テレワークで思うこと その後

2022.06.01

じほう  斉藤 真木

 約2年前「テレワークで思うこと」というタイトルで原稿を書いたが、コロナ禍のフェーズがかわりつつある今、当時書いたことが現在どうなっているかを書いてみたいと思う。

・アナログ業務からの脱却
 弊社の社内環境はテレワークの浸透に対応すべく、フリーアドレスを導入、社のコンパクト化、レイアウト変更等をおこなった。見た目も今風のオフィスとなり、集中して作業したい場合は集中ブースへ、他部署と連携をとるような場合はオープンスペースへといった感じで業務に合わせて好きな場所で働くことができるようになった。
 出勤しなくても同等の業務ができるようにとフリーアドレス化にともない固定電話からIP電話へ変更、会社にいなくても電話を受けたりかけたりすることができるようになった。
 業務のデジタル化としては、編集業務のデジタル化によるペーパーレスの実施を進めている。図が多く修正でページが大きく動いてしまうもの、1000ページを超えるもの(モニターでの校正作業は目の疲れ、正確性の問題が論文でも指摘されている)、スケジュールがタイトな雑誌はまだまだ紙での作業が必要なのが現状である。
 業務のデジタル化に向けたソフトやデバイスのテスト導入をすすめており、それらを利用した書籍では著者の協力もあり、初校からPDFでのやり取りをおこないプリントアウト枚数を90%削減、ほぼテレワークで書籍発刊までもっていけたものもある。しかしまだまだテスト段階で全体でみればアナログ業務からの脱却はできていない。

・電子書籍の普及
 当時「外的要因により、人の行動が変わり、考え方も変わるときが電子書籍普及のチャンス」と書いたが、コミックのように紙を電子が超えるという状況には程遠い状態、弊社発刊物でも電子書籍販売数は伸びてはいるが紙との比率は大きく変わらないのが現状である。
 しかし、一部大企業からはテレワークの定着、コンプライアンスの観点から電子書籍のサブリミナル的利用についての要望が寄せられるようになってきた。コロナがおさまってもテレワークはなくなることはないので、大企業だけでなくこの流れが一般的となる可能性はある。
 電子書籍ではないが、辞書的書籍のアプリ利用やデータ利用は伸びてきており、電子的利用という意味において利用は増えてきている。電子書籍という形にはこだわらず、アプリ、データ、動画等ユーザーのニーズにあった形でコンテンツを提供していくことが大事と考えている。

 2年前の想定とはだいぶ現状は違っているが、変化は起こりつつあると感じている。弊社が書籍・雑誌を発刊している医療系分野において、オンライン診療やオンライン服薬指導といった対面を必要としない医療の場面ができつつある。
 業務がデジタルの場面でおこなわれることで情報提供の手段が紙から電子へ移行する可能性が増えてくる。その変化に対応した商品をつくるにはソフト、デバイスも大事だが編集者の意識の変化が重要、その醸成をおこなっていかなくてはならないと考えている。