CSS Writing Modes Level 3の勧告案が公開された

2019.11.01

凸版印刷  田原 恭二

 10月24日、CSS Writing Modes Level 3の勧告案が公開された。11月22日までコメントを受け付けているので、みなさま是非ご覧になっていただきたい。
CSS Writing Modes Level 3
この場を借りて、グーグルの石井宏治さんやfantasaiをはじめとする一連のご尽力いただいた方々に、あらためて敬意を表したいと思う。
 
 CSS Writing Modes Level 3は、ぼくにはウェブで縦書きがサポートされたという以上にシンボリックなもののように思える。将来まちがいなく、あのときアレがあったから、今のコレがあるんだよね、という存在になるだろう。
 
 さまざまな言語固有の組版原則や表記法などから見れば、CSS Writing Modesも、まだまだ課題多しという状況だとは思うが、ぼくとしては、今後ますますウェブでのタイポグラフィへの関心と、その加速度的な発展に期待したい。
 
 話しは変わって、今年の6月に聴覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(いわゆる読書バリアフリー法)が成立した。マーケットでは東京2020大会を契機に、障害の有無にかかわらず、女性も男性も、高齢者も若者も、日本人も外国人も、すべての人がお互いの人権や尊厳を大切にして支え合う共生社会の実現を目指し、さまざまな取り組みが活発になってきている今日この頃だ。
ユニバーサルデザイン 2020 行動計画(PDF)
 
 情報やサービスを提供する者にとって、もはや情報保障や合理的配慮といったことは一般的な仕様の一部と言ってもいいのかもしれない。
 
 昨今の展示会に行くと、医療・介護、交通、観光、働き方改革など、さまざまな分野の社会的課題に対するデジタルトランスフォーメーションの提案や、AIやIoTを活用した情報サービスが真っ盛りだ。
 
 デジタル技術の浸透でぼくたちの生活をより良いものに変えていく、言い方を変えると、今までの価値観や枠組みを根底から覆す革新的なイノベーションへ向かっていく、といったことが体感できて刺激を受ける。誤解を恐れずに言うと、社会が進む方向と情報技術が進む方向は同じだと思う。
 
 さて、以上のような社会の変化を前提としたときに、これからの書物はどんな役割を担い、どのような発展を示すのだろうとたまに考える。今とあまり変わらないかもしれないし、今は想像もできないモノへ進化しているかもしれない。ちょっとお酒でも飲みながらみんなでブレインストーミングをしてみませんか。
 
 ぼくの場合は、人間が情報を咀嚼する以上、人間にとってやさしいインターフェースには特にこだわっていきたいと思っている。例えばそれは、身近なところでは書体であったり、ページレイアウトであったり……。
 
 繰り返しになるが、10月24日にCSS Writing Modes Level 3の勧告案が公開された。大げさに言えば、CSS Writing Modes Level 3とぼくのこだわりの部分はどこか底辺でつながっている。だから、ご尽力いただいた方々に心より敬意を表したいのだ。