デジタル辞書の現在位置

2024.02.01

レファレンス委員会委員長(ディジタルアシスト)  永田 健児 

 JEPAのレファレンス委員会では、毎年、「辞書アプリの年別ダウンロード実績推移」について調査を行い、その結果を公表しています。これは、主にスマートホンユーザーをターゲットとした“辞書アプリ”について、その販売数(ダウンロード数)の推移を視覚化することを目的としたものです。2018年のスタートですが、2020年からは「アプリストアでの有料辞書アプリ販売数」と「アプリ内課金による追加辞書データ販売数」を分けて集計しています。昨年10月に6回目の調査結果を公開しました。

JEPA・レファレンス委員会「辞書アプリの年別ダウンロード実績推移」

 この調査の2年目、すなわち2019年に「GIGAスクール構想」がスタートします。全国の生徒・児童に向けて一人一台のデジタル端末が用意されることとなり、導入される辞書系のアプリ/サービスについても急速な伸びが期待されました。こちらもさっそく調査対象とすべく取りかかりましたが、諸事情の調整に5年かかり、今年、やっと公開できることになりました。このキーパーソン・メッセージとほぼ同時に、JEPAウェブサイトにて公開されているはずです。

JEPA・レファレンス委員会「教育機関向け辞書アプリ/サービスのライセンス販売実績推移」

 詳細は上記を見て頂くとして、個人向け&教育機関向け2つの調査結果をまとめてひとつのグラフにしてみたのが下の図です。実は年度の切り方が、個人向けは1月~12月、教育機関向けは4月~翌年3月と微妙に違うのですが、そこはご容赦ください。次回の調査結果からは、2つまとめて、この形式で公開しようと考えています。

 今回は「GIGAスクール構想」に基づく計画が(コロナ禍による前倒しもあって)一気に動き出した2020年からの3年分について調査結果を公開していますが、もうちょっと年度を遡れれば、と欲を出しています。2018年の個人ユーザ向けアプリの初回調査でもiPhoneが登場した2008年にさかのぼって調査していて、そのビジネスモデルが実質的に動き出してからのビジネスボリュームの全体像と推移を視覚化したい、という目的があるためです。CD-ROM辞書やオンライン辞書について、黎明期からの統計的な全体像を把握することは、残念ながらもう無理です。とりあえず今は、できる範囲で数字を記録して、次代に残すことが大事なのだと考えています。

 さて、JEPAでの調査は辞書アプリ/サービスを対象としていますが、電子辞書(ハードウェア)については、一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)モバイルシステム部会さんが、毎年「電子辞書の年別出荷実績推移」を公開されています。デジタル辞書の市場動向を把握し、その歴史を語る際には必要不可欠で、大変貴重な資料です。こちらも併せてご確認ください。

JBMIA・モバイルシステム部会「電子辞書出荷実績推移(1996-2022年)」

 「(デジタル辞書の)歴史を語る際には」なんて言ってしまいましたが、「そんな機会はそうそうないぞ」と自分にツッコミをいれた瞬間、ちょっと油断している間に日本電子出版協会40周年が再来年に迫っていることに気付きました。歴史を語らねば(笑)。日本電子出版協会が立ち上がった1980年代、そして(たぶん)一番活気に満ちていた90年代、電子出版の中心にデジタル辞書がいたのです。さて、現在は? 中心ではありませんね。でも、電子出版を支える柱の1本ではあり続けたいと思っています。その現在位置を確認する一助としても、レファレンス委員会では各種の必要と思われる調査を実施して、公開・分析していきたいと考えています。