キーパーソン・メッセージ

2016.12.05

「十年一昔」ですが、まだ「始まったばかり」ですから

JTBパブリッシング 井野口 正之

私事ですが、実は今年は、私が電子出版に関心を持ち始めてちょうど10年という年でもありました。
10年前、何がきっかけだったかといえば、ケヴィン・ケリー(Kevin Kelly)のエッセイ「Scan This Book!」を読んだことだったのですね。
…で、それから10年後の今年。電子出版をめぐる環境も10年前(当時はKindleもまだ登場していなかった!)とは大きく変わった2016年、ケヴィン・ケリーは新刊「THE INEVITABLE」(不可避なもの)を出版しました。日本語訳も「〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則」として発行され、話題になったので、ご覧になった方も少なくないと思います。

同書では、大きく変化しつつあるテクノロジー/環境のトレンド、<不可避な>変化が、「BECOMING」、「COGNIFYING」といった12のキーワードに沿ってさまざまな具体的事例とともに語られていて(「SCREENING」というキーワードでは「本」についても主題的に描かれています)、いずれも刺激的なのですが、中でも印象的だったが、全体を包括する12番目のキーワード「BEGINNING」。デジタル化されたテクノロジーがもたらす大きな変化に対して、「われわれは<始まっていく>そのとば口にいるのだ。もちろん、この<始まっていく>ことはまだ始まったばかりだ」。

5年後、10年後、あるいは50年後(それでも「紙の本」の歴史に比べればほんの1/10!)から今を振り返ってみれば、まだ変化は始まったばかりで、「未来」の当たり前はこれから創られていく、今はまさにその始まりのタイミングだ、という考え方には勇気づけられます。

2016.11.05

Kindle Unlimited今後の懸念事項は、分配の仕方にある。

アンテナハウス 小林 徳滋

Kindle Unlimited(KU)に関して、今後の懸念事項を二つ指摘しておきたい。第一にブランド力のある商業出版社の本も、個人出版者の本も同じ土俵でKindle Edition Normalized Page Count (KENPC)が計算され、同じKENP単価により支払いが行われるのかどうか? もし、そうだとするとこれは出版社のブランドに価値がなくなることを意味する。
第二に、コミック・小説・専門書といったジャンルを問わず、同じ土俵でKENPCが計算されて、KENP単価は同一になるのだろうか? KENPCの計算方法は不明だが、現在KENP単価は同じようだ。もし今後も同じならば分配は不平等になる。これは次のように考えてみれば直ぐ分かる。仮にある読者が月980円でコミックを月5,000KENPC読み、別の読者が980円で専門書を月1,000KENPC読むとする。この場合、コミック作家と専門書著者への分配は同額になるべきだ。しかし、KENPCに基づく分配では、コミック作家への分配は専門書著者への分配の5倍となるだろう。
このように考えると、アマゾンKUでは商業出版社と個人作家間、あるいはKDPならコミック作家と専門書著者などの著者間の分配が大きな影響を与えるだろう。分配の仕方によって、出版の担い手が様変わりする可能性がある。

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