ナビゲーション

2015.11.18

ナビゲーションとは

ナビゲーションは航法、航海術として船舶や航空機などを目的地まで導くことやその機能である。近年は、インターネットのWeb、電子書籍などのデジタル出版分野でも目的とする情報にたどりつくことやそのための手段のことをナビゲーションというようになった。ここでは、デジタル出版物を中心としてナビゲーションについて検討する。

 

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紙の出版物

紙の本でナビゲーションという言葉を使うことはない。しかし、機能としてのナビゲーション、すなわち目的の情報に導く手段はいろいろある。紙の本は目的地を示す情報として、見出し番号と見出し、図表番号とキャプション、ノンブル(ページ番号)、柱などを用意する。目的地に導く方法として、ぱらぱらとページをめくって探す、目次から辿る、索引や図表一覧から辿るなどが使われる。さらに、ユーザーのカスタム情報としてしおり紐(ひも)を使う 、紙のしおりを挟む、付箋を貼るなどの手段を使うことがある。

PDF

PDFは紙の本をデジタル化したものなので、目的地を示す情報は紙で用意されている項目と同じである。目的地に導く方法は、アウトラインツリー(目的地毎にアウトライン項目を用意し、アウトライン項目をツリー構造で示したもので、Acrobatでは、アウトラインツリーを「しおり」表現している)、サムネイルなどがPDF独自の方法である。アウトライン項目、目次の見出し、索引の項目から目的地へのリンクを設定できる。

紙より便利な点は、リンクのテキストをクリックすると目的地に直接ジャンプできることである。PDFリーダーは、ページを捲る方法として「進む」、「戻る」、「先頭」、「最後」を用意しているのは普通である。しかし、紙のページをぱらぱらめくるのに相当する機能が用意されているPDFリーダーはあまり見かけない。読んでいるPDFに対してユーザーが自分専用の目的地のしるしをつけるためのカスタム手段は、PDFリーダーがサポートすべき項目であるが、こうした機能をもつPDFリーダーは見かけない。

EPUB3

EPUB3では目的地を示す情報として読者に見えるのは、見出し番号と見出し、図表番号とキャプション位である。EPUB3では柱で目的地を示すことができないし、特にリフロー型EPUBではEPUBリーダーが表示するページ番号は目的地を示すために使えない。ハイパーリンクの行先アドレスは、目的地を示すが可視化されない。

目的地に導く方法として、EPUB3独自のナビゲーション文書が必須である。ナビゲーション文書は<nav>要素の並びから構成する特殊なXHTMLファイルであるが、<nav>要素にepub:type属性を指定してナビゲーションの用途を示す。主なものは次の通り。

(ア) toc nav 要素 (値に"toc" を指定)の内容は目次の役割になる(ナビゲーション目次)。しかしナビゲーション目次に記載する情報は標準化されていない。日本電子書籍出版社協会の電書協 EPUB 3 制作ガイドでは「版元から特に指示がないかぎり、カバーページ、目次ページ、奥付ページへのリンクのみとする」とされているなど、あまり重視されていない。むしろ、ナビゲーション目次とは別に、本文と同様なレイアウトを設定する目次ファイルを用意することが多い。
(イ) page-list nav 要素(値に" page-list "を指定)はページリストと呼ばれる。EPUBの本文ファイルの元になった印刷物のページ境界へのリンクを設定する。この機能は生徒に指定ページを指示する必要がある教育現場での利用を想定している。
(ウ) landmarks nav要素(値に" landmarks "を指定)はEPUBの本としての基本的な枠組み(表紙、目次、奧付など。ランドマークという)を示す本文ファイルへのリンクを設定する。

紙より便利な点は、リンクのテキストをクリックすると目的地に直接ジャンプできることである。EPUBリーダーは、ページを捲る方法として「進む」、「戻る」、「先頭」、「最後」を用意しているのが普通である。また、スライダーでページを素早く進むインターフェイスを用意しているEPUBリーダーもある。読んでいるEPUBでユーザーが自分専用の目的地のしるしをつけるためのカスタム手段をサポートするEPUBリーダーも珍しくない。しかし、全体としてEPUBのナビゲーションは紙と比べて機能が低い。索引や図表一覧などを用意できるが、市販の電子書籍ではあまり使われていない。

[小林 徳滋 アンテナハウス株式会社 20151113]