文章を書くには、まず本を読むこと

2021.08.02

NHK出版  小関 基宏

 新型コロナウイルスは、デルタ株と呼ばれる新たなウイルスに変異し、ますます猛威を振るっています。東京都ではついに一日の感染者数が4,000人を超え、この勢いを抑え込まないと10,000人超えもあり得るという報道がありました。

 昨年の同時期、7月~8月がピーク時で全国で1,600人弱。その後減少に向かい9月末には600~700人台まで一旦落ちましたが、その後年末年始に向かって一気に増加し、1月中旬には8,000人を超えています。

 現在は新型株ということもあり、昨年と同様に推移するとは一概に言えませんが、このままだと年末年始に向かって感染爆発の可能性があることは想像できます。今一度、日々の行動を振り返ってウイルスを遠ざける行動を取りたいと思います。

 あまりの状況悪化を目の当たりにして新型コロナの話しから始めてしまいましたが、この原稿の依頼を頂戴したときにどうしても頭から離れなかったことが「新型コロナ」の話題でした。とは言うものの医療の専門家ではない私に書けるはずもなく、では自分の専門に関することなら書けるかとも思いましたがこれにも挫折。5月に発表された国民生活時間調査2020(NHK放送文化研究所)のデータがあり、テレビ視聴とインターネット利用の動向について何か書けないかと筆を進めましたが、年齢別や数値データの羅列でちっとも面白くないことに気づき取りやめ。結局、何も進まず悩んでいましたところ、ふと気がついたことがあり、今回はそれについて書くことにしました。

 いや、お恥ずかしい限りなのですが、最近本を読んでいないことに気づいたのです。短いコラムやネット上の記事にはよく目を通しますが、本という体裁で文がしっかり練られた歯ごたえのある文章を全く読んでいなかったのです。これには愕然としました。なぜそのことに気がついたのか。実は、文章を書き始めるとなぜかしゃべり言葉になってしまうのです。よく言えばプレゼン原稿、あるいはブログです。悩んだ末に思いついた原因は読書をしていないことでした。それは他人の文章を読んでマネやパクリをするという意味ではありません。人様の文体に触れ、思いに触れて、内容を理解し心を揺り動かされることで頭のスイッチが入って文章を書けるようになるという意味です。私の場合、文章を書くという行為は本を読むことから始まります。

 さて本を読むといえば、JEPAでは全国の小中学校を対象に「電子図書館構想」を提言しています。文部科学省が進める「GIGAスクール構想」に合わせて、配付されるタブレットを活用し、電子図書として一律に配信することで、学校図書館の蔵書格差を解消する目的があります。

 学級数に応じて蔵書数が増減するということは、子どもの意思に関わらず社会の事情で差を付けているということです。以前であればやむを得ないと片付けざるを得ませんでしたが、GIGAスクール構想を実施している今では解決が可能です。

 文章を書くには、まず本を読むことから始めます。それには良い本をたくさん子どもたちに触れてもらう必要があります。いや、読める本の数は限られているのだから図書館の本を増やす必要はない、とお考えかもしれません。でも思い出してください。小中学校の勉強は、そのまま社会では通用しなかったと思います。あの頃に身に付けたのは、勉強の方法、知らないことを知るための手段であって、社会で生きるための入り口に触れたに過ぎません。読書もそうです。読むためというよりは、多くの本に触れ、様々な文体や表現方法を知り、さらに多様な考え方や生き方、思想や意見、そして何よりも美しい世界が学校の外にたくさんあることに気づいてもらうための選択肢を用意するためです。提言にご興味を持たれましたらJEPAのホームページに詳細が掲載されていますのでご覧ください。

 さあ、何とか書き終わりましたので、久しぶりに読書を楽しむことにいたします。

 *緊急提言 今こそ国は学校電子図書館の準備を