EPUB3(2015年12月)

2022.07.21

EPUB3とは

EPUB3とは、電子書籍のファイルフォーマット規格の1つEPUBの最新メジャーバージョンである。別項「EPUB」でも説明しているように、EPUBはIDPF(International Digital Publishing Forum:国際電子出版フォーラム)と言う電子出版・電子書籍に関わる国際的な標準化団体が仕様を策定し、普及促進をしているもので、EPUB3は2011年にリリースされた。

EPUB2からEPUB3へのアップデートの一番の特徴は、日本語組版を中心に、台湾などの縦組みやアラビア語・ヘブライ語の右から左へ文字が書かれる言語に対応した点である。

2015年11月現在の最新バージョンは、2014年6月にリリースされたEPUB 3.0.1となっている。

もっと詳しく!

EPUB3の特徴

続いて、EPUB3の特徴について紹介する。前述のとおり、EPUB3の一番の特徴は日本語組版を大きくサポートした点である。とくに

- 縦組み
- 縦中横
- 禁則処理
- ルビ

といった日本の書籍で必要となるものがサポートされた。

これらの項目からもわかるように、EPUB3の特徴は「日本語組版の基本的な機能」をカバーしている点と言えるだろう。実現する技術として、HTML5やCSS3で策定されたものを利用している。

EPUB3利用時の注意点

EPUB3によって日本語タイトル(コンテンツ)の電子化および表現が大幅に向上した。それまで日本ではXMDFや.bookといった独自フォーマットで制作されていた電子書籍が、現在はEPUB3ベースへの移行が進んでいる。

ここで注意したいのが、仕様では日本語組版をサポートはしているものの、利用するCSS(スタイルシート)の特性により、まだまだ複雑なレイアウトが難しい点である。CSSとはDTP(紙のデザイン)でいうところのスタイルに相当するもので、該当タイトルの見た目(組版)を設定するもの。ここで、たとえばInDesignによるDTPであれば同じページ内に縦組みと横組みが混在しても表現できるが、電子書籍の場合、現在のCSSでは難しいのである。

どういうことかというと、CSSは構造上、指定した順に解釈が行われるため、1つのページ(コンテンツ)情報に対して、縦組みと横組みのように異なる指定をすると、どちらかの指定を破棄したり、場合によっては指定自体を無効にしてしまうからである。

そのため、現在は縦組みと横組み用のCSSを準備して、リーダーなどの機能を利用して縦組み・横組みを切り替える方式が多く採られている。

なお、EPUBやHTML5の項でも説明したとおり、リーダーによって解釈が異なる場合がある。これはEPUB3になってからも起こりうるトラブルの1つである(誤解を恐れずに言えば表現力が高まった結果、起きる可能性が高くなった)。

そのため、EPUB3でコンテンツを制作する場合は、仕様の理解やepubcheckによるチェックとは別に、実機のリーダーでのチェックは欠かせないステップと言える。

最新3.0.1でのアップデート

現在の最新バージョンである3.0.1は、マイナーバージョンアップ(メンテナンスリリース)と呼ばれ、EPUB3リリース後に発覚したバグフィックを中心にアップデートが行われている。

その中で日本の出版物という観点で注目しておきたいのが「固定型EPUB」の扱いである。日本のマンガや雑誌のようにレイアウトがユニークで、リフロー型EPUBにしづらいものの多くは固定型EPUBで作成されているが、EPUB3.0.1では、この固定型EPUBも仕様の中に正式に含めている。

これにより、固定型とリフロー型を混在させたデータを作成しても、仕様上は正しいものとして扱われるようになった。しかし、実際に閲覧可能かどうかは、前述のとおり実機チェックまで行うことを勧める。

その他、3.0.1へのアップデートとは別に、EPUBの仕様が、2014年11月5日にISOで「ISO/IEC TS 30135」として刊行された。これにより、国際規格に近い技術仕様書として標準化され、EPUBは、今後さらなる利用・普及が見込まれている。

日本でのEPUB3制作状況

繰り返しになるが、EPUB3で日本語組版のサポートが強化されたことにより、日本で出版される各種コンテンツもEPUB3への移行が進んでいる。技術の標準化、そして、技術進化の観点では非常に好ましいと言えるだろう。

一方で、日本の組版は世界でも非常に多彩で、複雑なものでもある。そのため、まだまだ細かな点では独自の表現や解釈が行われ、さらに、表示するためのリーダーが対応しきれていない部分がある。この点をさらに解消するには、出版社をはじめとしたコンテンツホルダー(クリエイター)たちが、EPUB3のコンテンツ制作を推進し、問題点の表面化とその解決が進むことを望む。

最後に日本で公開されているEPUB3対応の制作ガイドを紹介する。

電書協 EPUB 3 制作ガイド
http://ebpaj.jp/counsel/guide

KADOKAWA-EPUB 制作仕様
http://kadokawa-epub.bookwalker.co.jp/

とくに制作“フロー”の観点で参考にしてもらいたい。

[馮 富久/株式会社技術評論社/20151209]

 

※この記事については、別途内容を更新した記事がアップされています

 

タグ: