデータ化して保持し、公衆の利用に供することができることになります。実際に資料を閲覧してみれば、傷みのある資料もあり、「損傷又は汚損」がデジタル化のための方便ではなく必要な処置であることわかります。また、地下深くの書庫からの移動という時間と労力も、端末画面での閲覧が可能になれば必要なくなります。

今後、「デジタル」表示のある資料が増え、すぐに内容を確認できる「デジタル開架」状態になれば、NDLの利便性は大きく改善されると思われます。今回のNDLオンラインの稼働は、NDLがいままでの閉架中心の図書館ではなく、「デジタル開架」の図書館に変わるためのひとつの動きになるのではないかと期待を持たせるものです。

これは、ひとりの利用者が、1月5日に新システムの画面を見て考えたことでしかありません。館内のインフォメーションで尋ねても、大きな変更は画面デザインであって、デジタルデータなどについて大きな変化があるわけではないということでした。実際にどのように変化していくのか、注目したいところです。