構造と表示の分離

2015.12.28

構造と表示の分離とは?

構造と表示の分離とは、電子書籍の制作および電子書籍の概念を理解する上で重要な考え方である。文字通り、電子書籍の「構造」と「表示」を分離することである。

なぜこのような考え方が生まれたのか。それは電子書籍が持つ、Webと同様の特性に由来する。すなわち、電子書籍の場合、同じタイトルのものでも、読み手が使う電子書籍リーダーが何なのか?またその端末は何か?そういった差異がそのまま電子書籍の表現と紐づく。

そのため、電子書籍を制作する場合、まず構造と表示を分離して考える必要があるのである。つまり、構造(文章が持つ意味、伝えたいこと)と、その表現部分の違い(画面サイズや色など)を意識することである。

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構造と表示の分離の必要性

先ほどの概要でも触れたとおり、構造と表示の分離が生まれた背景には、Webと同様の特性が関わっている。つまり「読み手に見た目を委ねる」ということである。

とくに電子書籍の場合、読者が同じコンテンツを閲覧する環境は、パソコンや専用端末、スマートフォンなどさまざまなデバイスがある。スマートフォンひとつとっても画面サイズは異なり、さらに、専用端末ではモノクロ表示しかできないものがある。

こうした状況は、作り手自身が読者に向けて「こう見てほしい・こう読んでほしい」と考えても、読者からは想定外の見られ方・読まれ方になる可能性がある。この点は紙の書籍の構造とまったく異なるということを電子書籍制作者は意識しなければならない。

これは技術的観点から見ても非常に大切で,別途解説している,EPUB3HTML5CSSといった技術を理解すると,その理解度が高まるはずである。

さらに構造と表示が分離することで,読者に伝えたい内容を明確にできるだけではなく,文章に含まれる「テキスト」「画像」「表」などの要素を明確にでき,さらにテキスト内の意味付け・重み付けがはっきりとする。これはアクセシビリティを考える上でも重要で,今後開発が進むであろうオーディオブックなどへ展開するときにも,展開しやすくなる。

最後に、2015年12月現在、構造と表示の分離を意識しておくことで非常に有用なのが、リーダ間の差異を埋められるということである。現存する電子書籍リーダーは、リーダーごとに表示の解釈が異なる。そのため、たとえ仕様通りのEPUBを作成しても、Aというリーダーでは読める電子書籍がBというリーダーでは読めないことがある。こうしたときに、まず構造側のみ(技術的に言うとXHTML部分)を再優先に読み込ませるようにすれば、すべてのリーダーで読書が可能になるわけだ。

[馮 富久 株式会社技術評論社 20151225]