電子出版への多様なアプローチと利用可能性をサポートする活動を

2020.02.03

JEPA顧問 三瓶 徹

 日経によれば、米アップルのティム・クックCEOが、注目する分野として、現実の光景にデジタル情報を重ねて示す拡張現実(AR)を挙げ、「次のコンピュータープラットフォームになる」と述べた。モバイルネットワーク5Gの進展と同期し、情報伝達系、エンタメ系、教育系ではARという新しいメディアが花盛りになろうというのが巷の予測で、電子雑誌では、ARが当たり前になるかもしれませんね。

 紙の代替としてCD-ROM電子出版が始まってから30年、電子書籍が始まって10年になります。インプレス総合研究所によると電子書籍は3000億円を超える売り上げとなっており、特にマンガを売り上げる大手出版社の決算は大変良好です。それでも出版界には電子出版に踏み込まない出版社が沢山おられます。

 本には学術系、情報伝達系、リファレンス系、エンタメ系の分類のほか、評価軸を変えると、沢山売りたい本、限られた読者を対象にした本、図書館を対象にした本、面白い本、読むのが苦痛な本など、色々な種類があります。著作権の重さも、ビジネスモデルも違います。電子出版でやる場合も、ビジネスモデルも千差万別にならざるを得ません。電子出版に踏み込めなかった理由も千差万別でしょう。

 電子出版物の多くは購入してもテキストは抽出できませんが、それでも健常者にとっては、何時でも何処でも読めるだけマシ。例えば日本図書館情報学会誌は、掲載1年後にフリーでPDFは読め、テキストは抽出できませんがアクセシビリティへの配慮はあり、音声読み上げエンジンがある環境であれば読み上げてくれます。

 一方、欧米における学術の分野では、紙の形態の出版が衰えデジタルに移行しており、日本の大学図書館は欧米の電子ジャーナルや学術書のアクセス権を大量に購入しています。残念ながら日本語の電子化された学術書は少ないのが現状です。

 今後、デジタル教科書で学習したデジタルネイティブが育つと、教育や学術の分野でもデジタルへの移行が顕著になると思われます。また読書バリアフリー法対応など、本来アクセシブルな筈の電子出版への要求が強まります。

 そこで、これから電子出版に踏み込もうとされる電子出版協会会員以外の方々に、電子出版に必要な、改正著作権法対策ノウハウ、リフローEPUBと画像による固定レイアウトEPUB等の電子書籍フォーマット、リフローEPUBのアクセシビリティ向上とDRM、流通や外注との付き合い方などを聞いていただく勉強会をJEPA内の各委員会の協力で企画することにしました。