キーパーソン・メッセージ

2017.03.01

AIと創作物

日本マイクロソフト   田丸 健三郎

ここ数年AI・機械学習などのキーワードを耳にすることが非常に増えてきている。私自身の業務においても、IoT、ビッグデータと共に頻繁に使用される用語がAI・機械学習だ。
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旧来の分析手法では明らかにできなかった情報をAIの力を借りることにより明らかにできるケースが増えてきている。これにより公開した情報には企業秘密、個人情報が含まれていないと考えられたデータであっても、AIを活用することでそういった情報を明らかにできてしまうケースが出てきている。また、分析だけでなくAIによる二次創作も積極的に試みられるようになってきており、創作物の定義、即ち権利に関して大きな議論を巻き起こしている。内閣府 知的財産戦略本部が設置している委員会(座長 東京大学 渡辺俊也先生)の議事録などは大変興味深い。
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私の辛い通勤を楽にしてくれる小説。人が書いた小説とAIが作成した小説を見分けることができない時代が近い将来くるだろう。AIが学習に使用した小説、それをもとに作成された小説、AI技術だけでなくAIにとって学習する上で重要なデータである人による著作物について、これまでに無い視点でその権利関係を考えないとならない時期がきている。
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AIが創り出すものには元となるものが存在する。それは、そのAIが学習する為に使用したデータとしての他者の創作物だ。芸術家も成長の過程において様々な作品の影響を受けていると想像される。人と異なり、AIの場合は学習に使用したデータが明らかであることが大きな違いであり、権利関係を複雑にする要素をはらんでいる。AIと創作物の今後の展開に注目したい。

2017.02.06

「デジタル教科書」の憂鬱

光村図書出版  黒川 弘一

 SF作家であるアイザック・アシモフの「過去カラ来タ未来」(FUTURE DAYS)という本をご存じだろうか。1900年のフランス万博で配布予定だったシガレット・カードを紹介したもので、100年後の2000年の生活を想像して描いたイラストなのだが、この内容が実におもしろい。残念ながら、カードが配布される前に、製作に関与した玩具会社が廃業に追い込まれたため、一組のカードだけが残ったのだという。

 自動理髪機。空飛ぶ郵便配達員(電子メール?)。自動掃除機(ルンバ!)。農作物収穫システム。自動演奏オーケストラなど、形を変えて実現しているものもあり、眺めているだけで楽しい。その中で気になるのは学校の授業風景だ。一斉授業の中、教師は教科書をミンサー(挽肉器)のような機械に入れ、そこからつながった電線が子供たちのヘルメット状のヘッドセットにつながっている。紙の文字情報が電気信号や音声に変換されて頭に注入され、集中している最中なのか、全員が無表情だ。中には何やら苦痛の表情を浮かべているような子供もいる。

https://publicdomainreview.org/collections/france-in-the-year-2000-1899-1910/

 この風景は、ジャン・マルク・コテという名も無きイラストレーターの100年後の未来への夢想というだけではなく、風刺の意味も込めて教育の現実を表象化したものなのかもしれない。アシモフは「教師より機械の声が響くとき…」というタイトルをつけているが、自分にとっては、教育とデジタルのより豊かな関係を考えるとき、いつもこのイラストが妙に気になってしまう。

 さて、現代に話を戻すと、文部科学省では、新しい学習指導要領がスタートする2020年度の小学校から、「デジタル教科書」が正式に授業で活用できるようになることが検討されている。今後はどのように具現化させていくのかが問われるが、これまで公教育を支えてきた中核的なメディアである紙の教科書に、「デジタル化」という制度変更が加えられることは、想像以上に大きなことなのだ。

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 再び、ジャン・マルク・コテのイラストを眺めてみると、やっぱり子供たちの表情が気になる。自分自身で100年後の授業風景を描いてみたらどうだろう。その表情はどんなものだろうか。「デジタル教科書」の憂鬱は当分続きそうだ。

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