私が会社に入った今から30数年前の話ですが、プリプレス工程(当時、製版と呼んでました)は、一部の工程がデジタル作業に置き換わり始めた頃です。最初は、テキスト原稿や割付原稿などからネーム台紙を作成、カラー写真原稿はスキャナで読み込んでデジタル化、それらを読み込んで専用のワークステーションでレイアウト作業を行ってました。
その後、アップル社のMacintosh、アドビ社のPhoshopやIllustrator、ページ記述言語のPostScriptなどを用いたDTP(Desk Top Publishing)が始まります。非力なMacintoshでは画像以外を処理し、DTP制作後に専用ワークステーションで画像処理をしていましたが、次第に、DTPで完結できるようになっていきました。世間的には、カラフルな初代iMacが話題になる数年前の話です。
その後、2000年代に入り、刷版工程のCTP(Computer To Plate)が始まり、次第に、プリプレス工程からフィルム等の中間生成物などを用いたアナログ作業は無くなっていきました。
これらのデジタル化は、特定の作業をデジタルツールを使って効率化するデジタイゼーションやビジネスプロセス全体をデジタルで変革したデジタライゼーションだったのだと思います。※当時その様な表現はありませんでしたが。
印刷には、幾つかの版式があり、代表的なものが、オフセット印刷、グラビア印刷、活版印刷などです。様々な要望に応えながら高品質、高生産性へ進化し、それぞれのメリットを活かして雑誌、書籍の製造に用いられてきました。高速大量生産の程度、印刷品質への対応、写真のクオリティ、テキストの読みやすさなど。
当時、デジタル印刷での製造を、新たな版式(版はありませんが)として説明してきましたが、今では、ちょっと違ったのかなと思います。従来の生産方式の延長とした時点で、オフセット印刷と印刷品質や製造コストを比較することで利用可否を考えたと思います。
ビジネスの視点で言えば、適正在庫や在庫レスが実現可能な手段であり、生産数量や印刷品質、コストなどの製造の視点も重要ですが、違う次元の話だったと思います。デジタル印刷やその周辺技術は、産業のしくみ自体を変えるポテンシャル持った技術であり、まさにデジタル・トランスフォーメーションを実現するためのツールの一つだと思います。
QCDは大事な要素ですが、それは製品の基盤であり、これだけで顧客のニーズを全て満たせるわけではありません。顧客満足度(CS)、社会貢献、環境への配慮など、他の要素も考慮する必要があります。これらの要素を総合的に捉え、バランスを取ることが、持続可能なビジネスの成功につながります。
ちょっと話は変わりますが、食品や衣料品業界でも、大量の廃棄物が環境問題の一因となっています。食品業界では、食品ロス(食べ残しや賞味期限切れなど)が問題視され、衣料品業界では、大量生産・大量廃棄による衣料ロスが課題で、特にファストファッションはその傾向が強いといわれています。それらの産業でも、生産方式の常識を変え、製造リードタイムを短縮し、需要予測により過剰在庫リスクを減らすなどで廃棄量を減らす努力をしています。
出版業界でもデジタル印刷で生産方式、販売方式、在庫管理のあらゆる面で変革を進め、前提条件でなる製品の仕様面の絞りこみや印刷用プリントデータの管理、様々なデータを活用したマーケティングなどを用いて、環境負荷低減を図りつつ、持続可能な業界を目指すことが可能だと思います。