レファレンス委員会の活動とデジタル辞書の次のステップ

2019.10.01

ディジタルアシスト  永田 健児

 9月、レファレンス委員会では昨年に続き「辞書アプリの年別ダウンロード実績推移」に関する調査結果を発表しました。JBMIA(一般社団法人 ビジネス機械・情報システム産業協会)モバイルシステム部会の「電子辞書出荷実績推移(1996-2018年)」と併せて、デジタル辞書ビジネスの実績推移を確認することができます。

・JEPA・レファレンス委員会「辞書アプリの年別ダウンロード実績推移」
・JBMIA・モバイルシステム部会「電子辞書出荷実績推移(1996-2018年)」

 デジタル辞書の市場は大きく分けて、専用端末としての「電子辞書」、主にスマートホンを対象とした「アプリストア(からのダウンロード)」、主に教育現場で利用される「学習タブレット(へのライセンス販売)」、インターネット上での「辞書検索サービス」、以上の4種で構成されています。今年度は「学習タブレット(へのライセンス販売)」についても調査を試行しましたが、公開には至りませんでした。来年度以降もデジタル辞書市場の実績と傾向を可視化すべく、調査を継続していく予定です。

 レファレンス委員会の仕事をもうひとつ。IEC(国際電気標準会議)のTC 100/TA 10という部会に協力して、デジタル辞書フォーマットの国際規約「IEC 62605」の策定とメンテナンスを行っています。

・IEC 62605 Multimedia systems and equipment - Multimedia e-publishing and e-books - Interchange format for e-dictionaries

 現在、Edition 3.0の仕様を固めているところです。既存の辞書をデジタルで(効率よく)表現するためのタグ規定は、もう出揃ったかな?というのが現行版(Edition 2)策定時の正直な印象でした。そこから先は、より複雑な組版に対応したり、専門的な内容向けの特殊なタグを増やしたり、と。

 もちろん、そういった要素も必要に応じて追加していますが、現在策定中の版からは“書籍版のデジタル化”から一歩踏み出して、「“辞書の約束事”をもっと身近に」「学習者の好奇心を刺激するパーソナライズ」「障害者や日本語を母語としない学習者への配慮」といった“読みやすさ”や“わかりやすさ”を主要テーマに据えて検討を進めています。

 表示内容の動的組み換えや情報補完、検索履歴の学習、自動読み上げ対応など、デジタルデバイスの特性を活かしたコンテンツ活用アイデアはたくさんあります。一度に全部、というわけにはいきませんので、実際のデバイスやアプリと連携をとりながら、そして何よりもユーザのニーズに向き合いながら、デジタル辞書を次のステップに進めていきたいと考えています。