教育市場へ向けたデジタル辞書のありかたとは?

2016.03.08

大修館書店  番沢 仁識

 デジタルの辞書が世にでて、一般に使われるようになってから、20年以上が経過しています。特に電子辞書は、乾電池でうごく設定いらずの専用機として、最も多いときは300万台に迫る出荷台数となりました。

 早いうちからインクリメンタルサーチを実装したため、ユーザが英単語のスペリングを記憶しないままに辞書が使えてしまう、など、学習面の弊害も唱えられたりしましたが、使いやすいには違いなく、急速に学校現場に受け入れられていきました。

 近年、教育ICT化が進められていくなかで、電子黒板は教室に、普通に配備されてきました。教科書では、指導者用のデジタル教科書が珍しくもなく当たり前に用いられています。
 また学習者用の端末を持たせる学校も、私学、および特定の自治体で出てきています。佐賀県では、全県の公立高校でタブレットを配備し、授業で活用されてきています。

 学習者用端末をもたせる学校では、辞書アプリをインストールして使わせます。配備される端末のOSはWindowsかiOS、概ねこのどちらかですので、辞書出版社は、なんらかのかたちでOS対応の辞書アプリを用意しなくてはなりません。

 アプリの辞書は、教材ビューワとの連携をとれば、タップするだけで該当の見出し語を表示させることもできます。これは入力なしに辞書が引けるということになり、かつてのインクリメンタルサーチに眉をひそめた簡便性のレベルをはるかに超えています。

 かたや小学校国語の辞書引き学習のように、引いた言葉に付箋を立てる地道なやり方が定着していることもあります。

 こと学習者に提供する辞書アプリのインターフェースは、学校現場と出版社、およびソフトベンダーの間で、もっと意見交換される必要があるだろうと思います。