JEPA著作権委員会、電子出版の実態調査を実施

2020.07.07

 一般社団法人日本電子出版協会(JEPA)の著作権委員会は、電子出版に力を入れる出版社・コンテンツホルダーに対し、書面等の方法による実態調査を実施しました(2019年12月~2020年2月)。社名等の非公表を条件として計8社から具体的な回答を得られたため、その概要と抜粋を報告します。

■アンケートQ&Aキーワード

 今回の調査における項目とキーワードは次のとおり。

・電子版の価格の比率
・電子書籍化の契約
・権利者(著作権継承者など)不明の著作物
・電子書籍と「印税」
・書誌データの標準化・一元化

■ 基本的な出版活動に対する質問

 紙の書籍・雑誌とその電子版の価格の比率を尋ねたところ、紙の出版物の7~9割の価格設定をしているという回答が大半を占めており、各社とも読者が電子版を手に取りやすいよう配慮しているさまが見て取れました。電子書籍・雑誌の紙版に対する売上比率では、「1割程度」を占めるという会社もあれば「1,000分の1程度」といった回答もありました。売上の計上方法の差異を考慮しても、電子出版をビジネスの根幹に据えるにはまだ難しい現状が伺われました。

■ 各社の電子出版業務

 「電子書籍に関する出版契約をどのような流れで著者と結んでいるか」という問いに対しては、「紙の書籍の出版契約(出版権設定契約)を結ぶ際、同時に電子書籍に関するすべての契約事項・条件等も盛り込んでおく」という回答が最も多く、「電子書籍を刊行する権利(第2号出版権)は契約に盛り込むが、詳細は後日別の契約で定める」、「紙の書籍の出版契約とは完全に切り分けて電子書籍の出版契約を結ぶ」といった回答もありました。出版物の電子化では、会社の方針や編集担当や営業制作担当者の裁量、著者の意向が、契約での制作費負担や売上支払い料率に反映されることもあるとの回答がありました。

■ 権利者(著作権継承者など)不明の著作物

 「著作権者から著作権譲渡を受けて書籍・雑誌の電子化をすること」に関しては、複数の著作権者がいる場合、仮に一人でも許諾がとれないと電子化が難しくなるとの回答が複数ありました。文化庁への裁定申請を利用することで権利者(著作権継承者など)不明の著作物を利用するにしても、申請や許諾の手間や費用は出版物の電子化の課題であるという回答がありました。

 出版物電子化の裁定申請に対する手間とコストでは、過去に刊行された書籍・雑誌の電子化でのハードルは高くなっているとの回答がありました。「文化庁の手続きとは別に、『連絡未詳』といったような届・告知を電子化コンテンツそのものにクレジットするとか、出版版元サイドの告知などで進められるようにできないものか」といった現行の著作権許諾申請に歯がゆさをもつ回答もありました。

■ 電子化するタイトルを決める基準

 「電子化するタイトルを決める基準はあるか」という問いに対し、「新刊を優先的に電子化している」についで「権利処理に手間のかからない本を優先的に電子化している」という回答が多くありました。

■ 電子書籍の「印税」

 各社とも電子出版の契約では「紙の書籍・雑誌の印税とは切り分けて、新たに設定した対価を支払っている」でほぼ一致していました。その支払サイクルに関しては「一年ごと」「四半期ごと」などさまざまでしたが、「売上が一定額に達するまで支払を留保する」といった回答も多く見られました。

 電子出版物の支払額では1コンテンツあたり数十円といった場合も少なくないので、出版物は電子化すればいいというものでもないという回答もありました。

■ 著作権使用料

 「著者さんの中には、電子化での『著作権使用料』を紙の本で支払われた『印税』相当の支払いをせよと言ってきたケースもあります。ただし、そういう場合は電子化されずに終わります」といった回答もありました。紙の出版物に派生する印税とは別に、電子化での著作権使用料の設定では、「とくに最近では読み放題をどうするか」というところで、著作権者とのコンセンサスや情報共有が重要であるという回答もありました。

■ 電子出版のこれから先

 著作権法の改正に際して、各社から電子出版に対し期待をにじませる回答は多く挙げられていました。出版業界が取り組むべき課題として「書誌データの標準化・一元化」によるインフラ環境の整備を進めることに電子出版の飛躍と伸張を期待するという点では各社一致していました。

以上