DX推進について

2021.06.01

大日本印刷  吉岡 健治

 2018年10月、初めてJEPAニュース「キーパーソン・メッセージ」を書いてから2回目の順番が回ってきました。前回は、「デジタル化を振り返り」の題目で、2010年、3度目の電子書籍元年から……2015年からは、一段とデジタル化が加速、DX(デジタルトランスフォーメーション)も始まっている。ただし、2010年から始まったデジタル化は、『形が見えない』デジタル化であり、あまり実感が得られないが、IOT、インダストリー4.0など、電子出版としてどんな将来展開が待ち受けているのか?『形がない』デジタル化へ突入していくのかな?と思(重)いつつ、不安でもあり、楽しみでもあると締めくくっていました。今回は、その続きを思いつくままに書いて見ます。

 現在、正直言うと、『形が見えない』、『形がない』は当たり前と感じてしまっています。なんと言ってもコロナ禍の影響が大きく、意識が変化した気がします。また、DXは流行語、ダイバーシティ&インクルージョン、働き方変革も定着しつつあるように感じます。

 働き方変革の「長時間労働の是正」から、より少ない時間で高い価値を生み出す(生産性の向上)ことを意識すると、次に求められるのはイノベーションだそうです。イノベーションは、「新しいアイディアから社会的に意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革」を意味するとも捉えられ、マネージメント的にも、キャリアアップ、1on1ミーティング、OKRを会社的にも制度として取入れ、試験的な実施が始まり、さらなるセルフマネージメントが求められています。イノベーションも当たり前の感じになりつつある?

 話を元に戻して、DXを一番身近に感じられるのは、テレワークでないでしょうか? DXとは、デジタル技術を活用したイノベーション変革とも解釈できますが、2つの要素「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」があるそうです。(※注意「ラ」があるかないかの違いです。)

 デジタイゼーション(Digitaization)は、デジタル化のことで、例えば、音楽で言えばレコードやカセットテープを使っていたのがCDになるような変化のことです。デジタライゼーション(Digitalization)は、インターネットでMP3が共有可能となった。フォーマットがMP3でデジタル化されただけでなく、インターネットと言う別のデジタル技術と組み合わさって楽曲の販売方法も変わった。

 DXはこのデジタライゼーションを前提として、ユーザに新たな価値を提供する事業にすることと言える(※典拠「ソフトウェアファースト」及川卓也)。

 これをカテゴリーごとに考えて見ると以下の通りです。

1. コミックスは、「雑誌で作家の発掘・育成からコミックス化へ、あるいは、電子書籍販売のモデル」から「投稿サイトで作家の育成・発掘から電子書籍及びコミックス化」さらに、海外展開に迄、デジタライゼーションが最も進みつつあります。ただし、海外は、韓国発のWebToon(縦読み&着色)に席捲(ディスラプター)されつつあるのが残念ですが……。

2. 書籍は、GIGAスクール構想、大学でオンライン授業、電子図書館システム普及など教育ICT化が加速しています。電子教科書、電子書籍のデジタイゼーションから一気にデジタライゼーションに進むと思っています。
また、リアル書店(丸善ジュンク堂)は厳しい状況ですが、honto書店は、すごもり需要を受けて好調に推移しています。
営業・企画部門も、書店POS情報を活用した需要予測による少ロットPODによる重版提案、あるいはSNSのトピックス情報など活用して、プライベート書籍販売などをリアル書店と連携して提案するなどのアプローチも地道に取組んでいます。

3. 雑誌は、一番進捗遅く、DTPによるデジタイゼーション止まりで停滞気味。Webシフトすると言われて久しいが、Web・広告業界の影響を受けて、記事はタダが当り前、DSP、DMP、CDP、データ解析、さらには、GDPRによるCookie対策等、日進月歩の技術的な進歩についていくのも難しく、新たなマネタイズモデルを未だに見出せていませんが色々なPoCを行っています。

 さらには、XR(リアルとバーチャルの融合)技術による新しいビジネスの模索も始まっています。
※少し、宣伝「池袋ミラーワールドに「バーチャルジュンク堂書店」がオープン! | Mogura VR」こう考えると、現在、紙ビジネスは出口の見えない暗いトンネルの中を進んでいるが、DX推進の先には、視界が広がる「明るい電子出版の当たり前の未来」が待っている!!

 年末には、コロナ収束と皆と良き乾杯ができることを祈念して!